二相流熱交換器解析
理論:温度が一定の側と、変わる性質
概要
冷凍機の凝縮器を設計しています。冷媒は凝縮するので温度一定として計算していいですか?
凝縮している間はほぼ一定でいい。そうすると熱容量流量が無限大の側として扱えて、効率の式がとても簡単になる。ただ、実際の冷媒は圧縮機から過熱蒸気の状態で入ってきて、出口では少し過冷却された液になる。この入口と出口の区間は熱伝達率が凝縮よりずっと低いから、全体を凝縮として一括で扱うと、必要な面積を見誤るんだ。二相流の熱交換器は、相の状態ごとに区間を分けて考えるのが基本だよ。
相変化側の効率
相変化側は温度が一定なので、熱容量流量の比が0になり、効率は流れの配置(対向流・並行流・直交流)によらずこの式になる。
区間に分けた面積
過熱蒸気・凝縮(蒸発)・過冷却液(過熱蒸気)の区間ごとに熱量 $Q_k$、熱通過率 $U_k$、対数平均温度差を求め、面積を足し合わせる。
蒸気機関の効率を2倍にした凝縮器
二相流の熱交換器の歴史は、1765年ごろにジェームズ・ワットが考えた分離凝縮器にさかのぼる。それまでのニューコメンの機関は、シリンダーの中に水をかけて蒸気を凝縮させていたので、毎回シリンダーごと冷えてしまい、大量の燃料を無駄にしていた。ワットは凝縮を別の容器で行い、シリンダーを熱いまま保つことで、燃料の消費を大きく減らした。凝縮と蒸発を効率よく行う熱交換器は、いまも発電所から冷凍機、空調まで、熱機関の性能を左右する部品だ。
計算例
例1:蒸気で水を温める
100 ℃で凝縮する蒸気で、20 ℃の水2 kg/sを温める(水の熱容量流量8,360 W/K)。
| UA | NTU | 効率 | 熱量 | 水の出口 |
|---|---|---|---|---|
| 5,000 W/K | 0.60 | 0.450 | 301 kW | 56.0 °C |
| 10,000 W/K | 1.20 | 0.698 | 467 kW | 75.8 °C |
| 20,000 W/K | 2.39 | 0.909 | 608 kW | 92.7 °C |
| 40,000 W/K | 4.78 | 0.992 | 663 kW | 99.3 °C |
UAを2倍にするたびに熱量の増え方は小さくなり、NTUが3を超えると出口温度は蒸気の温度にほぼ達する。それ以上面積を増やしても得られるものは少ない。
例2:冷媒の凝縮器を区間に分ける
R134a 0.1 kg/sが70 ℃の過熱蒸気で入り、40 ℃で凝縮し、35 ℃まで過冷却される。冷却水1.0 kg/sが30 ℃で対向流で流れる。熱通過率は過熱区間300、凝縮区間1,500、過冷却区間500 W/m²Kとした(物性は近似値)。
| 区間 | 熱量 | 熱量の割合 | 面積 | 面積の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 過熱蒸気 | 3.3 kW | 16% | 0.671 m² | 29% |
| 凝縮 | 16.3 kW | 80% | 1.410 m² | 62% |
| 過冷却液 | 0.75 kW | 3.7% | 0.210 m² | 9% |
| 合計 | 20.4 kW | 100% | 2.291 m² | 100% |
過熱蒸気の区間は熱量では16%なのに、面積は29%も要るんですね。
気体の熱伝達率が低いからだね。全体を40 ℃で凝縮する、熱通過率1,500として一括で計算すると、面積は1.859 m²で、区間に分けた合計の81%にしかならない。つまり2割近く小さく作ってしまうことになる。実機ではその分凝縮圧力が上がり、圧縮機の動力が増える。二相流の熱交換器では、相が変わる位置を求めて区間を分けること、そして区間ごとに適切な熱伝達の相関式を使うことが大事なんだ。
例3:圧力損失と飽和温度
R134aの飽和圧力は0 ℃で293 kPa、5 ℃で350 kPaなので、この付近では1 Kあたり約11.4 kPa。蒸発器の中で30 kPaの圧力損失があると、入口と出口で飽和温度が2.6 K違う。空気25 ℃・蒸発温度5 ℃の温度差20 Kに対して13%にあたり、無視できない。
解析の進め方
- 入口・出口の状態(過熱度・乾き度・過冷却度)を決める。
- 相が変わる位置で区間を分け、区間ごとに熱量を求める。
- 区間ごとに熱伝達率(凝縮・沸騰・単相)と圧力損失の相関式を選ぶ。
- 圧力損失による飽和温度の変化を入れて、区間を細かく分けて積み上げる。
- 試験データ(出口温度・圧力損失)と比べて相関式を確かめる。
「冷房が効かない真夏」
設計どおりの能力が出ているはずのエアコンの室外機が、真夏の高い気温で能力不足になった——という例がある。凝縮器を一括の熱通過率で設計していたため、過熱蒸気の区間の面積が足りず、凝縮が出口近くまでずれ込み、過冷却がほとんど取れていなかった。気温が高いと凝縮温度がさらに上がり、冷媒の循環量も落ちて悪循環になる。区間に分けた解析で過熱区間の面積を見直したところ、同じ外形で余裕のある設計になった。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 全体を相変化として一括 | 面積を過小評価 | 区間に分ける |
| 圧力損失を無視 | 飽和温度を誤る | 区間ごとに圧力を更新 |
| 単相の相関式を二相に使う | 熱伝達率が大きくずれる | 流動様式に合う相関式 |
| 乾き度の高い区間を平均で扱う | ドライアウトを見落とす | 局所の乾き度で評価 |
| 油の混入を考えない | 熱伝達が下がる | 油の影響を補正 |
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