波浪モデリング

カテゴリ: 流体解析・船舶海洋 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for wave modeling theory - technical simulation diagram
波浪モデリング

理論:周期と水深から波の形が決まる

概要

🙋

CFDで波を作るとき、何から決めればいいですか?

🎓

まず波長だ。波は周期だけでは決まらず、水深によって長さも速さも変わる。それを結びつけるのが分散関係だ。波長が分かれば、計算領域の大きさ、格子の細かさ、造波と消波の領域の長さが決まる。また、波の山が進む速さとエネルギーが進む速さは違い、構造物にいつ波が届くかや、波が運ぶエネルギーの量は群速度で決まる。周期と水深を変えて計算してみよう。

分散関係

$$ \omega^2 = g k \tanh(kh),\qquad L = \frac{2\pi}{k},\qquad c = \frac{L}{T},\qquad c_g = \frac{c}{2}\left(1 + \frac{2kh}{\sinh 2kh}\right) $$

深海・浅海の極限とエネルギー

$$ L_0 = \frac{gT^2}{2\pi}\ (\text{deep}),\qquad c \to \sqrt{gh}\ (\text{shallow}),\qquad P = \frac{\rho g H^2}{8}\,c_g $$

深海(水深>波長の1/2)では波長は周期の2乗に比例し、浅海(水深<波長の1/20)では速さは水深だけで決まる。P は波高 H の波が峰の長さ1 mあたりに運ぶエネルギー。

Coffee Break よもやま話

エアリーの波動理論

水の波の線形理論は、1845年にイギリスの天文学者ジョージ・エアリーがまとめたもので、今もエアリー波理論と呼ばれる。その後ストークスが波高の大きい波の非線形理論を示し、浅い海では孤立波やクノイダル波の理論が作られた。現代のCFDでも、計算領域の入口で波を作るときには、こうした理論の解を速度と水面の形として与えている。理論は、計算が正しく波を伝えているかを確かめる基準でもある。

計算例

例1:周期と水深による波長と速さ

周期水深波長位相速度群速度波のエネルギー(H = 2 m)
6 秒100 m56 m9.4 m/s4.7 m/s23 kW/m
10 秒100 m156 m15.6 m/s7.8 m/s39 kW/m
10 秒20 m121 m12.1 m/s9.3 m/s47 kW/m
10 秒5 m68 m6.8 m/s6.3 m/s32 kW/m
14 秒100 m297 m21.2 m/s11.9 m/s60 kW/m

浅海の極限の速さ √(gh) は、水深5 mで7.0 m/s。周期10秒の波は水深5 mで6.8 m/sとほぼこれに近づく。

例2:CFDの格子(周期10秒・波高2 m・深海)

項目値
波長156 m
波形勾配 H/L0.013
横方向の格子(80セル/波長)1.95 m
水面付近の縦方向(15セル/波高)0.13 m
3波長の2次元領域横240セル × 水面付近45セル程度
🙋

周期10秒の波は、深い海から水深5 mまで来ると、波長が半分以下になるんですね。

🎓

周期は変わらないまま速さが落ちるので、波長が短くなる。深い海では波は水深を感じないが、浅くなると海底に引きずられて遅くなる。このとき群速度が下がってエネルギーが詰まるので、波高は高くなり、やがて崩れる。岸に近づいた波が高く切り立つのはこのためだ。CFDでは、波長が短くなる浅い場所ほど細かい格子が必要になるので、水深が変わる領域では格子の大きさも場所に合わせて変える。また深海で群速度が位相速度の半分になることは、波の群れが計算領域を通り抜ける時間を見積もるのに使える。

CFDでの波の扱い

  1. 周期と水深から分散関係で波長を求め、格子と領域の大きさを決める。
  2. 入口に造波領域、出口に消波(減衰)領域を置き、長さは1〜2波長とする。
  3. 波高が大きい(急な)波はストークス波など非線形理論で与える。
  4. 時間刻みは周期の1/100〜1/500程度、クーラン数も確認する。
  5. 何波長か進んだ後の波高を理論と比べ、数値減衰を確かめる。
Coffee Break よもやま話

「波が途中で消えた」

ある浮体の波浪中の解析で、造波した波が浮体に届くころには、波高が理論値の6割ほどに減っていた。調べると、横方向の格子が波長あたり25セルほどしかなく、波が進むうちに数値的な粘性で減衰していた。格子を波長あたり80セルにし、水面付近を細かくすると、波高の減衰は数%に収まった。浮体に働く力は波高の大きさにほぼ比例するので、格子の粗さがそのまま荷重の過小評価につながっていた。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
深海の式を浅い所で使う波長を過大評価分散関係を解く
格子が粗い波が減衰60〜100セル/波長
消波領域がない・短い反射波が混ざる1〜2波長の消波
位相速度でエネルギー到達到達時間を誤る群速度を使う
急な波に線形理論波形と力を誤る非線形理論
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

関連するページはVOF法による波、船舶抵抗予測、係留解析、スロッシング、プロペラCFDが参考になる。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

熱解析V&V・品質保証構造解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0