波浪モデリング
理論:周期と水深から波の形が決まる
概要
CFDで波を作るとき、何から決めればいいですか?
まず波長だ。波は周期だけでは決まらず、水深によって長さも速さも変わる。それを結びつけるのが分散関係だ。波長が分かれば、計算領域の大きさ、格子の細かさ、造波と消波の領域の長さが決まる。また、波の山が進む速さとエネルギーが進む速さは違い、構造物にいつ波が届くかや、波が運ぶエネルギーの量は群速度で決まる。周期と水深を変えて計算してみよう。
分散関係
深海・浅海の極限とエネルギー
深海(水深>波長の1/2)では波長は周期の2乗に比例し、浅海(水深<波長の1/20)では速さは水深だけで決まる。P は波高 H の波が峰の長さ1 mあたりに運ぶエネルギー。
エアリーの波動理論
水の波の線形理論は、1845年にイギリスの天文学者ジョージ・エアリーがまとめたもので、今もエアリー波理論と呼ばれる。その後ストークスが波高の大きい波の非線形理論を示し、浅い海では孤立波やクノイダル波の理論が作られた。現代のCFDでも、計算領域の入口で波を作るときには、こうした理論の解を速度と水面の形として与えている。理論は、計算が正しく波を伝えているかを確かめる基準でもある。
計算例
例1:周期と水深による波長と速さ
| 周期 | 水深 | 波長 | 位相速度 | 群速度 | 波のエネルギー(H = 2 m) |
|---|---|---|---|---|---|
| 6 秒 | 100 m | 56 m | 9.4 m/s | 4.7 m/s | 23 kW/m |
| 10 秒 | 100 m | 156 m | 15.6 m/s | 7.8 m/s | 39 kW/m |
| 10 秒 | 20 m | 121 m | 12.1 m/s | 9.3 m/s | 47 kW/m |
| 10 秒 | 5 m | 68 m | 6.8 m/s | 6.3 m/s | 32 kW/m |
| 14 秒 | 100 m | 297 m | 21.2 m/s | 11.9 m/s | 60 kW/m |
浅海の極限の速さ √(gh) は、水深5 mで7.0 m/s。周期10秒の波は水深5 mで6.8 m/sとほぼこれに近づく。
例2:CFDの格子(周期10秒・波高2 m・深海)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 波長 | 156 m |
| 波形勾配 H/L | 0.013 |
| 横方向の格子(80セル/波長) | 1.95 m |
| 水面付近の縦方向(15セル/波高) | 0.13 m |
| 3波長の2次元領域 | 横240セル × 水面付近45セル程度 |
周期10秒の波は、深い海から水深5 mまで来ると、波長が半分以下になるんですね。
周期は変わらないまま速さが落ちるので、波長が短くなる。深い海では波は水深を感じないが、浅くなると海底に引きずられて遅くなる。このとき群速度が下がってエネルギーが詰まるので、波高は高くなり、やがて崩れる。岸に近づいた波が高く切り立つのはこのためだ。CFDでは、波長が短くなる浅い場所ほど細かい格子が必要になるので、水深が変わる領域では格子の大きさも場所に合わせて変える。また深海で群速度が位相速度の半分になることは、波の群れが計算領域を通り抜ける時間を見積もるのに使える。
CFDでの波の扱い
- 周期と水深から分散関係で波長を求め、格子と領域の大きさを決める。
- 入口に造波領域、出口に消波(減衰)領域を置き、長さは1〜2波長とする。
- 波高が大きい(急な)波はストークス波など非線形理論で与える。
- 時間刻みは周期の1/100〜1/500程度、クーラン数も確認する。
- 何波長か進んだ後の波高を理論と比べ、数値減衰を確かめる。
「波が途中で消えた」
ある浮体の波浪中の解析で、造波した波が浮体に届くころには、波高が理論値の6割ほどに減っていた。調べると、横方向の格子が波長あたり25セルほどしかなく、波が進むうちに数値的な粘性で減衰していた。格子を波長あたり80セルにし、水面付近を細かくすると、波高の減衰は数%に収まった。浮体に働く力は波高の大きさにほぼ比例するので、格子の粗さがそのまま荷重の過小評価につながっていた。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 深海の式を浅い所で使う | 波長を過大評価 | 分散関係を解く |
| 格子が粗い | 波が減衰 | 60〜100セル/波長 |
| 消波領域がない・短い | 反射波が混ざる | 1〜2波長の消波 |
| 位相速度でエネルギー到達 | 到達時間を誤る | 群速度を使う |
| 急な波に線形理論 | 波形と力を誤る | 非線形理論 |
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