乱流熱伝達モデリング
理論:乱れが運ぶ熱をどう表すか
概要
CFDで乱流の熱伝達を計算すると、相関式と合わないことがあります。何を確かめればいいですか?
乱流の熱の運びは、ほとんどのCFDで『渦拡散率 = 渦粘性 ÷ 乱流プラントル数』という仮定で表されている。だから、流れ(渦粘性)が正しいか、乱流プラントル数が適切か、そして壁のすぐ近くの薄い温度境界層を解けているか、の3つを確かめる必要がある。十分発達した管内流を簡単な乱流モデルで解いて、Gnielinskiの式とどこまで合うか、乱流プラントル数でどれだけ変わるか、壁の格子をどれだけ細かくすべきかを数値で見てみよう。
運動量:混合長モデル
壁からの距離 y⁺ と速度 u⁺ は壁の単位(摩擦速度と動粘度)で表す。混合長 l⁺ は壁の近くでvan Driestの減衰(A⁺ = 26)で小さくし、管の中心付近はNikuradseの式で頭打ちにした。
エネルギー:渦拡散率
壁の熱流束一定の条件で、半径方向の熱流束の分布を速度から求め、温度 θ⁺ を積分した。θ_b⁺ は流量で重みをつけた平均温度。
レイノルズの相似
1874年、イギリスのオズボーン・レイノルズは、流体が壁から受ける摩擦と、壁との間の熱の伝わり方は、同じ乱れの仕組みで起きているので比例するはずだと考えた。この『レイノルズの相似』は、乱流の熱の運びを運動量の運びから推定する考え方の出発点になった。乱流プラントル数は、その比例が完全ではないことを表す補正の係数だ。今のCFDの渦拡散率モデルも、この150年前の考え方の上に成り立っている。
計算例
例1:モデルとGnielinskiの式の比較(Pr_t = 0.85)
| レイノルズ数 | Pr 0.7(空気) | Pr 7(水) | Pr 50 |
|---|---|---|---|
| 1×10⁴ | 32.5 / 29.8 (+9%) | 88.6 / 79.5 (+11%) | 173 / 161 (+8%) |
| 5×10⁴ | 109 / 104 (+5%) | 342 / 329 (+4%) | 694 / 700 (−1%) |
| 1×10⁵ | 188 / 179 (+5%) | 620 / 599 (+3%) | 1277 / 1299 (−2%) |
値は「モデル / Gnielinski(差)」。摩擦係数はPetukhovの式と2%以内で一致した。
例2:乱流プラントル数の影響(Re = 5×10⁴)
| プラントル数 | Pr_t = 0.7 | Pr_t = 0.85 | Pr_t = 1.0 | Gnielinski |
|---|---|---|---|---|
| 0.7 | 122 | 109 | 100 | 104 |
| 7 | 371 | 342 | 320 | 329 |
| 50 | 737 | 694 | 659 | 700 |
例3:壁の第1セルの高さ
Re = 5×10⁴・直径50 mmの管では、流体によらず y⁺ = 1 は壁から0.020 mm、y⁺ = 30 は0.59 mm。熱を伝導だけで運ぶ層の厚さの目安は、壁の単位で Pr 0.7 では5.6、Pr 7 では2.6、Pr 50 では1.4、Pr 500 では0.6となる。
プラントル数が大きい流体ほど、壁の格子をもっと細かくしないといけないんですね。
そうだ。速度の粘性底層は y⁺ ≈ 5 程度だが、温度が伝導だけで変わる層は Pr^(−1/3) に比例して薄くなる。油のように Pr が数百になると、y⁺ = 1 のセルでもその層に入りきらないことがある。y⁺ = 30 の壁関数は、速度には使えても、高いプラントル数の熱には粗すぎる。例2のように乱流プラントル数だけで±10%動くことも考えると、熱の予測で5%以内を目指すなら、壁の解像を確かめ、相関式や実験でモデルを検証する必要がある。レイノルズ数が低い(10⁴程度)ほど、モデルの誤差も大きくなる。
CFDでの確かめ方
- まず単純な管内流でGnielinskiの式と比べ、モデルと格子の組み合わせを確かめる。
- 壁の第1セルの y⁺ を確認し、プラントル数が大きいときはさらに細かくする。
- 乱流プラントル数を0.7〜1.0で変え、結果の感度を見る。
- はく離や衝突噴流では、渦粘性モデルの熱伝達の誤差が大きくなりやすい。
- 熱伝達率だけでなく、摩擦係数も相関式と比べる。
「油の冷却器だけ合わない」
ある熱交換器の設計で、水側と空気側のCFDは試験とよく合ったのに、潤滑油側の熱伝達率だけが試験より3割高く出た。どれも同じ壁関数の格子を使っていた。油はプラントル数が数百あり、温度が伝導だけで変わる層が y⁺ = 1 よりずっと薄いため、壁関数では温度の勾配をとらえられなかったのだ。油側の壁の格子を細かくし直すと、試験との差は5%ほどに縮まった。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 高Prで壁関数 | 熱伝達を誤る | 壁を細かく解像 |
| Pr_tを確かめない | ±10%の不確かさ | 感度を確認 |
| 摩擦係数を見ない | 流れの誤りを見逃す | 相関式と比較 |
| 低Reで同じモデル | 誤差が増える | 低Re型モデル |
| 助走区間を無視 | 平均値を誤る | 発達長を確認 |
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強制対流ツールで試せるよ。関連するページはGnielinskiの式、Dittus-Boelterの式、助走区間、マイクロチャネル冷却が参考になる。
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