リフローはんだ付け熱解析

カテゴリ: 熱解析 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for reflow soldering theory - technical simulation diagram
リフローはんだ付け熱解析

理論:部品ごとに温まる速さが違う

概要

🙋

リフローの後、大きなシールドケースの下のはんだだけ溶けきっていない『未溶融』が出ます。炉の温度を上げればいいですか?

🎓

温度を上げると、今度は小さな部品が熱くなりすぎるかもしれない。リフロー炉では基板全体に同じ熱風が当たるけど、部品の熱容量と表面積の比で温まる速さが違う。チップ部品は数秒で熱風の温度に追いつくのに、熱容量の大きなシールドやコネクタは何十秒、何分とかかる。だから問題は『炉の温度』ではなく『部品どうしの温度の差』なんだ。部品ごとの時定数で見積もると、何を変えれば差が縮まるかがわかるよ。

部品ごとの時定数

$$ \frac{dT}{dt} = \frac{T_{air}(t) - T}{\tau}, \qquad \tau = \frac{m c}{h A} $$

$m$ は部品の質量、$c$ は比熱、$h$ は熱風からの熱伝達係数、$A$ は熱を受ける表面積。部品の温度は熱風の温度に、時定数 $\tau$ の遅れで追いつく。実際には基板を通じて熱が行き来するが、部品どうしの差の見当をつけるにはこの簡単なモデルで十分だ。

融点を超えている時間

$$ t_{AL} = \int \mathbb{1}\left[T(t) > T_{liq}\right] dt, \qquad T_{liq} = 217\,^\circ\mathrm{C}\ (\text{SAC305}) $$

鉛フリーはんだ(SAC305)の融点は約217 ℃。はんだがしっかりぬれて接合するには、融点を超えている時間(TAL)が一般に数十秒〜1分半程度必要とされる。一方、部品の耐熱温度(多くは260 ℃前後)を超えてはいけない。この上下の範囲に、すべての部品を収めるのがプロファイル設計だ。

Coffee Break よもやま話

鉛フリー化で狭くなった『窓』

かつてのすず・鉛はんだの融点は183 ℃で、部品の耐熱温度との間に60 K以上の余裕があった。2006年に欧州でRoHS指令が施行されて鉛の使用が制限されると、融点217 ℃前後の鉛フリーはんだが主流になり、余裕は30〜40 Kほどに狭まった。熱容量の違う部品が混在する基板では、この狭い窓に全部を収めるのが難しくなり、炉の中の温度の測定や熱解析によるプロファイルの設計が重要になった。

計算例:仮想のプロファイル

熱風の温度:0〜90秒で25→180 ℃、180秒まで180 ℃(均熱)、240秒までに250 ℃、280秒まで保持、その後冷却。部品の時定数は仮想の値。

部品時定数ピーク温度217 ℃超の時間
小さなチップ部品8 s249.9 ℃77 s
QFP25 s244.8 ℃71 s
大きなBGA60 s225.5 ℃40 s
重いシールド・コネクタ120 s192.5 ℃0 s
🙋

重い部品は、はんだの融点まで届かないんですね。

🎓

そう、部品どうしで57 Kも差がある。ここで2つの対策を比べてみよう。

対策の比較

変更小さな部品のピークBGAの217 ℃超重い部品のピーク部品間の差
元の条件249.9 ℃40 s192.5 ℃57 K
ピーク温度を260 ℃に259.9 ℃55 s197.4 ℃63 K
ピークの保持を30秒延長250.0 ℃76 s204.5 ℃46 K

ピーク温度を上げると、小さな部品は耐熱温度の260 ℃に迫るのに、重い部品は5 Kしか上がらず、差はむしろ広がる。保持の時間を延ばすと、小さな部品はすでに熱風の温度に達しているので上がらず、遅れている部品だけが追いつく。部品の温度差を縮めるには『高く』より『長く』が効く。それでも重い部品が融点に届かないなら、予熱(均熱)を長くして温度をそろえる、下からも加熱する、部品の配置を変えるといった対策が必要になる。

解析と測定

手順

  1. 基板上の熱容量の大きい部品と小さい部品を洗い出し、時定数の見当をつける。
  2. 熱電対を付けた試作基板で実際のプロファイルを測り、熱伝達係数と時定数を合わせ込む。
  3. 基板全体の熱解析(基板の熱伝導、部品の影、コンベアの速度)で温度の分布を予測する。
  4. すべての部品がTALと耐熱温度の範囲に入るプロファイルを選ぶ。
Coffee Break よもやま話

「同じ部品なのに場所で結果が違う」

同じBGAを基板の2か所に載せたら、片方だけにボイド(はんだの中の空洞)やぬれ不足が出た——隣に背の高いコネクタがあって熱風がさえぎられる『影』の位置だった。部品の時定数は部品そのものだけでなく、周りの部品や基板の銅の量でも変わる。銅の多い電源の層の真上は、基板が熱を奪うので温まりにくい。こうした配置による差は、部品ごとの簡単なモデルでは見えず、基板全体の熱解析と実測で確かめる必要がある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
ピーク温度だけ上げる小部品が過熱、差は広がる高温の時間を延ばす
1点の温度だけ測る未溶融・過熱を見落とす最大・最小の部品を測る
部品の影を無視場所で不良が出る配置を含めて解析
基板の銅の量を無視温まりにくい場所を見落とす層構成を入れる
部品の耐熱温度を確認しない部品の損傷最も弱い部品で上限を決める
🙋

部品の温度変化を自分でも計算してみたいです。

🎓

集中定数モデルで時定数による温度変化、基板の熱解析で基板の熱を試せるよ。関連する話題はリフローシミュレーション、炉内の熱解析、はんだの寿命ははんだ接合の信頼性と熱膨張のミスマッチの記事にまとめてある。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

構造解析流体解析製造プロセス解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0