はんだ接合部の信頼性シミュレーション

カテゴリ: 連成解析・熱-構造 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for solder reliability theory - technical simulation diagram
はんだ接合部の信頼性シミュレーション

理論:熱膨張の差がはんだをずらす

概要

🙋

車載の基板で、大きなチップ部品のはんだだけが割れました。なぜ大きい部品ほど割れやすいんですか?

🎓

温度が上がると、基板(約17 ppm/K)は部品(セラミックで約6.5 ppm/K)より大きく伸びる。部品の中心を基準に考えると、ずれの量は中心からの距離に比例するので、部品の端のはんだが一番大きくずらされる。部品が大きいほど端までの距離が長く、ずれが大きい。はんだは低い温度でもクリープする柔らかい金属なので、このずれを毎回受け止めて少しずつ疲労し、き裂が進む。寿命は、ずれによるひずみの大きさで決まり、ひずみが2倍になると寿命は5分の1ほどになる。だから部品の大きさ、はんだの高さ、温度の幅が寿命を左右する。

エンゲルマイヤーの式

$$ \Delta\gamma = F\,\frac{L_D\,\Delta\alpha\,\Delta T}{h},\qquad N_f = \frac{1}{2}\left(\frac{\Delta\gamma}{2\varepsilon_f'}\right)^{1/c},\qquad c = -0.442 - 6\times10^{-4}\,\bar T_{sj} + 1.74\times10^{-2}\ln(1 + f) $$

F は補正係数(1)、L_D は部品の中心から角までの距離、Δα は熱膨張率の差(10.5 ppm/K)、h ははんだの高さ(0.1 mm)、ε_f' は疲労延性係数(0.325)、T̄_sj ははんだの平均温度、f は1日あたりのサイクル数。

Coffee Break よもやま話

表面実装と疲労寿命の式

1980年代に部品を基板の表面に直接はんだ付けする表面実装が広がると、リードのある部品に比べてはんだが熱膨張の差を直接受けるため、温度サイクルでの断線が大きな問題になった。エンゲルマイヤーはこの頃、低サイクル疲労のコフィン・マンソン則をもとに、温度の幅、部品の大きさ、サイクルの速さを含むはんだの寿命の式をまとめた。鉛フリーはんだへの切り替え後は材料定数が見直され、有限要素解析でひずみエネルギーを求める方法も広く使われている。

計算例

例1:部品の大きさと寿命(はんだの高さ0.1 mm)

部品L_D−40〜125℃:ひずみ−40〜125℃:寿命0〜100℃:ひずみ0〜100℃:寿命
0603 (1.6×0.8 mm)0.89 mm1.55%4,390 回0.94%5,784 回
1206 (3.2×1.6 mm)1.79 mm3.10%814 回1.88%1,252 回
2512 (6.4×3.2 mm)3.58 mm6.20%151 回3.76%271 回

−40〜125℃は1時間に1回(1日24回)、0〜100℃は1日2回とした。指数 c はそれぞれ −0.411、−0.453。

例2:はんだの高さと寿命(1206、−40〜125℃)

はんだの高さ寿命
0.05 mm151 回
0.10 mm814 回
0.20 mm4,390 回
🙋

部品の大きさが2倍になると、寿命は5分の1になるんですね。

🎓

ひずみは L_D に比例して2倍になり、寿命はひずみの 1/c 乗(c は約 −0.41)に比例するので、2の約2.4乗で5分の1ほどになる。同じ理屈で、はんだの高さを半分にするとひずみが2倍になり、寿命は5分の1になる。だから大きな部品やはんだの低い部品(底面電極の部品など)は特に注意が要る。ただし、この式はひずみを単純な幾何で見積もっているので、実際の形状、はんだのフィレットの形、基板の反りなどは入っていない。設計の初期の比較には便利だが、車載のように寿命の要求が厳しい場合は、はんだのクリープを含めた有限要素解析で1サイクルあたりのひずみエネルギーを求め、試験と合わせた寿命の式に入れる。

信頼性評価の進め方

  1. 使用環境の温度の幅、平均温度、1日のサイクル数を決める。
  2. エンゲルマイヤーの式で部品ごとの寿命を比べ、危ない部品を選ぶ。
  3. 危ない部品は、はんだのクリープを含めた有限要素解析でひずみエネルギーを求める。
  4. 試験結果で合わせた寿命の式で、使用期間中の故障の確率を見積もる。
  5. はんだの高さ、基板の材料、アンダーフィルなどの対策を比べる。
Coffee Break よもやま話

「大きな抵抗だけが断線した」

ある車載の電子制御装置で、温度サイクル試験の途中から、2512サイズの電流検出用抵抗のはんだだけが割れて断線した。同じ基板の小さな部品は問題がなかった。エンゲルマイヤーの式で比べると、2512の寿命は0603の約30分の1で、試験の回数で壊れても不思議ではなかった。抵抗を同じ値の小さな部品2つに分け、はんだの量を増やして高さを確保すると、試験を最後まで通過した。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
小さな部品で代表させる大きな部品の断線部品ごとに評価
はんだを弾性体で解析ひずみを誤るクリープを入れる
試験条件と使用条件を混同寿命を誤って換算加速係数を求める
基板の反りを無視ひずみを過小評価基板全体で解析
鉛はんだの定数を流用鉛フリーで寿命を誤る材料に合った定数
🙋

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