気持ちは分かるけど、手抜きじゃないんだ。大きなロットを1個ずつ全数検査すると、時間もコストも膨大になる。さらにネジの締結トルク試験や食品の破壊検査みたいに「調べたら製品が壊れる」検査だと、全数検査したら売る物が残らない。そこで、ロットから無作為に n 個だけ抜き取って、不良品の数を数える。それが合格判定個数 c 以下ならロット全体を合格にする——これが一回抜取検査だよ。
まさにそこが核心だ。その「引きの運」をきちんと数式で表したのが OC曲線(検査特性曲線)なんだ。横軸にロットの真の不良率、縦軸にそのロットが合格する確率 Pa をとる。本当に良いロットでも、抜取りの偶然で不合格になることがある——これが生産者危険。逆に悪いロットがすり抜けて合格することもある——これが消費者危険。右のグラフで不良率スライダーを動かすと、動作点がOC曲線の上を移動するのが見えるよ。
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じゃあ抜取数 n をうんと増やせば、その危険を両方ゼロにできるんですか?
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それがね、両方を同時にゼロにできる抜取検査計画は存在しないんだ。n を増やすとOC曲線が急峻になって、良いロットと悪いロットを切り分ける判別力は上がる。でも完全な縦の段差になるのは全数検査のときだけ。しかも n を増やせば検査コストも上がる。抜取検査が与えてくれるのは「絶対の確実さ」じゃなくて、定量化されて意図的に選ばれたリスクのバランスなんだ。これは肝に銘じておくといい。
直感的にはそう思うよね。でも c=0 のOC曲線は不良率が少し上がっただけで合格確率がガクンと落ちる。つまり、ほんの少し不良を含んだだけのまずまず良いロットまで、ばっさり不合格にしてしまう。生産者危険が跳ね上がるんだ。実務では AQL(合格品質水準)付近のロットはちゃんと合格させたい。だから c は 1〜3 くらいを取って、n とセットで生産者危険と消費者危険のバランスを調整するのが定石だよ。
よくある質問
OC曲線(Operating Characteristic Curve、検査特性曲線)は、ロットの真の不良率を横軸、その抜取検査計画でロットが合格する確率 Pa を縦軸にとったグラフです。良いロットは合格しやすく、悪いロットは合格しにくいほど、曲線は急峻になります。OC曲線を見れば、ある不良率のロットがどれくらいの確率で合格するかが一目で分かり、検査計画の性能を客観的に評価・比較できます。本ツールは入力した n・c から OC曲線を描き、現在の不良率の動作点を示します。
一回抜取検査では、ロットから n 個を抜き取り、不良品の個数が合格判定個数 c 以下なら合格とします。サンプル中の不良数の期待値は np(n×不良率)です。本ツールはポアソン近似を使い、Pa = Σ(k=0〜c) e^(−np)·(np)^k / k! で合格確率を求めます。例えば n=80、不良率2%、c=2 なら np=1.60、Pa = e^(−1.6)·(1+1.6+1.28) ≈ 0.783、つまり約78%の確率でこのロットは合格します。
生産者危険(α)は、本来合格水準(AQL)にある良いロットが、抜取りの偶然で不合格になってしまう確率です。消費者危険(β)は、本来不合格にすべき悪いロットが、たまたまサンプルに不良が出ず合格してしまう確率です。どんな抜取検査計画でも両者を同時にゼロにはできません。抜取数 n を増やすとOC曲線が急峻になり判別力は上がりますが、検査コストも上がります。抜取検査が提供するのは「確実さ」ではなく、定量化され意図的に選ばれたリスクのバランスです。
平均出検品質(AOQ、Average Outgoing Quality)は、抜取検査を通過した後に出荷されるロット全体の平均的な不良率です。不合格になったロットは全数検査され不良が良品に置き換えられると仮定します。AOQ = p·Pa·(N−n)/N で、入ってくる不良率 p が低いうちは不良がほとんど通らず低く、p が高いと多くのロットが不合格になり全数検査されるためやはり低く、中間でピーク(AOQL、平均出検品質限界)を取る山形になります。AOQL はこの検査計画が保証できる出荷不良率の上限です。
実世界での応用
受入検査(部品の購入時):製造業では、サプライヤから納入された部品ロットを工場に受け入れる前に抜取検査を行います。ボルト・コネクタ・電子部品など、1ロット数千〜数万個の部品を全数検査するのは現実的でないため、JIS Z 9015(ISO 2859)の計数値抜取検査表から AQL に応じた n と c を選びます。本ツールで OC曲線を描けば、購入仕様のAQLと実際の検査計画が整合しているかを事前に確認できます。
破壊検査が必要な製品:溶接部の引張試験、缶詰のシーム強度試験、火工品の作動試験、コンクリート供試体の圧縮試験など、検査すると製品そのものが壊れる用途では全数検査は原理的に不可能です。抜取検査が唯一の選択肢となり、抜取数 n と合格判定個数 c の設計がそのまま品質保証の中身になります。
規格・調達契約の交渉:顧客とサプライヤの間で「どの程度の不良率までを合格とするか」を取り決める際、OC曲線は共通言語になります。生産者は「良いロットを落とされたくない(生産者危険を下げたい)」、消費者は「悪いロットを掴みたくない(消費者危険を下げたい)」と利害が対立しますが、OC曲線上の2点(AQL での Pa とLTPD での Pa)を指定して、双方が納得できる n・c を客観的に決められます。
よくある誤解と注意点
まず最大の誤解が、「合格=ロットに不良品がゼロ」だと思い込むことです。抜取検査の合格は「サンプル中の不良数が c 以下だった」というだけで、ロット全体に不良が含まれていないことを意味しません。合格判定個数 c が 2 なら、サンプルに不良が2個あっても合格しますし、サンプルに出なかっただけでロット本体には相当数の不良が残っている可能性があります。抜取検査が保証するのは「ロットの不良率がある確率分布に従う」ことであって、「不良ゼロ」ではありません。
次に、「抜取率(n/N)を一定にすれば品質は同じように守られる」という思い込みです。例えば常に5%を抜き取る、という運用は直感的に公平に見えますが、OC曲線の形は抜取数 n と合格判定個数 c でほぼ決まり、ロットサイズ N にはあまり依存しません。小さいロットで5%(=少数)を抜くと判別力が極端に低く、大きいロットで5%(=大量)を抜くと過剰検査になります。だから JIS Z 9015 のような正式な抜取表は、N から「抜取率」ではなく「サンプルサイズ文字」を経由して n を決める仕組みになっています。n/N を固定する設計は避けてください。
最後に、「ポアソン近似はいつでも使える」と考えないこと。本ツールは二項分布をポアソン分布で近似して Pa を計算しています。この近似が良いのは、抜取数 n が大きく不良率 p が小さい(経験則として np が概ね一定以下に収まる)場合です。抜取率 n/N が大きい(ロットの相当部分を抜く)ケースや、不良率が非常に高いケースでは、本来は超幾何分布や二項分布で扱うべきで、ポアソン近似は誤差を生みます。実務で精密な計画を組むときは、近似の前提が成り立っているかを必ず確認してください。
使い方ガイド
ロットサイズ(N)を入力します。例えば自動車部品メーカーの1ロット=5000個を設定
抜取数(n)を決定します。JIS Z 9080に準拠し、AQL 1.0%の場合は通常n=125個程度