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道路舗装・耐久

アスファルト舗装 わだち掘れ予測 — Jenkins 式 (LRRB 99-31)

アスファルト舗装の「わだち掘れ(流動わだち)」を Jenkins 経験式で予測するシミュレーターです。混合物・表層厚・交通量・路面温度・タイヤ圧を変えると、累積 ESAL とわだち深さ、寿命、必要オーバーレイ厚がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
混合物
Cmix 係数と k_rut 係数を自動設定
骨材級別
最大粒径による粒度区分
表層厚
cm
結合材含有率
%
交通量 ESAL
百万/年
Equivalent Single Axle Load(換算 18kip 輪荷重)の年間繰返し数
路面温度
°C
夏季ピーク時の路面温度を想定
タイヤ圧力
kPa
設計寿命
yr
計算結果
温度係数
累積 ESAL (×10⁶)
わだち深さ予測 (mm)
許容わだち (mm)
寿命予測 (yr)
必要オーバーレイ (cm)
舗装断面・タイヤ接地・わだち進行

表層〜路盤の断面と、タイヤ接地・荷重矢印・わだち深さの進行を可視化します。色は許容値に対する充足度(緑→橙→赤)。

路面温度に対するわだち深さ感度
混合物別 わだち深さ比較
理論・主要公式

$$\mathrm{Rut} = k_{rut}\cdot C_{mix}\cdot 2^{(T-25)/10}\cdot\left(\frac{p}{750}\right)^{1.5}\cdot N^{0.30}\cdot\sqrt{\frac{H}{8}}$$

Jenkins 式(LRRB 99-31)。N:累積 ESAL(軸数)、T:路面温度(°C)、p:タイヤ圧(kPa)、H:表層厚(cm)、C_mix:混合物係数、k_rut:基本係数。

$$N = \mathrm{ESAL}_{年}\times \mathrm{Life}\times 10^{6},\qquad \mathrm{Overlay} = \max(0, \mathrm{Rut}-\mathrm{Rut}_{許容})\times 0.5\;[\text{cm}]$$

累積 ESAL と必要オーバーレイ厚。許容値は密粒度/SMA/PMA で 13mm、ポーラスで 25mm を採用。

$$\mathrm{Life}_{予測} = \dfrac{\mathrm{Life}_{設計}}{\max(0.1,\,\mathrm{Rut}/\mathrm{Rut}_{許容})}$$

わだち比から見た寿命予測。許容値を超えた場合は設計寿命より短く出る。

アスファルト舗装 わだち掘れ予測 — Jenkins 式とは

🙋
交差点の手前とか、夏の幹線道路でよく見る「タイヤの跡が凹んでる」やつ、あれってどうしてできるんですか?
🎓
それが「わだち掘れ(流動わだち)」だね。アスファルトはバインダ(石油由来の粘弾性材料)で骨材を接着している複合材料で、高温になるとバインダが軟らかくなる。そこに大型車のタイヤが通ると、混合物全体がじわっと横に逃げて沈む。1台ではほとんど分からないけど、1日に1万台×何年分の繰り返しで cm 単位の凹みになるんだ。Jenkins 式は、この現象を「累積 ESAL × 温度補正 × タイヤ圧 × 表層厚」の冪乗で表す経験式で、Minnesota DOT の LRRB 99-31 報告で広く知られている。
🙋
温度の係数が 2^((T-25)/10) って書いてありますね。25°C と 40°C でどれくらい変わるんですか?
🎓
15°C 上がると 2^1.5 ≒ 2.83 倍だね。つまり夏のピーク時は、年間平均の 3 倍近い速度でわだちが進む。日本の真夏の路面温度は 50〜60°C にも達するから、わだちの 7〜8 割は「夏の数週間で進行する」と言われている。だから舗装設計では「年平均」じゃなくて「ピーク温度時の累積ダメージ」で勝負が決まる。本ツールではスライダーで温度を変えて、その急激な増加を実感してほしい。
🙋
混合物の選択肢に SMA とか PMA があります。これらは何が違うんですか?
🎓
SMA は粗骨材を多めにして「石が石を支える」骨格構造を作った混合物。流動に強くて、Jenkins 式の C_mix は密粒度=1.0 に対して SMA=0.6 くらい。PMA はバインダに SBS などのポリマーを添加して、高温時の粘度低下を抑えたもの。C_mix=0.4 でさらに強い。値段は高いけど、交差点・登坂車線・バス停みたいに流動が集中する箇所では、ライフサイクルコストで見ると確実に得になる場合が多い。
🙋
「許容わだち 13mm」って出ますが、これを超えると何が起きるんですか?
🎓
いちばん怖いのは雨天時のハイドロプレーニング(水膜走行)。わだちに水が溜まり、タイヤと路面の間に水膜ができて、ハンドルが効かなくなる現象だね。15mm を超えると追越車線でハイドロが急増することが事故統計からも分かっている。だから AASHTO や日本の指針も 13mm を実用限界に置いている。ポーラス舗装は排水機能があるから 25mm 目安まで許容するけど、空隙が多い分流動も進みやすいので、超えると一気に維持費が増える点には注意が必要。
🙋
右下に「必要オーバーレイ」って出てきました。これは何ですか?
🎓
わだちが許容値を超えた場合に、上から薄く打ち替える舗装の厚さ。経験的に、超過した mm 量の半分くらいを cm 単位で重ね打ちすると、走行性能と耐久性が回復する。だから「Rut 超過分 × 0.5 cm」を簡易目安にしている。本格的には milling(切削)してから打ち替えるけど、初期検討ではこの数字で予算感をつかむ。設計段階で SMA/PMA に切り替えればオーバーレイ 0 にできることも多くて、本ツールで「混合物を変えると何 cm 削減できるか」をすぐ比較できるよ。

よくある質問

Jenkins 式は Minnesota DOT の LRRB 99-31 報告で提案された、アスファルト舗装のわだち掘れ深さを推定する経験式です。累積交通量(ESAL)、路面温度、タイヤ圧、表層厚、混合物タイプを入力として、流動わだち(permanent deformation)を mm 単位で算出します。詳細な MEPDG/AASHTO 設計の前段で、舗装寿命と必要オーバーレイ厚をクイックに評価するのに使われます。
アスファルトバインダの粘弾性特性を反映した「10°C ごとにわだち速度が 2 倍になる」近似です。基準温度 25°C に対して 35°C なら×2、45°C なら×4 と急激に増加します。夏場の高温時にわだちが集中して進行する現場感覚と一致します。本ツールでは pavementTempC をこの式で温度係数化し、Jenkins の主項に掛け合わせます。
13mm は AASHTO や日本の舗装設計指針で広く採用される、雨天時のハイドロプレーニング・走行安定性を確保できる実用限界です。ポーラス舗装は排水機能のため空隙率が高く、より深いわだちまで許容(25mm 目安)しますが、その分流動も進みやすい点に注意が必要です。本ツールでは混合物選択に応じて許容値を自動切替します。
SMA は粗骨材の点接触で骨格を作り、流動わだちに強い構造です。PMA はバインダ自体に SBS などのエラストマーを添加し、高温時の粘度低下を抑えます。Jenkins 式では混合物係数 Cmix で表現され、密粒度=1.0 に対し SMA=0.6、PMA=0.4 と低く、同じ交通量・温度でもわだち深さが大幅に小さくなります。

実世界での応用

高速道路・幹線道路の表層設計:NEXCO や国交省直轄国道では、設計交通量 ESAL と地域別ピーク温度から、本ツールのような経験式で初期わだち予測を行い、表層に SMA や改質 II 型を採用するかを決めます。特に登坂車線・サグ部・トンネル前後など流動が集中する区間では、Jenkins の温度補正と混合物係数の感度が設計判断に直結します。

都市内交差点のアプローチ部:信号待ちで重車両が長時間停止する交差点手前 30〜50m はわだちの最大集中部です。本ツールで「同じ交通量でも温度を 35°C → 50°C にすると深さが何倍か」を可視化し、PMA への切替や表層厚増しの効果を概算できます。実務では「停止帯だけ高機能舗装」というスポット設計も増えています。

空港・港湾・物流ヤード:航空機の高荷重・低速・高圧タイヤ、コンテナトレーラの繰返し荷重など、ESAL 換算で道路の数倍〜10倍に達する用途です。Jenkins 式のタイヤ圧項 (p/750)^1.5 が大きく効くため、タイヤ圧 1100 kPa では係数が約 1.78 倍。表層を厚くするだけでなく、骨材級別・バインダグレードまで含めた総合設計が必要になります。

維持管理計画(PMS)の初期評価:道路管理者は数千 km の路線網について、毎年わだち深さの推移を測定しています。新規舗装の初期予測を本ツールで作っておけば、実測値が大幅にずれた区間を「想定外の重車両通過」「異常高温」など要因分析の入口に使えます。MEPDG のような重いツールを動かす前の一次スクリーニングに最適です。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「Jenkins 式の結果をそのまま実測値だと信じる」こと。本式は LRRB 99-31 が観測した Minnesota 州の試験区間データに対する経験式で、±30〜50% の誤差は普通にあります。日本のアスファルト混合物・骨材・温度履歴は条件が異なるため、本ツールの値はあくまで「相対比較・感度分析」のためのものです。絶対値の設計には MEPDG や現地キャリブレーション済みの式を用い、Jenkins は「混合物を変えると何倍わだちが減るか」「温度補正の感覚をつかむ」用途に限定してください。

次に、「ESAL を年平均で 1 つの値に集約する」のは要注意です。Jenkins 式は累積 N の 0.3 乗で効くため、初期 5 年に交通量の 8 割が集中する場合と、30 年で均等に分散する場合では、同じ総 ESAL でもわだち進行カーブが大きく違います。実務では成長率を考慮した時間積分が必要で、本ツールの単純積(ESAL × Life)は「成長率を無視した上限値」と理解してください。物流拠点の新設・撤退で交通量が階段状に変わるケースでは特に注意が必要です。

最後に、「Jenkins はわだちだけ、疲労ひび割れは別」という点。アスファルト舗装の劣化モードは大きく「流動わだち(夏・高温支配)」と「疲労ひび割れ(冬・低温+繰返し荷重支配)」の 2 つに分かれ、設計上はそれぞれ別の式(疲労は Asphalt Institute 式や日本指針の式)で評価します。本ツールが「わだち OK」と出ても、寒冷地ではひび割れで先に寿命を迎えることがあり、両者を別個に評価したうえで厳しい方を採用するのが正解です。総合判定には MEPDG など複合モデルが必要になります。

使い方ガイド

  1. 表層厚(20~50mm)と粗粒度アスコン混合物の種類を選択します
  2. 累積交通量ESALを入力または交通量・設計年数から自動計算させます(例:年間100万台、設計15年 → ESAL 2.5×10⁶)
  3. 平均舗装温度(10~35℃)を設定するとJenkins式で温度係数が自動算出され、わだち深さ予測値がリアルタイム更新されます
  4. 許容わだち深さ(通常20mm)との比較から舗装寿命と必要オーバーレイ厚が決定されます

具体的な計算例

表層厚35mm、粗粒度アスコン(セメント安定処理基層上)、累積ESAL 3.0×10⁶、設計温度20℃の場合:温度係数0.85、Jenkins式によるわだち深さ予測8.2mm。許容20mmに対し余裕度2.4倍で寿命12年と評価されます。ESAL 5.0×10⁶では予測深さ13.7mm、寿命7年となりオーバーレイ5cm推奨。北海道(平均気温10℃)と沖縄(28℃)では同条件でも温度係数が±0.15変動し、わだち進行速度に大きな地域差が生じます。

実務での注意点