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RF・高周波

抵抗減衰器パッド(T型 / π型)シミュレーター

特性インピーダンス Z₀ にマッチしたまま信号レベルを一定のdBだけ下げる「抵抗減衰器パッド」を設計するツールです。減衰量・Z₀・入力電力・回路形状(T型 / π型)を変えると、3本の抵抗値、出力電力、消費電力、電圧比がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
減衰量
dB
入出力間の信号レベル差(電力比 = 10^(dB/10))
特性インピーダンス Z₀
系のリファレンスインピーダンス。50Ω が RF測定系の標準
回路形状
T型(直列・並列・直列)/π型(並列・直列・並列)
入力電力 P_in
W
パッド入力ポートに入射する実効電力
内部抵抗 R_s
Ω
信号源側の出力インピーダンス(参考表示用)
計算結果
電圧比 α (倍)
R 直列 (Ω)
R 並列 (Ω)
出力電力 P_out (W)
消費電力 P_diss (W)
出力電圧比 (%)
回路図(T型 / π型)— 信号アニメーション

3本の抵抗で構成された2ポート減衰器。入力側から信号が流れ、選択した形状(T型 or π型)と算出された抵抗値で減衰します。色の濃淡は信号レベルの変化を表します。

T型 と π型 の抵抗値比較
消費電力 vs 減衰量
理論・主要公式

$$\alpha = 10^{dB/20},\qquad \text{T-pad}:\ R_1=Z_0\frac{\alpha-1}{\alpha+1},\ R_2=\frac{2\alpha Z_0}{\alpha^{2}-1}$$

α は電圧比(α=10^(dB/20))。T型では2本の直列腕 R1=R3、中央の並列腕 R2。R1 と R2 は α と Z₀ だけで決まり、入力インピーダンスは負荷側を Z₀ で終端したとき正確に Z₀ になる。

$$\text{π-pad}:\ R_1=Z_0\frac{\alpha+1}{\alpha-1},\ R_2=\frac{(\alpha^{2}-1)Z_0}{2\alpha}$$

π型では2本の並列腕 R1=R3、中央の直列腕 R2。T型とπ型は性能上等価で、選択は抵抗値の入手性と発熱分担で決める。

$$P_{\text{out}}=\dfrac{P_{\text{in}}}{10^{dB/10}},\qquad P_{\text{diss}}=P_{\text{in}}-P_{\text{out}}$$

電力比は 10^(dB/10)。30dB なら入力電力の 99.9% が3本の抵抗で熱として消費される。

抵抗減衰器パッドとは

🙋
「減衰器パッド」ってRF系の本でよく出てきますけど、要するに信号を弱くする抵抗の塊ですよね?なんでわざわざ3本も抵抗を使うんですか?1本のシリーズ抵抗じゃダメなんですか?
🎓
うん、いいところに気づいたね。シリーズ抵抗1本でも信号は減るけど、それだと入出力のインピーダンスが大きく変わってしまうんだ。例えば50Ω系のラインに100Ωをポンと挿入したら、信号源から見たインピーダンスは150Ω、負荷から見ても150Ω。これだとRF帯では反射が起きて、減衰量自体も周波数で変わってしまう。減衰器パッドの本質は「Z₀マッチを保ったまま」減衰させることで、それを実現するのに最低3本の抵抗(T型かπ型)が必要なんだよ。
🙋
なるほど、マッチングのために3本必要なんですね。T型とπ型がありますけど、どっちがいいんですか?数学的に違うんでしょうか?
🎓
これがおもしろくて、T型とπ型は性能上は完全に等価なんだ。同じZ₀・同じdBに対して、どちらの形でも同じ減衰量・同じインピーダンスマッチが得られる。違うのは抵抗値の範囲。例えば 10dB / 50Ω だと、T型は約26Ω・35Ω・26Ω、π型は約96Ω・71Ω・96Ω になる。実務では「E96系列に近い値が出やすい方」「発熱を分散しやすい方」「PCBレイアウトしやすい方」で選ぶ。上のチャートで切り替えてみると違いが見えるよ。
🙋
減衰量はどんな値を使うのが普通なんですか?任意の値でいいんでしょうか?
🎓
よく使うのは 3dB・6dB・10dB・20dB・30dB の「キリのいい値」だね。3dB は電力を半分、6dB は1/4、10dB は1/10、20dB は1/100。10dB が「基本ステップ」として一番よく使われる。任意の値が欲しいときは、標準パッドを直列にして dB で加算する。10+10+3=23dB みたいな感じ。スペアナの入力保護に10dB、高出力信号源の出力レベル下げに20dBや30dB、ミキサ前のレベル合わせに3dBや6dB、というのが典型的な使い分けだよ。
🙋
減衰させた分のエネルギーって、抵抗の中で熱になるってことですよね?大きいdBだとかなり熱くなりそう…
🎓
そう、そこは超重要なポイントだ。30dB パッドだと入力電力の 99.9% が3本の抵抗で熱に変わる。例えば入力10Wの信号源に30dBパッドをつけると、ほぼ10W分の発熱を抵抗で逃さないといけない。普通のチップ抵抗じゃ無理で、フランジマウント型の数十W定格、ヒートシンク必須になる。下の「消費電力 vs 減衰量」グラフを見ると、減衰量が大きいほど指数関数的じゃなくてサチって P_in に近づいていくのがわかる。逆に1dBや3dBなら消費電力は限定的だから、小型の表面実装抵抗で済む。電力定格を間違えると、抵抗が一発で焼損するから注意しよう。
🙋
最後に、これって高周波だとどこまで使えるんですか?RFって100MHzとか1GHzとか、ものすごく高い周波数ですよね?
🎓
純抵抗だから理論上はDC〜∞でフラットに減衰するんだけど、実物の抵抗には寄生インダクタンスと寄生キャパシタンスがついていて、これが高い周波数で効いてくる。リード線付きの抵抗だと数百MHzで特性が崩れ始める。0603サイズのSMDチップ抵抗なら数GHzまで、超薄膜のチップ抵抗やストリップライン構造の専用パッドだと数十GHzまで使える。市販の同軸パッドだとDC-18GHzや DC-40GHz といった高性能品もある。「どの周波数まで使えるか」は必ずデータシートのVSWR vs 周波数のグラフを確認してね。

よくある質問

抵抗減衰器パッドは、3本の抵抗をT型またはπ型に組んだ2ポート回路で、特性インピーダンス Z₀(典型的には50Ω)にマッチした入出力を保ったまま、信号を一定のdBで減衰させる回路です。コンデンサやインダクタを使うと、周波数によってインピーダンスが変わるため、減衰量が周波数特性を持ってしまい、しかも反射(リアクタンス性ミスマッチ)が発生します。純抵抗だけで構成すれば、DC〜数十GHzまでほぼフラットな減衰特性と良好なインピーダンスマッチが得られます。これがRF測定系で純抵抗パッドが標準となっている理由です。
T型とπ型は数学的には完全に等価で、任意の減衰量とZ₀に対して、どちらの形でも同じ性能(同じ減衰量・同じ入出力マッチ)の回路を設計できます。違うのは抵抗値の範囲と電力分担です。π型は直列抵抗の値が小さくなる傾向にあり、T型は並列抵抗の値が小さくなる傾向にあります。実務では、(1) どちらが E96 系列の標準抵抗値に近いか、(2) どちらが発熱を逃がしやすいレイアウトになるか、(3) 寄生インピーダンスの影響、を見て選びます。例えば 10dB / 50Ω の場合、T型は 26Ω + 35Ω + 26Ω、π型は 96Ω + 71Ω + 96Ω となります。
RF測定・実験で頻用されるのは 3dB、6dB、10dB、20dB、30dB、40dB の組み合わせです。3dB は電力を半分(電圧で約0.707倍)、6dB は電力を1/4(電圧で半分)、10dB は電力を1/10(電圧で約0.316倍)、20dB は電力を1/100(電圧で1/10)、と覚えると素早く設計判断ができます。10dB は最もよく使う「1ステップ」のアッテネーター単位で、スペクトラムアナライザの入力保護、高出力信号源の出力レベル調整、ミキサ前段のレベル合わせなどに使われます。複数のパッドを直列接続すると減衰量はdBで単純に加算されるため、3dB+10dB+10dB=23dB といった組み合わせで任意の値を作れます。
減衰器パッドの抵抗は実電力を熱に変えて消費します。入力1W・10dBパッドなら 0.9W の熱が3本の抵抗に分配されます。30dBパッドなら入力電力の 99.9% が熱になるため、入力10W・30dBパッドではほぼ 10W 分の放熱が必要で、ヒートシンク付きの大型抵抗(フランジマウント型、数十W定格)が必須です。T型とπ型で発熱分担が異なる(多くは中央の抵抗1本に集中)ため、その1本の電力定格を入力電力の半分以上に取ると安全側です。RF用パッドでは抵抗の電力定格、ケース温度、上限周波数(寄生インダクタンスの影響)の3つを必ずデータシートで確認してください。

実世界での応用

RF測定機器の入力保護:スペクトラムアナライザやネットワークアナライザの入力ポートには、信号源からの過大入力でフロントエンドのミキサや LNA を破壊しないように、10dB や 20dB の固定パッドを挟むのが定番です。「測定したい信号がフルスケールを超えそうなときは、まずパッドを入れる」というのがRF測定の鉄則。本ツールでZ₀=50Ω・dBを変えながら必要な抵抗値と消費電力を確認できます。

信号源・出力段のレベル合わせ:シグナルジェネレータの内蔵減衰器の最小ステップ(多くは0.1dBや1dB)より小さな調整、あるいは出力レベルが高すぎる発振器の出力を被試験回路に適合させるとき、固定パッドを直列に入れます。発振器の出力インピーダンスをほぼ完璧に50Ωに見せかける効果もあり、特に複雑なミキサや非線形回路を駆動するときの安定動作に効きます。

カスケード接続による任意減衰:3dB・6dB・10dB・20dB のパッドを工具箱に常備し、必要なときに直列接続して任意の減衰量を作るのは、無線エンジニアの基本テクニックです。10+10+3=23dB、20+6=26dB、というように加算でき、デジタル設定式の可変減衰器を持っていない現場でも、固定パッドの組み合わせで広い範囲をカバーできます。

分配器・コンバイナの整合:2台の信号源を1つの被試験デバイスに合成して入れるとき、信号源同士を直接つなぐと相互干渉や逆流が起こります。各信号源の直後に6dBや10dBのパッドを入れると、相互の影響が dBで2倍に減衰してアイソレーションが取れる。「アッテネーターは安価で最強のアイソレータ」と言われる所以です。

よくある誤解と注意点

最大の誤解は、「減衰器パッドの電力定格は入力電力以上であればよい」というもの。実際には3本の抵抗が分担して熱を消費するため、特定の1本(多くは中央の抵抗)に消費電力の40〜60%が集中することがあります。例えば 30dB・1W入力の T型パッドでは、中央の並列抵抗1本に0.5W近くの熱が乗ることがあり、5本の0.25W抵抗をパラに使う、といった「平均だけ見た設計」をすると、その1本が真っ先に焼損します。本ツールの抵抗値表示を見て、各抵抗を流れる電流から個別に消費電力を見積もるのが正しい設計手順です。

次に、「Z₀=50Ωのパッドは50Ω系で使う限り常に正しく動く」という思い込み。パッドが Z₀ にマッチした入力インピーダンスを示すのは「出力ポートが Z₀ で終端されているとき」だけです。出力に何もつないでいない(オープン)、ショート、あるいは Z₀ から大きく外れた負荷をつないだ場合、入力インピーダンスも崩れ、減衰量も変わります。アッテネーターを単独で測定するとき、必ず出力側に Z₀ ターミネーション(50Ω終端)をつけることを忘れないでください。

最後に、「dBは線形に加算できるから何枚でもカスケードできる」という単純化。理論上は確かにdBで加算できますが、各パッドが完全にZ₀マッチしている前提です。安価な部品で組んだパッドや、寄生成分が大きいパッドを多段接続すると、各段のミスマッチが反射として残り、合計減衰量が設計値からずれます。特にGHz帯では、SMA コネクタの数や同軸ケーブルの寄生も無視できません。多段カスケードする場合は、各段の VSWR とリターンロスをチェックすることが必要です。

使い方ガイド

  1. 減衰量を0〜60dBの範囲で入力します。例えば20dBの場合、電圧比は0.1倍に減衰します。
  2. 特性インピーダンスZ₀を50Ω(標準RF)、75Ω(ビデオ)、または600Ω(オーディオ)から選択します。
  3. 入力電力(0.1mW〜100W)を設定し、T型またはπ型パッド構成を選択してシミュレーションを実行します。

具体的な計算例

50ΩのRF回路において20dB減衰パッド(T型)を設計する場合:入力電力1W、減衰量20dBで計算すると、直列抵抗R₁=28.6Ω、並列抵抗R₂=129.5Ω、出力電力は0.01W(10mW)となります。消費電力は990mWで、出力電圧比は10%に低下します。増幅器出力とアッテネーター間の反射損失を最小化し、インピーダンスマッチングを維持できます。

実務での注意点