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CCS・アミン吸収

CCS アミン吸収塔 設計シミュレーター

火力発電所・製鉄所・セメント工場の排ガスからCO2を化学的に取り除く「アミン吸収塔」を設計するツールです。排ガス流量・CO2濃度・回収率と4種類のアミン(MEA/KS-1/ピペラジン/MDEA+PZ)を切り替えると、必要な塔径・塔高・アミン循環量・再生熱負荷・$/t-CO2の捕集コストがリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
排ガス流量 Q
m³/h
石炭火力1基あたり約2,000,000 m³/h、LNG火力で1,000,000 m³/h程度
入口 CO2 濃度
vol%
石炭火力 12〜15%、LNG火力 4〜5%、セメント窯 20〜30%
目標回収率
%
商用プラントは90%、IEA 1.5℃シナリオでは95〜99%
アミン溶液
反応速度・捕捉容量・再生熱負荷が変わります
ガス温度(塔入口)
°C
塔頂圧力
kPa
充填部の塔高 H
m
設計した塔の充填層高さ。必要塔高と比較されます
計算結果
入口 CO2 (t/h)
回収 CO2 (t/h)
アミン循環量 (t/h)
必要塔高 (m)
再生熱負荷 (MWth)
捕集コスト ($/t-CO2)
吸収塔プロセス図 — リーン/リッチアミン循環

下から排ガスが入り、上からリーンアミンが流下。塔頂で CO2 減少、塔底からリッチアミンが再生塔へ。色の濃さがCO2吸収量を表します。

塔高 vs CO2 回収率(NTU-HTU)
アミン比較 — 再生熱負荷 (GJ/t-CO2)
理論・主要公式

$$\dot n_{\rm CO_2,in} = \frac{Q}{22.4}\cdot \frac{y_{\rm CO_2}}{100},\quad \dot m_{\rm CO_2,cap} = \dot n_{\rm CO_2,in}\cdot M_{\rm CO_2}\cdot r$$

入口CO2モル流量と回収質量流量。Q:排ガス流量[m³/h]、$y_{\rm CO_2}$:CO2vol%、r:回収率。22.4は標準状態のモル体積[L/mol]。

$$\text{NTU} = -\ln(1-r),\qquad H_{\rm required} = \text{NTU}\cdot \text{HTU},\qquad \text{HTU} = \frac{0.6}{k_{\rm rel}}$$

物質移動段数NTUと必要塔高。$k_{\rm rel}$ はMEA基準の反応速度比(KS-1=1.5、PZ=4.0)。

$$\dot m_{\rm amine} = \frac{\dot m_{\rm CO_2,cap}}{C_{\rm amine}\cdot \Delta\alpha},\qquad \dot Q_{\rm reb} = \dot m_{\rm CO_2,cap}\cdot q_{\rm reg}$$

アミン循環量と再生熱負荷。$C_{\rm amine}$:捕捉容量[mol/kg]、$\Delta\alpha$:ロード差(≈0.3)、$q_{\rm reg}$:再生熱原単位[GJ/t-CO2]。

CCS アミン CO2 吸収塔設計 — MEA/PZ/KS-1 比較

🙋
最近よく聞く「CCS」って、要するに発電所の煙突にフィルターをつけてCO2を取るってこと?こんな大掛かりな塔がなぜ必要なんですか?
🎓
惜しい!「フィルター」だと粒子しか取れないけど、CO2は気体だから「化学的に捕まえる」必要があるんだ。アミンっていうアルカリ性の溶液をシャワーみたいに降らせて、下から登ってくる排ガスのCO2と化学反応させて溶液に溶かし込む。これがアミン吸収塔。例えば100万m³/hの排ガスを処理する塔は直径10m・高さ50mにもなる、化学プラント並みの巨大設備だよ。
🙋
なるほど!じゃあ左でアミンをMEAからKS-1に切り替えると、再生熱負荷が4.0から2.5GJ/t-CO2にガクッと下がるんですけど、これは何が違うんですか?
🎓
そこがCCSの肝なんだ。MEA(モノエタノールアミン)はCO2と強く結合する代わりに、リボイラーで熱を加えて分離するときに大量の蒸気が要る。これが4.0 GJ/t-CO2、つまり1トンのCO2を回収するのに重油約100kg分の熱量を使う。KS-1は関西電力と三菱重工が開発した「立体障害アミン」で、CO2との結合がほどよく弱いから2.5 GJ/t-CO2で済む。$72/tだった捕集コストが$60/tに下がる計算で、世界中の商用プラント(米国・サウジ)で採用されているよ。
🙋
捕集コストが下がるのは分かりましたが、$60/tでもCO2排出権の市場価格($80〜100/t)に近いですよね。なのに普及してないのはなぜですか?
🎓
良い質問!コスト以外に3つハードルがある。1つ目は「エネルギーペナルティ」で、火力発電の出力が20〜30%下がる。500MWの発電所がCCS付きで350MWになるイメージで、電力単価が跳ね上がる。2つ目は「貯留場所」で、回収したCO2を地中1km以下に圧入できる適地が限られる。3つ目はアミン劣化で、酸素や微量SO2でアミンが壊れて補充が要る。ピペラジン(PZ)は反応が速くて塔高を半分にできるけど、ロード差が小さく循環量が増える。だから「万能アミン」はまだ存在しないんだ。
🙋
塔高のところで「必要塔高 1.4m」と出ているのに、実機が50mあるのはなぜですか?
🎓
いいツッコミ!本ツールが出す「必要塔高」は充填層(パッキング部)の物質移動に必要な高さで、NTU×HTUの理論値だね。実機ではここに、(1) ガス分配のための入口プレナム3〜5m、(2) リッチアミン抜き出し用のチムニートレイ2m、(3) 上部のミスト除去(デミスタ)2m、(4) 中間冷却器3m、を全部足す。さらに安全率1.5を掛けて、最終的に1.4m×10倍以上の高さになる。だからこのツールは「最低限これ以上必要」という下限値として使ってね。

よくある質問

目標回収率 r から物質移動段数 NTU = -ln(1-r) を求め、移動単位高さ HTU と掛け合わせて H_required = NTU·HTU で算出します。HTU は HTU = 0.6/反応速度比(MEA基準)で近似され、KS-1 やピペラジンのように反応速度が速いほど HTU が小さく、同じ回収率でも低い塔高で済みます。例えば回収率90%、MEA 30wt%なら NTU≈2.30、HTU≈0.6mで、必要塔高は1.4m程度(充填部のみ、ガス分配・デミスタ込みで実機は10〜30m)と概算されます。
MEA 30wt%は最も古典的で、反応速度・捕捉容量・再生熱負荷(約4.0 GJ/t-CO2)のバランスが標準値です。関西電力・三菱重工のKS-1は立体障害アミンで、再生熱負荷が約2.5 GJ/t-CO2まで下がる代わりにロイヤリティが必要です。ピペラジン(PZ)は反応速度がMEAの4倍と非常に速く、塔高を小さくできますが高濃度で固化しやすく、MDEAとブレンドして使うのが一般的です。新規プラントでは KS-1 や MDEA+PZ が、既設改造では MEA が選ばれる傾向です。
アミンとCO2の結合を切るには「リボイラー」で蒸気を供給する必要があり、これが MEA で約4.0、KS-1で約2.5 GJ/t-CO2 にもなります。火力発電所の発電量の20〜30%が再生熱に取られるため、運転コストの50〜70%を占めます。捕集コストの目安は『40+再生熱負荷×8 [USD/t-CO2]』で、MEAで約72 $/t、KS-1で約60 $/tと、再生熱負荷が約1 GJ下がるだけで $8/t も安くなります。
アミン循環量はリーン/リッチ熱交換器・リボイラー・ポンプの全てを巨大化させます。本ツールでは循環量を C = 回収CO2 /(捕捉容量×ロード差0.3)で概算し、典型値はMEA・100t-CO2/hの回収で約500〜800 t/hとなります。これが2,000 t/hを超えるとポンプ動力だけで数MWに達し、回収コストが急増します。捕捉容量の大きい KS-1(6 mol/kg)やPZ(8 mol/kg)に切り替えると、循環量を3〜5割減らせます。

実世界での応用

石炭火力発電所のレトロフィット:米国Petra Nova(テキサス、240MW相当、2017)、カナダBoundary Dam(110MW、2014)が代表例。KS-1相当のアミンで、日量4,500〜5,400トンのCO2を回収し、CO2-EOR(増進油回収)に使われました。本ツールで CO2濃度12〜15%、回収率90%、KS-1を選ぶと、それらの設計値(再生熱負荷2.5 GJ/t、捕集コスト$60/t)が再現されます。

セメント工場の脱炭素化:セメント窯の排ガスはCO2濃度が20〜30%と高く、アミン吸収にとって有利な条件です。HeidelbergCementのBrevik(ノルウェー、2024稼働)はMEAベースで年間40万トンを回収。本ツールでCO2濃度を25%に上げると、必要塔径が小さくなり、再生熱はセメント排熱で部分的に賄えることが分かります。鉄鋼の高炉ガス(CO2 22%、H2 4%、CO 23%)も同様の対象です。

ブルー水素製造の前処理:天然ガス改質(SMR)で水素を作る際、CO2を90%以上回収すれば「ブルー水素」と呼ばれます。改質ガスはCO2濃度15〜20%・圧力1〜3MPaと高圧なので、アミンの代わりに物理吸収(Selexol、Rectisol)も使われますが、低圧用途ではアミンが主流。本ツールで圧力150〜200kPa・CO2 18%にすると、改質ガス回収の概算ができます。

研究・教育用途:大学のプロセス工学・化学工学の授業で、NTU-HTU法やKremser式の理解に使えます。Aspen Plus等の本格的なシミュレータの前に、本ツールでアミン選定とコスト感を掴むと、CCSプロセスの全体像が頭に入りやすくなります。卒研テーマで「新規アミンの経済性評価」を行う際の比較ベースラインとしても便利です。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解は、「CCSは煙突にフィルターを追加するだけで済む」というものです。実際は化学プラント1つ分の追加投資(500MW火力でCAPEXが$500M〜$1B規模)が必要で、敷地もボイラー本体と同程度を占めます。回収したCO2を地下1km以下に圧入する「貯留井」も必須で、適地は世界的にもアメリカ湾岸・北海・オーストラリア・日本では北海道苫小牧などに限られます。「ボルトオンで脱炭素できる」というイメージで導入を検討すると、CAPEX見積もりが3〜5倍ずれます。

次に、「再生熱負荷さえ下げれば最強のアミンになる」という思い込み。確かにKS-1やCANSOLVは再生熱で優位ですが、(1) ロイヤリティ料、(2) アミン劣化速度、(3) 腐食性、(4) アミン蒸気の大気放出(健康影響)の4つでMEAより悪い指標もあります。例えばピペラジン(PZ)は反応速度がMEAの4倍と素晴らしい一方、40wt%以上で固化点が25℃を超え、寒冷地では配管が詰まる事故が起きました。本ツールの「再生熱負荷」だけでアミンを選ぶのは危険で、必ずベンダーの腐食試験・劣化試験データと併せて評価してください。

最後に、「回収率99%を目指せばカーボンネガティブに近づく」という誤解。NTU = -ln(1-r) の式から分かる通り、回収率を90%→99%に上げるとNTUが2.3→4.6と倍になり、塔高も倍に必要です。同時にアミン循環量・再生熱も増え、捕集コストは1.5〜2倍に跳ね上がります。さらに発電所全体の出力低下も激しく、IEAの試算では「最後の5%の回収」が「最初の90%」と同じくらい高コストです。本ツールで回収率を90→95→99と動かして、必要塔高と再生熱が指数的に増えることを確認してください。実務では「90〜95%で止める」のが最適解になることが多いです。

使い方ガイド

  1. 排ガス流量(m³/h)とCO2濃度(vol%)を入力。石炭火力は12~15%、天然ガス火力は3~5%が標準です
  2. 目標回収率(70~95%)とアミン種を選択。MEAは従来型で再生熱負荷が高く、KS-1やPZは低エネルギー型です
  3. 吸収塔入口ガス温度を40~60℃の範囲で設定し、計算ボタンで必要塔径・再生熱・捕集コストを得ます

具体的な計算例

石炭火力排ガス100,000m³/h、CO2濃度13vol%、目標回収率90%、MEA30wt%、入口温度45℃の場合:入口CO2は約37t/h、回収CO2は約33t/h、必要アミン循環量は約420t/h、吸収塔径4.2m×塔高18m、再生熱負荷8.5MWth、捕集コストは約65$/t-CO2となります。同条件でPZ(酵素模擬触媒型)を選択すれば再生熱は6.2MWthに低減し捕集コストは約48$/t-CO2に改善されます

実務での注意点