コンクリート型枠側圧 ACI 347 シミュレーター 戻る
コンクリート工事・型枠

コンクリート型枠側圧 ACI 347 シミュレーター

生コンクリートが型枠に与える側圧 P_max を ACI 347R-14 式で計算します。打設速度・温度・セメント種別・混和剤・部材形状(壁/柱)を変えると、設計側圧と等価圧力高さ、プライウッド許容スパン、フォームタイ間隔、凝結時間がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
打設速度 R
m/h
コンクリート温度 T
°C
単位容積重量 w_c
kN/m³
部材形状
壁式・柱式で式が切り替わります
セメント種別
水和速度に応じた係数 C_c を自動設定
スランプ
mm
混和剤
流動性に応じた C_sp 係数を自動設定
打設高さ h
m
hydrostatic 上限 w_c·h のキャップに使用
バイブレータ挿入深さ
m
過剰締固めは hydrostatic 圧を増大させる目安
計算結果
設計側圧 P_max (kPa)
等価圧力高さ h_eq (m)
プライウッド許容スパン (mm)
タイ間隔 (m)
凝結時間 (hr)
流動性係数 C_w
型枠・打設・側圧分布

左:型枠とコンクリート打設の進行。中央:三角形分布(ACI 347 式)と hydrostatic 上限の比較。右:タイロッドの配置。色は P_max の安全度(緑→橙→赤)。

側圧 vs 型枠高さ(三角形 vs hydrostatic)
セメント・混和剤による P_max の感度
理論・主要公式

$$P_{max} = w_c\left(7.2 + \frac{720\,R}{T+17.8}\right) C_w \;\leq\; w_c \cdot h$$

ACI 347R-14 壁式(低速打設、SI 単位)。w_c:単位容積重量 (kN/m³)、R:打設速度 (m/h)、T:温度 (°C)、C_w:セメント×混和剤の流動性係数、h:打設高さ (m)。

$$P_{max,col} = w_c\left(7.2 + \frac{785\,R}{T+17.8}\right) C_w$$

柱式。壁より係数が大きい(逃げ場が無いため)。いずれも下限 30 kPa を設けて極小値を防ぐ。

$$L_{ply} = \sqrt{\dfrac{8\,\sigma_{a}\,t^2}{P_{max}}}, \qquad s_{tie} = \sqrt{\dfrac{F_{tie}}{P_{max}}}$$

プライウッド許容スパン L_ply(t=18 mm、σ_a=7.5 MPa)とタイ間隔 s_tie(F_tie=30 kN)。設計側圧 P_max の増減にどう効くかを直感的に確認できる。

コンクリート 型枠側圧 ACI 347 — 打設速度・水和

🙋
コンクリートを型枠に流し込むときって、ただ水を入れるみたいに「上から下まで同じ圧力」じゃないんですか?
🎓
それがそうじゃないんだ。打設直後の生コンは液体みたいに振る舞うから、下のほうは hydrostatic(流体静圧)に従って w_c·h で圧力が増える。でも時間が経つとセメントが水和して、ある深さから下は「もう固まり始めた層」になる。だから本当の側圧分布は途中で頭打ちになる三角形なんだ。左で打設速度 R を 2 m/h 前後にすると、P_max が 45 kPa あたり。これが基準値だね。
🙋
なるほど。じゃあ R を上げるとどうなるんですか?
🎓
スライダーで R=5 m/h まで上げてみて。P_max がほぼ hydrostatic(w_c·h)に近づくのが分かる。ACI 347 では壁の場合、R が 2.1 m/h までは「低速式」、2.1〜4.5 m/h で「中速式」、それ以上は「速いから水和が間に合わないので hydrostatic にする」と切り替わる。柱はもっと厳しくて、係数 7.2 が 7.85 に上がる。式の右辺で w_c·h が常に上限になっていることも忘れちゃいけない。
🙋
温度や混和剤も結構効きますね…ポリカル系を選ぶと一気に P_max が増える。なんでですか?
🎓
水和が遅いから、いつまでも液体のまま型枠を押し続けるんだよ。低温も同じ理由で凝結が遅れて側圧が増える。高性能 AE 減水剤(ポリカル系)は C_w=1.4 倍、ナフタレンで 1.2 倍、リグニン系で 1.0 倍と ACI 347 が定めている。自己充填コンクリート(SCC)だと特に注意で、設計者が「普通の型枠で大丈夫」と思って打って、タイロッドが破断する事故が実際に何件も起きている。アメリカでは 1971 年の Skyline Plaza(バージニア)型枠崩壊で 14 人が亡くなった事例が教科書に必ず載るよ。
🙋
じゃあ設計側圧が出たら、その先はどう使うんですか?
🎓
3 つを同時に決めるよ。(1) プライウッド(合板)の厚さと縦端太のスパン、(2) フォームタイの間隔と種類、(3) スタッド・ウェーラーの本数。本ツールは t=18 mm 合板(許容曲げ 7.5 MPa)とタイ容量 30 kN を仮定して、許容スパン L_ply とタイ間隔 s_tie を即時に出す。実務では PERI、Doka、Meva、NOE-Schaltechnik といったメーカーのカタログ表と突き合わせて、より厳しい方を採用する。日本だと JASS 5 や型枠の設計指針が同じ役割を担っているね。
🙋
凝結時間も出てますが、これは何に使うんですか?
🎓
「打設を一時停止してもよい時間」と「次のリフトをいつ打てるか」の目安だよ。本ツールの式は 20°C で約 6 時間を基準に、温度が下がると指数的に長くなる。例えば 10°C だと 14 時間ほど。寒中コンクリートで「夜間に打設止めて朝再開」したら、コールドジョイントが起きるのはこのせい。逆に夏場は 4 時間で凝結が始まるから、長距離運搬は要注意ということになる。

よくある質問

ACI 347R-14 は、生コンが下から上へ打ち上がる途中で水和・凝結が進んで剛性を獲得することを反映した実験式です。壁の標準式は P_max = w_c·(7.2 + 720R/(T+17.8))·C_w·C_c で、R は打設速度 (m/h)、T はコンクリート温度 (°C)、w_c は単位容積重量 (kN/m³)。これに hydrostatic 上限 w_c·h を掛けて、上限を超える側圧が出ないようにキャップします。打設が速い/低温/混和剤多用ほど P_max が増えます。
壁は鉛直の長さ方向にも水平の長さ方向にも広がっているため、コンクリートが横方向に少しだけ「逃げる」効果があり、低速打設では側圧が抑えられます。柱は四方を囲まれて逃げ場がなく、しかも一気に打ち上げることが多いため、より大きな側圧が発生します。ACI 347R-14 では柱用に P_max = w_c·(7.2 + 785R/(T+17.8))·C_w·C_c という別式を用意し、係数を大きくしています。また打設速度 R が 2.1 m/h を超えると壁式も別形式に切り替わり、4.5 m/h を超えるとほぼ hydrostatic 側圧と仮定します。
はい、上げます。本ツールでは ACI 347 の混和剤係数 C_w(または C_sp)を、無添加で 1.0、リグニン系で 1.0、ナフタレン系で 1.2、ポリカル系(高性能 AE 減水剤)で 1.4 に設定しています。理由は凝結遅延と高い流動性で、コンクリートが長時間「液状」のまま型枠に圧をかけ続けるからです。高層柱やマスコンクリート、自己充填コンクリート (SCC) では P_max が hydrostatic ベースの 1.4 倍に達することがあり、タイロッドの破断事故も世界各国で報告されています。
プライウッド許容スパンは「縦端太(whaler)間の最大距離」、タイ間隔は「フォームタイ(form tie)の取付ピッチ」を意味します。本ツールは、プライウッド厚 18 mm・許容曲げ応力 7.5 MPa、タイ容量 30 kN を仮定して概算値を出力します。実務では PERI/Doka/NOE-Schaltechnik 等のメーカーカタログにある許容スパン表と突き合わせ、より小さい方を採用してください。なお高側圧時はプライウッド厚を 24 mm に上げる・タイを高耐力品に変えるなどの対策が必要です。

実世界での応用

高層 RC 建築のコア壁・柱:1 リフトで 3〜4 m を一気に打ち上げる高層 RC のコア壁では、打設速度 R が 5 m/h を超えるケースもあり、P_max は hydrostatic(w_c·h)にほぼ等しくなります。スリップフォームやジャンプフォームでは PERI ACS、Doka SKE といった大型システムが使われ、内蔵された PT 棒で側圧を確実に保持します。本ツールで R=5、h=4 と入れると一気に P_max が hydrostatic 上限へ張り付くのが見えます。

橋脚・ダム・マスコンクリート:橋脚や重力式ダムのリフト打設では、打設速度を意図的に 1 m/h 以下に下げて P_max を抑える「低速打設戦略」が常套手段です。本ツールで R=0.5 とすると、P_max が hydrostatic を大きく下回り、薄手のプライウッドと少ないタイで施工可能になります。代わりに工期が伸びるためコストとのトレードオフが必要です。

自己充填コンクリート(SCC)の薄壁打設:SCC は流動性が極めて高く、ポリカル系超塑化剤を多用するため、ACI 347 の補正でも実測 P_max が予測の 1.2〜1.5 倍になることが報告されています。CIRIA Guide 108(英国)や DIN 18218(独)には SCC 専用の側圧式があり、薄壁では特に注意が必要です。本ツールで「ポリカル系」を選ぶと C_w=1.4 倍が即座に反映されます。

型枠崩壊事故の事後検証:1971 年 Skyline Plaza(バージニア州、14 死)、2003 年 Heathrow 駐車場(英)、2019 年 Hard Rock New Orleans(米、3 死)など、世界の重大事故のいくつかは「設計側圧の過小評価」が一因です。事故調査では当時の R・T・混和剤を再現して P_max を再計算し、タイロッドや支保工の許容値と比較する作業が行われます。本ツールはその概算チェックに使えます。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「壁式と柱式を取り違える」こと。壁用の係数 720 と柱用の係数 785 はたった 9% の差ですが、柱では低速式の分岐点(2.1 m/h)も無く、常に R が大きいほど P_max が線形に増えていきます。実際の事故では、コア壁の中の柱状ボックス部分を「壁」と見なして低速式を使い、P_max を 30% 過小評価していた事例があります。形状が複雑な場合は柱式(安全側)を採用してください。

次に、「混和剤係数を 1.0 のままにする」誤り。最近のコンクリートは大半がポリカル系の高性能 AE 減水剤を使っていますが、ACI 347 のデフォルトは無添加(C_w=1.0)を想定しています。配合表(mix design)で必ず混和剤の種類と添加量を確認し、ポリカル系なら 1.4 倍、ナフタレン系なら 1.2 倍をプロジェクト初期から織り込むのが安全です。本ツールでも「無し」を選ぶと P_max が小さく出てしまうので、現実の配合に合わせて選択してください。

最後に、「バイブレータの過剰挿入で hydrostatic 圧が出ない」と思い込むこと。実は逆で、バイブレータを下のリフトまで深く突き刺すと、せっかく凝結し始めた下層が再液状化して側圧が急増します。ACI 347 では「バイブレータの挿入深さは現リフト厚を超えない」と明記されています。本ツールの「バイブレータ挿入深さ」スライダーは目安として表示していますが、実務では現場で必ず徹底してください。Skyline Plaza 事故の事後検証でも、過剰締固めが P_max を 30〜40% 押し上げた可能性が指摘されています。

使い方ガイド

  1. 打設速度(m/hr)を入力します。一般的な型枠工では1~3 m/hrの範囲です
  2. コンクリート温度(℃)、単位体積重量(kN/m³)、スランプ(mm)を設定してACI 347R-14式で側圧を自動計算します
  3. 得られた設計側圧P_max、等価圧力高さh_eq、プライウッド許容スパン、タイ間隔、セメント凝結時間から型枠部材を選定します

具体的な計算例

打設速度2.0 m/hr、気温25℃、コンクリート密度24 kN/m³、スランプ150mm、普通セメントの場合:流動性係数C_w=1.0、計算式P_max=γ_c×(h₀+k×R/T)でP_max≈65~75 kPa、等価圧力高さh_eq≈2.7~3.2 m、普通合板(厚さ15mm)の許容スパン約600mm、φ13タイ間隔0.5 m、凝結時間約8時間と算出されます。速度を0.5 m/hrに低下させるとP_maxは35kPa程度に低下し、型枠材の断面を縮小できます

実務での注意点