パラメータ設定
リセット
簡略仕様: R_1y = R_1x(物体1は球面)、物体2の R_2y は B/A から逆算。両物体とも鋼(E=210 GPa, ν=0.3)固定。
楕円接触面と圧力分布
左: 接触面の上面図(楕円、寸法 2a × 2b)/右: 接触面上の圧力分布(半楕円体、色 = 圧力)
理論・主要公式
等価曲率と等価弾性率:
$$A = \tfrac{1}{2}\!\left(\tfrac{1}{R_{1x}}+\tfrac{1}{R_{2x}}\right),\quad B = \tfrac{1}{2}\!\left(\tfrac{1}{R_{1y}}+\tfrac{1}{R_{2y}}\right),\quad \frac{1}{E^*} = \frac{1-\nu_1^2}{E_1} + \frac{1-\nu_2^2}{E_2}$$
等価曲率半径 $R_{eq} = 1/(2\sqrt{AB})$、曲率比 $k=B/A$ に対する係数 $m, n$ は表値を線形補間して求めます。
楕円接触面の長半径 $a$・短半径 $b$:
$$a = m\left(\frac{3FR_{eq}}{E^*}\right)^{1/3},\qquad b = n\left(\frac{3FR_{eq}}{E^*}\right)^{1/3}$$
最大接触応力 $p_{max}$(圧力分布は半楕円体):
$$p_{max} = \frac{3F}{2\pi a b},\qquad p_{avg} = \frac{F}{\pi a b}$$
$k=1$(球接触)で $m=n=1$ となり通常のHertz球接触に一致します。
楕円接触面ヘルツシミュレーターとは
🙋
ヘルツ接触って、玉と平面で押し合うときの円形の接触面ですよね?このシミュレーターは「楕円」って書いてあるけど、何が違うんですか?
🎓
いい質問だ。玉と平面のように2方向の曲がり方が同じなら接触面は円になる。でも、例えば軸が直交した2本の円筒(クロス円筒)を押し合わせると、ある方向ではよく密着して、別の方向ではすぐ離れていく。そうすると接触面は楕円になるんだよ。上で「曲率比 B/A」を1にすると円、5や10にすると細長い楕円になるのが見えるはずだ。
🙋
あ、ほんとだ!B/Aを大きくすると右側の圧力分布の山はそのままで、左の楕円が縦に潰れてきますね。なんで係数の表が必要なんですか?単純な式じゃダメなんですか?
🎓
実は楕円接触の厳密解には完全楕円積分という面倒な関数が出てきて、閉じた形では書けないんだ。そこで実務ではRoarkらの教科書にある係数表 m, n を使う。曲率比 k=B/A ごとに m と n が決まっていて、a = m·(3FR_eq/E*)^(1/3)、b = n·(3FR_eq/E*)^(1/3) と計算する。本ツールは k=1,2,5,10,50 の表値を線形補間しているから、教科書値とほぼ同じ結果になるよ。
🙋
最大接触応力 p_max は球の場合と同じ式ですか?
🎓
形は同じ p_max = 3F/(2πab) だ。理由は、圧力分布が半楕円体(卵を半分にした形)になっていて、その体積が総荷重 F と等しいから。a と b の値さえ求まれば、円接触でも楕円接触でも同じ式で最大圧が出る。ちなみに平均圧は F/(πab) なので、最大圧は常に平均圧の1.5倍——これは形によらず一定だよ。
🙋
なるほど!じゃあ車輪とレールの接触はどっちですか?円?楕円?
🎓
あれはまさに楕円接触の代表例。車輪の踏面とレール頭の頂部ではそれぞれ進行方向と横方向で曲率が違うから、接触面は進行方向に長い楕円になるんだ。実務では車輪/レールはもっと複雑な曲率変化を考えた専門ツールで解析するけど、第一近似としてこのシミュレーターでも傾向がつかめる。詳しく見たい人は wheel-rail-contact.html を参照してみて。
よくある質問
曲率比 B/A を1にすると何が起きますか?
k=1 のとき係数は m=n=1 となり、長半径と短半径が等しくなって接触面は完全な円になります。これは通常の球接触(hertz-contact.html で扱う)と一致し、本ツールの一般化が球接触を特殊ケースとして含んでいることが確認できます。荷重 F を 1000 N から 8000 N まで変えると a が約 2 倍(8^(1/3)≈2)になることもチェックできます。
なぜ材質を鋼に固定しているのですか?
本ツールは「楕円形状の幾何効果」と「曲率比による係数 m, n の変化」を直感的に理解することに主眼を置いているため、材料パラメータを固定して幾何だけを変えられるようにしています。鋼-鋼接触は工学上もっとも頻出する組み合わせで、E*=115.4 GPa が得られます。異種材料や非鉄金属の接触を扱いたい場合は hertz-contact.html を併用してください。
B/A を50より大きくしたい場合はどうしますか?
B/A→∞ の極限は線接触に相当します。本ツールは k=50 で表値が頭打ちになり、その先は外挿せず線形補間範囲外として扱います。極端に細長い接触(k≫50)が必要な場合は、線接触として別途モデル化するのが適切で、これは hertz-line-contact.html で扱っています。クロス円筒や玉軸受溝など、実際の工学応用では k=2〜20 程度に収まることがほとんどです。
深さ方向の応力分布も見たいのですが?
本ツールは接触面上の圧力分布のみを扱います。表面下の主応力やせん断応力(転がり接触疲労の起点となる地下応力)を見たい場合は subsurface-stress-hertz.html を参照してください。楕円接触では、深さ方向の最大せん断応力位置は短半径 b と長半径 a の中間程度の深さに発生し、円接触(0.48a)や線接触(0.78a)の中間値となります。
実世界での応用
玉軸受の溝接触: 玉と内輪・外輪の溝は、軸方向と転動方向で曲率半径が異なります。典型的には溝の曲率半径を玉直径の0.515〜0.52倍と僅かに大きく設計し、楕円接触面(長軸が周方向)を作ります。この溝適合度 conformity が小さいほど接触応力は下がりますが、転がり摩擦と発熱は増えるため、転がり疲労寿命とのトレードオフが軸受設計の核心です。
クロスローラ・直交円筒接触: 軸の直交した2本の円筒を押し合わせる場面は、針状ころ軸受の隅切り部、カム機構の従動子、引張試験機の試料保持部などに現れます。同じ荷重でも楕円接触の方が線接触より接触面積が小さく、応力集中が高くなる傾向があるため、許容荷重の評価では本ツールのような一般ヘルツモデルが必要です。
歯車の歯面接触: はすば歯車やはすばかさ歯車では、歯面の主曲率が螺旋方向と歯丈方向で異なり、楕円接触となります。歯面ピッチング寿命の計算 (ISO 6336) ではこの楕円形状が考慮され、接触応力は通常の Hertz 線接触よりも数十%大きくなることがあります。
車輪・レール接触: 鉄道の車輪踏面とレール頭部頂面の接触は、最も身近で重要な一般ヘルツ接触の例です。直線区間では円〜短い楕円ですが、曲線区間でフランジ接触が発生すると非常に細長い楕円となり、応力分布も急峻になります。レール頭部の摩耗形状が変化するに伴い、接触楕円の形状と応力レベルも刻一刻と変化していきます。
よくある誤解と注意点
もっとも多い誤解は、接触面が円か楕円かでp_maxの公式が変わると思ってしまう ことです。実際には円も楕円も同じ p_max = 3F/(2πab) で表され、円接触は a=b の特殊ケースに過ぎません。本ツールで曲率比を 1 → 5 → 10 と変えても、stat カードに表示される p_max の式は変わらず、ただ a と b の値が変化することで結果が変わるだけです。これは圧力分布が半楕円体型であることの当然の帰結です。
次に注意すべきは、係数 m, n の表値補間に伴う誤差 です。本ツールは k=1, 2, 5, 10, 50 の5点を線形補間していますが、厳密には完全楕円積分の値であり、特に k=2〜5 の区間では線形補間で数%の誤差が出ます。学術論文や精密設計では Hamrock-Brewe の近似式や直接的な楕円積分計算を使うべきですが、設計初期の概算や教育用途では本ツールの精度で十分です。
最後に、ヘルツ理論の前提を忘れない こと。完全弾性体・滑らかな表面・摩擦なし・小変形が前提なので、塑性変形が起きるほどの高荷重(鋼で p_max が 4 GPa を超えるあたり)、表面粗さが接触幅と同程度の場合、潤滑油膜が薄い境界潤滑状態などでは本ツールの値は第一近似値となります。実機の寿命予測では摩擦熱・サブサーフェスせん断応力・残留応力なども総合的に考慮する必要があり、本ツールは「最初の見積り」と位置付けて使ってください。関連深掘りツールとして球接触は hertz-contact.html、線接触は hertz-line-contact.html、深さ方向応力は subsurface-stress-hertz.html、車輪レールは wheel-rail-contact.html をご利用ください。