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振動工学

回転体の不釣合い振動シミュレーター

モーター・ファン・ポンプなど、ばねで支持された回転機械の「不釣合い振動」を解析するツールです。ロータのわずかな偏心質量・支持ばね剛性・減衰・回転数を変えると、固有振動数・振動数比・振動振幅・基礎への伝達力がリアルタイムで分かり、共振を避ける防振設計を探せます。

パラメータ設定
機械の総質量 M
kg
ばねの上で振動する機械全体の質量
不釣合い質量 m
kg
ロータの釣合いからずれた等価質量
偏心距離 e
mm
不釣合い質量の回転中心からのずれ
支持ばね剛性 k
N/m
機械を支える防振ばねの合計剛性
減衰比 ζ
支持系のダンピングの度合い(無次元)
回転数 N
rpm
ロータの運転回転数
計算結果
固有振動数 f_n (Hz)
振動数比 r
振動振幅 X (mm)
不釣合い力 F (N)
基礎伝達力 F_tr (N)
共振の判定
回転機械の振動 — アニメーション

ばねとダンパで支持された機械ブロックの中でロータが回転し、不釣合い質量(橙の点)が遠心力を生みます。機械全体が振幅 X に比例して上下に振動します。

振動振幅 vs 回転数(共振カーブ)
振幅倍率 vs 振動数比 r
理論・主要公式

$$F = m\,e\,\omega^{2}, \qquad X = \frac{(m e/M)\;r^{2}}{\sqrt{(1-r^{2})^{2}+(2\zeta r)^{2}}}$$

不釣合い励振力 F と定常振動振幅 X。m:不釣合い質量、e:偏心距離、M:機械総質量、ω:角速度、ζ:減衰比。励振力は角速度 ω の2乗で増える。

$$\omega_n = \sqrt{\frac{k}{M}}, \qquad r = \frac{\omega}{\omega_n}$$

固有角振動数 ωₙ と振動数比 r。k:支持ばね剛性。応答は r ≈ 1(共振)で最大になり、r ≫ 1 では X が m·e/M の一定値に漸近する。

$$F_{tr} = X\,k\,\sqrt{1+(2\zeta r)^{2}}$$

基礎への伝達力 F_tr。ばねとダンパを通じて基礎に伝わる力で、r が大きいほど小さくなり防振に有利。

回転体の不釣合い振動とは

🙋
回転体の「不釣合い」って、よく聞きますけど、具体的には何がいけないんですか?モーターってただ回っているだけに見えますけど。
🎓
ざっくり言うと、回転するロータの重心が回転中心からほんの少しズレている状態のことだよ。製造のばらつき、加工誤差、組み付けのガタ──どんなに精密に作っても、必ずわずかな偏心が残る。その偏心質量が回り続けると、遠心力 F = m·e·ω² がぐるぐる回る向きの加振力になって、機械全体を揺らすんだ。洗濯機の脱水で偏った洗濯物が入ると、ガタガタ暴れるだろう?あれが不釣合い振動そのものだよ。
🙋
なるほど!でも遠心力ってそんなに大きくなるものですか?偏心はほんの数ミリですよね。
🎓
そこがこの問題の怖いところでね。励振力は角速度 ω の2乗で増えるんだ。回転数を2倍にすると力は4倍、3倍にすれば9倍。左の「回転数 N」スライダーを上げてみて。不釣合い力 F の値が一気に跳ね上がるはずだ。たった0.5kgの偏心質量が20mmズレているだけでも、毎分1200回転なら150N以上の力で機械を叩き続ける。低速では無視できた偏心が、高速機では致命的になる──これが「高速になるほど厳しい」と言われる理由だよ。
🙋
振動数比 r が 1 に近づくと振幅 X がものすごく大きくなりますね。これが「共振」というやつですか?
🎓
その通り。機械を支えるばねには固有振動数 ωₙ = √(k/M) があって、回転による加振の周波数がそれと一致したとき──つまり r = ω/ωₙ が 1 になったとき──振幅がドンと跳ね上がる。これが共振だ。下の「共振カーブ」グラフを見ると、ある回転数のところで山ができているだろう。あの山の頂上が共振点。減衰比 ζ を下げると、山がどんどん鋭く高くなるのも見てほしい。減衰が小さいと共振でとんでもない振幅になるんだ。
🙋
じゃあ共振を避けるには、回転数を共振点より低くすればいいんですか?
🎓
それも一つの手だけど、実は逆に「共振よりずっと上」で運転する設計も多いんだ。r ≫ 1 の領域では、振幅 X は m·e/M という一定値に落ち着く。回転数をいくら上げてもそれ以上振幅が増えない。だから大型の送風機やタービンは、わざと共振点を運転回転数より下に置いて、その上で回す。ただし起動・停止のたびに必ず共振域 r ≈ 1 を通過するから、そこを素早く駆け抜けて、減衰で振幅を抑える設計が要る。これを「危険速度の通過」と呼ぶよ。
🙋
振動を根本から減らすには、結局どうするのが一番いいんですか?
🎓
一番効くのは「ロータのバランス取り」だね。不釣合い量 m·e そのものを小さくしてしまえば、励振力が直接小さくなる。現場ではバランシングマシンで残留不釣合いを ISO 21940 などの規格値まで追い込む。次が支持系の工夫で、ばね剛性を変えて共振点を運転域から離す、ダンパやゴムマウントで減衰比 ζ を上げる。それから基礎への伝達力 F_tr を見るのも大事だ。振幅が小さくても、剛いばねだと基礎に大きな力が伝わって周りの構造物を揺らす。バランス・共振回避・減衰・防振、この4点をこのツールで一緒に見ながら設計するといいよ。

よくある質問

不釣合い質量 m が偏心距離 e の位置で回転すると、その質点には遠心力 F = m·e·ω² が働きます。ω は角速度(rad/s)で、回転数 rpm に比例します。遠心力は ω の2乗に比例するため、回転数を2倍にすると励振力は4倍になります。これが「高速回転になるほど不釣合い問題が急激に深刻になる」理由で、低速では無視できた小さな偏心が、高速機では致命的な振動源になります。
回転数による励振の角速度 ω が、機械を支持するばね系の固有角振動数 ωₙ = √(k/M) に一致したとき、振動数比 r = ω/ωₙ が 1 になり、振動振幅が急激に大きくなります。これが共振です。減衰が小さいほど共振時のピークは鋭く高くなります。本ツールでは 0.9 ≤ r ≤ 1.1 を共振域(危険)と判定します。回転機械の起動・停止時にこの共振域を素早く通過させる「危険速度の通過」は、実機設計の重要なテーマです。
対策は3つあります。(1) ロータをバランス取りして不釣合い量 m·e そのものを減らす。これが最も根本的で、現場ではバランシングマシンで残留不釣合いを規格値(ISO 21940 など)まで追い込みます。(2) 運転回転数を共振域から十分に離す。固有振動数より十分高い領域(r が大きい)で運転すると、振幅は m·e/M の一定値に近づきます。(3) 減衰を付加する。ダンパやゴム支持で減衰比 ζ を上げると、特に共振域付近の振幅を抑えられます。
振動数比 r が 1 より十分大きい領域(r ≫ 1)では、振幅 X は m·e/M という一定値に漸近します。これは回転数をさらに上げても振幅がそれ以上増えないことを意味し、高速回転機械を「共振より上」で運転する設計の根拠になります。ただし起動・停止時には必ず共振域 r ≈ 1 を通過するため、その瞬間の振幅増大を減衰で抑える必要があります。また基礎への伝達力は r が大きいほど小さくなり、防振の観点からも共振より上の運転が有利です。

実世界での応用

送風機・ポンプ・電動機:工場の送風機、空調機のファン、各種ポンプ、汎用モーターは、すべて回転体です。羽根車の鋳造ばらつきや付着物、軸受の摩耗によって不釣合いが生じ、運転中の振動として現れます。設計段階では本ツールのように固有振動数と運転回転数の関係を確認し、共振域を避けた回転数選定と、防振ゴム・防振ばねによる支持系の設計を行います。

回転機械の状態監視(予知保全):稼働中のモーターやポンプの振動を加速度センサで常時測定し、不釣合い起因の振動(回転1次成分)が増えてきたら異常の兆候と判断します。羽根への異物付着、軸の曲がり、軸受の劣化は、いずれも不釣合いや励振力の増大として振動スペクトルに表れます。本ツールで「回転数の2乗で力が増える」感覚をつかんでおくと、現場の振動データの読み解きに役立ちます。

大型タービン・発電機の危険速度設計:蒸気タービンやガスタービン、大型発電機のロータは、定格回転数に達するまでに複数の危険速度(共振点)を通過します。設計では各危険速度を運転回転数から十分離し、通過時の振幅をダンパや軸受の減衰で抑えます。本ツールの共振カーブは、この「危険速度を素早く通過する」という考え方の最も基本的なモデルになっています。

家電・精密機器の防振設計:洗濯機の脱水槽、掃除機のモーター、HDDのスピンドルなど、身近な製品にも不釣合い振動対策が組み込まれています。洗濯機ではバランサーで偏りを打ち消し、ゴムマウントで筐体への伝達力を下げています。基礎伝達力 F_tr の考え方は、振動が「機械の中で完結するか、周囲に伝わって騒音・揺れになるか」を分ける重要な指標です。

よくある誤解と注意点

まず多い誤解が、「振幅さえ小さければ防振は成功」という考えです。本ツールが振動振幅 X とは別に基礎伝達力 F_tr を表示しているのには理由があります。支持ばねを硬くすると機械自体の振幅は小さくなりますが、硬いばねは小さな変位でも大きな力を基礎に伝えてしまいます。逆に柔らかいばねは機械が大きく揺れても基礎に伝わる力は小さい。「機械を揺らさない」ことと「基礎に力を伝えない」ことは別の目標で、防振設計では両方を見る必要があります。一般に、運転回転数を固有振動数の √2 倍より高くしないと防振効果(伝達率1未満)は得られません。

次に、「減衰は大きいほど良い」という思い込み。減衰比 ζ を上げると共振点での振幅ピークは確かに下がります。しかし共振より十分高速の領域(r ≫ 1)では、減衰が大きいほど基礎伝達力 F_tr はかえって増えてしまいます。式 F_tr = X·k·√(1+(2ζr)²) の √ の中に 2ζr の項があるためです。減衰は「共振域を安全に通過させる」ためには有効ですが、定常運転が共振より十分上にある機械では、減衰を増やしすぎると防振性能を損ないます。共振通過と定常防振のバランスで減衰量を決めることが重要です。

最後に、「バランス取りをすれば振動はゼロになる」という過信。バランシングは不釣合い量 m·e を実用上問題ないレベルまで減らす作業であって、ゼロにはできません。残留不釣合いは必ず残り、しかも運転中に羽根への付着物、軸受摩耗、熱変形などで不釣合いは時間とともに変化します。一度バランスを取れば永久に安心ではなく、定期的な振動測定と再バランスが必要です。また、軸の曲がりやミスアライメント(軸心ずれ)は不釣合いとは別の振動原因で、バランス取りでは直りません。振動の原因を正しく切り分けることが、対策の第一歩です。

使い方ガイド

  1. ロータ総質量(kg)と回転速度範囲(rpm)を入力。例:ターボ分子ポンプの場合60000rpmまで対応
  2. 不釣合い偏心質量(g)と偏心距離(mm)を設定。例:回転子の鋳造ばらつきで5g×15mm程度
  3. 支持ばね剛性(N/mm)と減衰比を入力。例:アイソレータ支持で2000N/mm、ζ=0.05
  4. シミュレーション実行で固有振動数と各回転速度における振動振幅を計算
  5. 共振域(f_n±10%)を避ける運転条件を確認

具体的な計算例

圧縮機ロータ:総質量m=80kg、不釣合い0.8g×25mm(偏心モーメント20g・cm)、支持ばね剛性k=4500N/mm、減衰比ζ=0.08の場合。固有振動数f_n=√(4500000/(80×9.81))÷(2π)=30.2Hzとなり、1800rpm(30Hz)が共振域に該当。3000rpm(50Hz)運転では振動数比r=50/30.2=1.65、X=0.8×25/(4500×(1-1.65²))=0.31mm、不釣合い力F=0.008×25×(50×2π/60)²=1.03kNで基礎伝達力F_tr=1.03×(1+(2×0.08×1.65)²)/(1-1.65²)²+(2×0.08×1.65)²)=0.24kNと低減される

実務での注意点