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有限要素法

要素剛性マトリクス シミュレーター — 1D棒要素

有限要素法(FEM)の一番の基礎、1D棒(トラス)要素の剛性マトリクス [k]=(EA/L)[[1,-1],[-1,1]] を体感するツールです。ヤング率・断面積・要素長さ・軸力を変えると、要素剛性・全体剛性・節点変位・軸応力がリアルタイムで分かり、{F}=[k]{u} がどう解かれるかを直感的に学べます。

パラメータ設定
ヤング率 E
GPa
材料の硬さ。鋼は約 200 GPa
断面積 A
mm²
要素長さ L
mm
1要素あたりの長さ
節点に加える軸力 F
kN
正で引張、負で圧縮
モデル構成
要素を1本にするか、直列2本にするか
計算結果
要素剛性 k (N/mm)
全体剛性 (N/mm)
先端変位 u (mm)
軸応力 σ (MPa)
ひずみ ε (×10⁻³)
軸力 (kN)
棒要素モデル — 変形アニメーション

左端は固定支持。要素が軸力で伸び(または縮み)、節点が変位します。バーの色は応力の大きさ(緑→橙→赤)、点線は変形前の位置です。

力-変位 線図(F vs u)
要素剛性 k vs 要素長さ L
理論・主要公式

$$[k]=\frac{EA}{L}\begin{bmatrix}1&-1\\-1&1\end{bmatrix}$$

1D棒要素の剛性マトリクス。E:ヤング率、A:断面積、L:要素長さ。EA/L は要素の軸方向のばね定数で、行・列は節点1・節点2の自由度に対応する。

$$\{F\}=[k]\{u\},\quad u=\frac{F}{k},\quad \sigma=E\varepsilon=\frac{F}{A}$$

節点力 {F} と節点変位 {u} の関係。境界条件で縮約した剛性 k を用い、変位は u=F/k、軸応力は σ=F/A、ひずみは ε=σ/E で求める。

要素剛性マトリクスとは

🙋
有限要素法の本を開くと、いきなり「要素剛性マトリクス」って出てきますよね。あれって結局なんなんですか?
🎓
ざっくり言うと「ばねの硬さを行列にしたもの」だよ。一番簡単な1D棒要素を考えよう。両端に節点があって、軸方向にだけ伸び縮みする。この要素の硬さは EA/L、つまりヤング率×断面積÷長さで決まる。これをばね定数 k と思えばいい。要素剛性マトリクスは [k]=(EA/L)[[1,-1],[-1,1]] で、2つの節点の力と変位を結ぶ「対応表」なんだ。
🙋
なんで2×2の行列になるんですか?ばね定数なら数字1個でいい気がして…
🎓
節点が2つあるからだよ。節点1にかかる力と節点2にかかる力、それぞれが「節点1の変位」と「節点2の変位」の両方に影響される。だから2行2列いる。中身を見ると対角に +EA/L、非対角に −EA/L が並ぶだろう? これは「自分が動くと自分には引き戻す力、相手が動くと相手向きに引っ張られる力」を表している。左の E・A・L のスライダーを動かすと、この EA/L の値が変わるのが分かるよ。
🙋
なるほど。でも本には「この行列は特異だから逆行列が無い」とも書いてあって、そこで詰まりました。
🎓
いい質問だ。[[1,-1],[-1,1]] の行列式は 1×1−(−1)×(−1)=0。つまり逆行列が存在しない。物理的には「要素が空間に浮いている」状態なんだ。両方の節点を同じだけ右にずらしても、要素は伸びないし力も出ない——剛体運動を許してしまう。だから {F}=[k]{u} をそのままでは u について解けない。ここで「節点1を壁に固定する」みたいな境界条件を入れる。固定した自由度を消すと行列が縮約されて、ようやく逆行列が存在する解ける形になる。左の構成を「1要素」にすると、まさに節点1固定の状態だよ。
🙋
「2要素直列」に切り替えると、全体剛性が半分になりました。これはどういうことですか?
🎓
ばねの直列つなぎと同じだよ。実際のFEMでは、複数の要素剛性マトリクスを節点番号に従って大きな1枚の「全体剛性マトリクス」に足し込む。これをアセンブリ(重ね合わせ)と呼ぶ。同じ要素を2本直列にすると、共有節点の対角項に EA/L が2回足されるけど、結局先端から見た硬さは k/2 になる。だから先端変位は2倍。一方で軸力はどの断面でも一定だから、軸応力 σ=F/A は1要素のときと変わらない。実務の構造解析は、これを何万要素ぶんやっているだけなんだ。
🙋
じゃあ要素剛性マトリクスを理解すれば、巨大なFEMモデルも仕組みは同じってことですね。
🎓
そのとおり。梁要素・四面体要素・シェル要素と種類は増えるけど、「要素ごとに剛性マトリクスを作る → 全体に足し込む → 境界条件で縮約 → 連立方程式を解く → 変位から応力を出す」という流れは何も変わらない。この1D棒要素はその一番小さな縮図だ。ここをしっかり手で計算できるようになると、商用ソルバーが裏で何をしているかが見えてくるよ。

よくある質問

両端に節点をもつ1D棒(トラス)要素の剛性マトリクスは [k]=(EA/L)[[1,-1],[-1,1]] です。E はヤング率、A は断面積、L は要素長さ。EA/L は「ばね定数」に相当し、要素の軸方向の硬さを表します。マトリクスの行と列はそれぞれ節点1・節点2の自由度に対応し、{F}=[k]{u} の関係で節点力と節点変位を結びます。本ツールは E・A・L を変えながらこの EA/L を計算します。
単一の棒要素の剛性マトリクス [k]=(EA/L)[[1,-1],[-1,1]] は行列式が 0 で、逆行列が存在しません。これは要素が空間に「浮いて」いて剛体運動(全体の平行移動)を許すためです。両節点を同じだけ動かしても要素は伸びず、内力も生じません。実際に解くには、少なくとも1つの節点を固定する境界条件を入れて剛性マトリクスを縮約し、特異性を取り除く必要があります。
同一断面の要素を直列につなぐと、ばねの直列接続と同じで全体剛性は下がります。各要素の剛性が k のとき、同じものを2つ直列にすると全体剛性は k/2 になります。本ツールの「2要素直列」では全体剛性が要素剛性の半分になり、先端の変位が1要素のときの2倍になります。一方で軸力はどの断面でも一定で、軸応力 σ=F/A も変わりません。
節点に加わる力 F と全体剛性 k_tot が分かれば、節点変位は u=F/k_tot で求まります。これは {F}=[k]{u} を解いた結果で、有限要素法では行列の連立方程式を解く工程に相当します。軸応力は断面を通る軸力を断面積で割って σ=F/A、ひずみは ε=σ/E です。1D棒要素では軸力が全長で一定なので、応力も全長で一定になります。

実世界での応用

トラス構造の解析:橋・鉄塔・屋根のトラスは、まさに多数の1D棒要素の集合体です。各部材を1本の棒要素としてモデル化し、それぞれの要素剛性マトリクスを節点で足し合わせて全体剛性マトリクスを組み立てます。本ツールで扱う EA/L と {F}=[k]{u} の関係が、そのまま実際のトラス解析の中核になります。斜め部材は座標変換を加えるだけで、本質は同じです。

FEM教育・ソルバー検証:大学の有限要素法の授業では、必ず最初にこの1D棒要素を手計算します。剛性マトリクスの組み立て・アセンブリ・境界条件の縮約という一連の流れを、行列が小さいうちに体で覚えるためです。商用ソルバーを使う実務者も、新しい要素タイプや解析条件を検証するとき、答えが手で出せるこの単純モデルでまず確認します。

機械部品の軸方向剛性評価:ボルト締結部のボルト本体、引張ロッド、タイバー、サスペンションのリンクなど、軸方向に力を受ける部品は1D棒要素で素早く剛性を見積もれます。締結体の剛性配分(ボルトと被締結体のばね定数の比)を考えるとき、EA/L のばねモデルがそのまま設計判断に使えます。

多自由度系・振動解析の基礎:剛性マトリクスは静解析だけでなく、固有値解析([K]−ω²[M]=0)の出発点でもあります。質量マトリクスと組み合わせれば、棒の縦振動の固有振動数が求まります。要素剛性マトリクスを正しく組めることが、動解析・座屈解析・非線形解析すべての前提になります。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「単一要素の剛性マトリクスをそのまま逆行列にして解こうとする」誤りです。[k]=(EA/L)[[1,-1],[-1,1]] は行列式が 0 で逆行列を持ちません。これはバグではなく、要素が剛体運動(全体の平行移動)を許す物理的に正しい性質です。必ず境界条件で1つ以上の節点自由度を固定し、剛性マトリクスを縮約してから解いてください。固定が足りないモデルはソルバーで「特異」「ピボットがゼロ」というエラーになります。これは拘束不足のサインです。

次に、「要素を細かく分割すれば棒の応力が正しくなる」という思い込み。1D棒要素は軸力が要素内で一定という前提なので、等断面で軸力一定の問題なら1要素でも厳密解と一致します。逆に、自重のように分布荷重がかかる場合や、断面が変化する場合は、1要素では正しい応力分布を表せず、メッシュ分割が必要です。「要素を増やせば良くなる」のではなく、「その要素の仮定が問題に合っているか」を見極めることが重要です。

最後に、「単位の不整合」。EA/L を計算するとき、E を GPa、A を mm²、L を mm のまま混ぜると桁が狂います。本ツールは内部で E を MPa(GPa×1000)に換算し、A は mm²、L は mm、力は N に統一して N/mm の剛性を出しています。手計算で検算するときも、必ず単位系を1つに揃えてください。デフォルト値(E=200 GPa、A=100 mm²、L=500 mm、F=10 kN)では要素剛性 40000 N/mm、先端変位 0.25 mm、軸応力 100 MPa になります。この既知解と一致するかどうかが、計算の妥当性チェックになります。

使い方ガイド

  1. ヤング率E(GPa)、断面積A(mm²)、要素長さL(mm)をスライダーで設定します
  2. 軸力F(kN)を入力すると、要素剛性マトリクス k=(EA/L)が自動計算されます
  3. 先端変位u=F/k、軸応力σ=F/A、ひずみε=σ/Eがリアルタイムに更新されます
  4. 複数要素を直列接続する場合、全体剛性は逆数の和で統合できます

具体的な計算例

SS400鋼(E=200 GPa)、断面積A=100 mm²、要素長さL=1000 mm、軸力F=50 kNの場合:要素剛性k=(200×10³ N/mm² × 100 mm²)/1000 mm = 20,000 N/mm、先端変位u=50,000 N / 20,000 N/mm = 2.5 mm、軸応力σ=50,000 N / 100 mm² = 500 MPa、ひずみε=500 MPa / 200,000 MPa = 2.5×10⁻³となります。

実務での注意点