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地盤工学

変水位透水試験シミュレーター

細粒土の透水係数(水理伝導率)を求める変水位透水試験を再現するツールです。スタンドパイプの断面積・供試体の寸法・初期と最終の水位差・経過時間を変えると、透水係数とその透水性の等級がリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
スタンドパイプの断面積 a
cm²
細いほど水位低下が読み取りやすく感度が高い
供試体の断面積 A
cm²
供試体の長さ L
cm
初期の水位差 h₁
cm
試験開始時のスタンドパイプ水位と出口の高さの差
最終の水位差 h₂
cm
経過時間後の水位差。h₁ より小さくすること
経過時間 t
s
水位が h₁ から h₂ まで下がるのに要した時間
計算結果
透水係数 k (cm/s)
透水係数 k (m/s)
水位差の対数比 ln(h₁/h₂)
平均動水勾配 i
通過水量 (cm³)
透水性の判定
変水位透水試験装置 — 水位低下アニメーション

細いスタンドパイプの水位が、供試体を浸透して下がっていきます。水位差は h₁ から h₂ へ縮み、供試体下端から水が流出します。

水位差の時間変化 h(t)
透水係数 vs スタンドパイプ断面積
理論・主要公式

$$k=\frac{a\,L}{A\,t}\ln\!\frac{h_1}{h_2}$$

変水位透水試験の透水係数 k。a はスタンドパイプの断面積、A と L は供試体の断面積と長さ、t は経過時間、h₁・h₂ は初期と最終の水位差。変水位法は細粒・低透水性の土に向く。

$$i=\frac{(h_1+h_2)/2}{L}, \qquad V=a\,(h_1-h_2)$$

平均動水勾配 i(試験中の代表的な水頭損失勾配)と、スタンドパイプから供試体へ通過した水量 V。

変水位透水試験とは

🙋
「透水試験」って、土がどれくらい水を通すかを測る試験ですよね?なんでわざわざ細いパイプの水位を見るんですか?
🎓
いい質問だね。土の「透水性」——きちんと言うと透水係数や水理伝導率——は、土がどれだけ水を通しやすいかを表す量で、土質工学でいちばん大事な性質のひとつなんだ。しかもこれが厄介で、礫みたいに水がザルのように抜ける土から、粘土みたいに実用上ほぼ水を通さない土まで、10桁以上も範囲が広い。砂利と粘土で透水係数が100億倍も違うんだ。
🙋
10桁!それだけ違うと、測り方も1種類じゃ足りなさそうですね。
🎓
そのとおり。実験室の透水試験は大きく2種類ある。ひとつが「定水位透水試験」で、水位差を一定に保って、定常的に流れる流量をそのまま測る。これは礫や粗砂みたいに水がどんどん流れて、流量を簡単に集められる土に向いている。でも細粒土——シルトやシルト質砂——だと話が変わる。流れが遅すぎて、まともな時間で出てくる水の量がほんのわずかで、正確に量れないんだ。
🙋
じゃあ細かい土はどうやって測るんですか?
🎓
そこで登場するのが、このツールでモデル化している「変水位透水試験」だ。発想がうまくてね。ちっぽけな流量を量るのをあきらめて、供試体に細いスタンドパイプをつなぐ。パイプに水を満たして、あとは水が土を浸透して「水位が下がっていく」のをただ眺める。パイプが細いから、ほんのわずかな流れでも水位はちゃんと目に見えて下がる。水位が高い読みから低い読みまで下がる時間を、ストップウォッチで正確に測れるわけだ。
🙋
なるほど、流量じゃなくて「水位の下がる速さ」を測るんですね。式はどうなるんですか?
🎓
透水係数は k = (a·L)/(A·t)·ln(h₁/h₂) で求まる。a がパイプの断面積、A と L が供試体の断面積と長さ、t が経過時間、h₁ と h₂ が初期と最終の水位差だ。自然対数が入るのは、水位が下がるほど水頭差も減って流れが遅くなる——指数関数的な減衰だからなんだ。左のスライダーで a を細くしてみて。同じ水位低下を得るのに時間がかかる=測定が高感度になるのが分かるよ。だから一番水を通しにくい土には、わざと細いパイプを使うんだ。

よくある質問

透水係数は土によって10桁以上も変わるため、試験法を土の種類で使い分けます。定水位透水試験は水位差を一定に保ち、定常流量を直接測る方法で、礫や粗砂のように流れが速く流量を集めやすい高透水性の土に向きます。変水位透水試験は細いスタンドパイプの水位が下がる速さから透水係数を求める方法で、シルトやシルト質砂のように流量がごく小さく直接測りにくい細粒土に向きます。本ツールは後者をモデル化しています。
透水係数は k = (a·L)/(A·t)·ln(h₁/h₂) で求めます。a はスタンドパイプの断面積、A と L は供試体の断面積と長さ、t は経過時間、h₁ と h₂ は初期と最終の水位差です。ln は自然対数です。スタンドパイプを細くするほど同じ流量でも水位が大きく下がるため、最も透水性の低い土には細いパイプを使って感度を高めます。本ツールは cm/s と m/s の両単位で結果を表示します。
目安として、k ≥ 1×10⁻² cm/s は透水性が高い(礫・粗砂)、1×10⁻⁴〜1×10⁻² cm/s は中程度(砂質土)、1×10⁻⁷〜1×10⁻⁴ cm/s は低い(シルト・細粒土)、1×10⁻⁷ cm/s 未満は極めて低い(粘土・遮水層)と分類します。粘土がほぼ不透水とされるのはこのためで、廃棄物処分場の遮水ライナーやダムのコア材に粘土が使われる根拠になります。
最も多い誤差要因は供試体内の気泡(不飽和)です。空気が残ると見かけの透水係数が実際より小さく出ます。試験前の十分な飽和・脱気が不可欠です。ほかに、供試体とモールド側壁のすきまを水が回り込むサイドリーク、水温による粘性変化(標準は15℃や20℃に補正)、細粒分の移動による目詰まりなどがあります。これらを抑えるため、丁寧な供試体作製と水温補正が必須です。

実世界での応用

ダム・堤防の浸透解析:フィルダムのコア材や河川堤防の盛土は、透水係数が安全性を直接左右します。透水係数が分かって初めて、堤体内の浸潤線、基礎地盤を通る浸透量、パイピング(水みち)に対する安全率が計算できます。コア材には変水位透水試験で k が十分小さいことを確認した低透水性の粘性土を用い、ダム本体を実質的に水密に保ちます。

廃棄物処分場の遮水ライナー:処分場の底面に敷く粘土ライナーや締固め粘土層(CCL)は、汚染水が地下水へ漏れないよう極めて低い透水係数が要求されます。多くの基準で k ≤ 1×10⁻⁷ cm/s が目安とされ、変水位透水試験はこの低い値を実測できる数少ない方法のひとつです。施工後の品質管理にも欠かせません。

掘削・地下水処理の設計:掘削工事では、周辺地盤の透水係数から地下水位低下(ディウォータリング)の必要排水量や、止水壁を回り込む浸透量を見積もります。透水係数が小さい粘性土層では揚水しても水位が下がりにくく、逆に砂層が挟まると大量排水が必要になります。地層ごとの k を把握することが設計の出発点です。

圧密沈下の速度評価:軟弱な粘土地盤の圧密沈下は「どれだけ沈むか」だけでなく「いつ沈み終わるか」が重要で、その速度は粘土の透水係数に支配されます。透水係数が小さいほど間隙水の排出に時間がかかり、沈下は何年もかけてゆっくり進みます。変水位透水試験の k は圧密係数の検証や地盤改良工法の選定に使われます。

よくある誤解と注意点

まず最大の落とし穴が、「供試体が完全に飽和していると思い込む」ことです。変水位透水試験の式は、土の間隙が水で満たされ、空気が残っていないことを前提にしています。気泡が残ると水の通り道がふさがれ、見かけの透水係数が実際より小さく——ときに桁違いに小さく——出てしまいます。粘性土やシルトは脱気しにくく、真空脱気や背圧飽和を併用しないと十分に飽和できないことがあります。「k が妙に小さい」ときは、まず飽和度を疑ってください。

次に、「サイドリーク(側壁すきま流れ)を無視する」こと。供試体とモールドの内壁の間にわずかなすきまがあると、水は土の中ではなくその縁をすり抜けて流れます。すると本来低いはずの透水係数が大きく見積もられ、危険側の評価になります。供試体は内壁に密着するよう丁寧に作製し、必要に応じてベントナイトでシールしたり三軸セル型の透水試験に切り替えたりします。低透水性の土ほどサイドリークの影響は相対的に大きくなります。

最後に、「水温による粘性の違いを補正しない」という点。透水係数は水の粘性に反比例し、粘性は水温で大きく変わります。10℃の水と30℃の水では粘性がほぼ2倍違うため、補正しないと同じ土でも季節や室温で k が倍ほどばらつきます。実務では試験時の水温を測り、標準温度(日本では15℃、国際的には20℃が多い)の値に粘性比で換算します。本ツールは温度補正前の素の k を扱うため、現場値と比較する際はこの換算を忘れないでください。

使い方ガイド

  1. 供試体の断面積A(cm²)と長さL(cm)を入力します。粘性土試料の場合、A=50cm²、L=10cmが標準的です
  2. 初期水位h₁(cm)と最終水位h₂(cm)の値を設定し、水位低下時間を測定します。例えばh₁=50cmからh₂=5cmまで低下するのに要した時間を秒単位で記録してください
  3. シミュレーターが変水位法の計算式k=(2.303×a×L)/(A×t)×log₁₀(h₁/h₂)を自動適用し、透水係数をcm/sおよびm/s単位で出力します

具体的な計算例

ダムの遮水材として用いられた粘土質シルト(供試体断面積A=60cm²、長さL=8cm、連通管断面積a=1cm²)の試験では、h₁=80cmからh₂=10cmまで160秒で低下しました。計算結果:ln(h₁/h₂)=2.079、透水係数k=1.24×10⁻⁷cm/s(=1.24×10⁻⁹m/s)となり、細粒土として適切な遮水性を確認できました

実務での注意点