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信号処理シミュレーター

ハイパスフィルタ シミュレーター — 一次 RC フィルタの周波数特性

抵抗 R と容量 C で決まる一次 RC ハイパスフィルタの周波数特性を、ボード線図と回路波形でリアルタイムに可視化。カットオフ周波数・ゲイン・位相・時定数を確認しながら DC 除去や AC 結合の設計を学べます。

パラメータ
抵抗 R
Ω
容量 C
nF
観測周波数 f
Hz
量子化ビット数 N
bit
計算結果
カットオフ周波数 f_c
ゲイン (観測 f)
位相
時定数 τ = RC
SNR (理論):
RC ハイパス回路 (入出力波形)
ボード線図 (ゲイン特性)
理論・主要公式

伝達関数:

$$H(j\omega) = \dfrac{j\omega\tau}{1 + j\omega\tau},\quad \tau = R\,C$$

カットオフ周波数とゲイン・位相:

$$f_c = \dfrac{1}{2\pi R C},\quad |H(f)|_{\rm dB} = 20\log_{10}\!\dfrac{f/f_c}{\sqrt{1+(f/f_c)^2}},\quad \phi = 90° - \arctan(f/f_c)$$

$f = f_c$ で $|H| = 1/\sqrt{2}\approx -3.01\,\text{dB}$、位相は $+45°$ となる。$f \ll f_c$ では +20 dB/decade の傾きで減衰し、$f \gg f_c$ では 0 dB に漸近する。

一次 RC ハイパスフィルタとは

🙋
ローパスは「高い周波数を捨てる」のはイメージできたんですけど、ハイパスって何のために使うんですか?
🎓
代表例は「DC を切りたいとき」だね。例えばマイクの出力には電源バイアスの DC が乗っていて、そのままアンプに入れるとアンプが飽和する。手前にコンデンサを直列で入れる(= RC ハイパス)と DC は通らず、可聴域の AC だけ通る。「ACカップリング」とも呼ぶよ。
🙋
なるほど、ローパスと回路の形はどう違うんですか?
🎓
部品の位置を入れ替えるだけ。ローパスは R が直列・C が並列だけど、ハイパスは C が直列・R が並列。直流(f=0)だと C のインピーダンス 1/(jωC) が無限大になるから出力 0、高周波だと C はほぼ短絡で R にそのまま電圧が現れる。これで低周波だけが消える。
🙋
位相が「+45°」と書いてあるのが新鮮です。ローパスは -45° でしたよね?
🎓
そう、ハイパスは「進み位相」。f_c で +45°、低周波になればなるほど +90° に近づく。微分回路としても動くので、PWM のエッジ検出や心電図 (ECG) の P 波・QRS 波の抽出にも応用されるよ。

物理モデルと主要な数式

入力電圧 $V_{in}$ に対し、コンデンサに加わる電圧と抵抗に加わる電圧の和が $V_{in}$ となる。出力を抵抗端 $V_{out}$ と取ると、$i = C\,d(V_{in}-V_{out})/dt = V_{out}/R$ から次の一階線形 ODE になる。

$$RC\,\dfrac{dV_{out}}{dt} + V_{out} = RC\,\dfrac{dV_{in}}{dt}$$

$s = j\omega$ を代入して伝達関数を求めると $H(j\omega) = j\omega\tau/(1+j\omega\tau)$ となり、ゲインと位相は次式となる。

$$|H(f)| = \dfrac{f/f_c}{\sqrt{1+(f/f_c)^2}},\quad \phi = 90° - \arctan(f/f_c),\quad f_c = \dfrac{1}{2\pi RC}$$

デシベル表記では $f \gg f_c$ で 0 dB、$f = f_c$ で -3.01 dB、$f \ll f_c$ で +20 dB/decade の漸近線となる。位相は +90° から 0° へ単調に低下する。

実世界での応用

オーディオの AC カップリング: アンプ間の DC オフセットを切る目的で、信号線にコンデンサを直列に挿入する。f_c を 20 Hz 以下に設定して可聴域に影響しないようにする。

心電図 (ECG) のベースライン除去: 呼吸や姿勢変化による 0.5 Hz 以下の低周波ドリフトを除き、心拍 (P・QRS・T 波) だけを残す。f_c はおよそ 0.05〜0.5 Hz。

加速度センサの重力除去: 重力加速度 (DC 成分) を取り除き、動きによる加速度の変動だけを抽出する。歩数計やジェスチャー認識で頻用される。

微分回路 (PWM エッジ検出): τ を短くすると入力の立ち上がり・立ち下がりだけに鋭いパルスが出る。タイミング検出やトリガ生成に用いる。

よくある誤解と注意点

誤解 1: f_c より下は完全にカットされる。 1 次なら +20 dB/decade、つまり f = 0.1 f_c で -20 dB、f = 0.01 f_c でも -40 dB しか落ちない。完全に DC を断ちたいなら、コンデンサのリーク電流まで含めて検討する必要がある。

誤解 2: ハイパスは位相をいじらない。 実際は f_c 付近で +45° の「進み位相」が発生する。これは制御系では位相余裕の改善(リードコンペンセーター)に活かせるが、波形を整形したい用途では波形歪みの原因にもなる。

誤解 3: コンデンサは大きくすれば良い。 電解コンデンサを使うと漏れ電流・温度ドリフト・極性が問題になる。低周波ハイパスではフィルム・タンタル・大容量 MLCC の選択に注意。

よくある質問

ステップ入力に対し出力は初期に入力と同じ高さまで跳ね上がり、τ で 36.8% (= 1/e) まで減衰する。微分回路としてエッジ検出に使うときの基本特性。
ハイパスとローパスを直列にカスケードすると、中間の帯域だけを通すバンドパスになる。f_HP < f_LP となるよう設計し、中心周波数 f_0 = √(f_HP·f_LP) で利得が最大化する。
CR の方が小型・安価で広く使われる。LR (R 直列 + L 並列) は電源ラインのフィルタや RF で用いられるが、L のサイズ・コア損失・自己共振の問題があるためオーディオ・低周波域ではほぼ採用されない。