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HVAC・建築設備

HVAC ダクト圧力損失 ASHRAE シミュレーター

空調ダクト(HVAC ダクト)の摩擦損失・局所損失・全圧力損失・ファン電力を ASHRAE 標準計算で求めるツールです。風量・形状(円形・矩形・フラットオーバル)・材質・温度・継手数を変えると、Darcy-Weisbach 式と Swamee-Jain 摩擦係数式に基づく圧力損失と推奨風速範囲がリアルタイムで判定できます。

パラメータ設定
風量 Q
m³/h
ダクト形状
断面形状を選ぶと等価直径が自動計算されます
高さ H(円形では直径)
mm
幅 W(矩形・フラットオーバル)
mm
ダクト長 L
m
継手数 N
エルボ・分岐・ダンパー等の合計(K=0.5/個と仮定)
ダクト材質
絶対粗さ ε [mm] を自動設定
空気温度 T
°C
空気密度と粘性が温度補正されます
計算結果
等価直径 D_h (mm)
風速 V (m/s)
Reynolds 数 Re
摩擦圧力損失 (Pa)
全圧力損失 (Pa)
ファン電力 (W)
ダクト断面と風速プロファイル

中央が空気の流れ。色は局所圧力(青=高圧/赤=低圧)。下流ほど摩擦と継手で圧力が降下します。両側のバーが乱流の速度分布(中央が速い)。

風量に対する全圧力損失の変化
ダクト形状別の圧力損失比較
理論・主要公式

$$\Delta P = f\frac{L}{D_h}\frac{\rho V^{2}}{2} + \sum K\frac{\rho V^{2}}{2},\qquad f = \frac{0.25}{\left[\log_{10}\!\left(\dfrac{\epsilon}{3.7\,D_h} + \dfrac{5.74}{Re^{0.9}}\right)\right]^{2}}$$

f:摩擦係数(Swamee-Jain)、K:局所損失係数、D_h:等価直径(矩形は 4A/P)、ε:管壁の絶対粗さ、Re:レイノルズ数。

$$D_h = \frac{4A}{P},\qquad Re = \frac{\rho V D_h}{\mu},\qquad P_{\text{fan}} = \frac{Q\,\Delta P}{\eta_{\text{fan}}}$$

A:断面積、P:濡れ縁、ρ:空気密度(温度補正)、μ:空気の粘性係数、η_fan:ファン効率(70% 仮定)。

HVAC ダクト圧力損失 — ASHRAE 標準計算

🙋
空調のダクトって、ただ風を運ぶだけの鉄板の箱ですよね?なんで「圧力損失」なんていちいち計算するんですか?
🎓
いい質問だね。ダクトの中で空気が流れると、壁との摩擦と継手(エルボ・分岐・ダンパー)の抵抗で必ず圧力が落ちる。この合計が「全圧力損失 ΔP」で、これを押し切る分だけファンに動力が要るんだ。例えば 5000 m³/h・90 Pa のダクトなら、計算上ファンに約 180 W、効率込みでも 250 W 程度必要。建物全体だとこの積み上げが年間電気代の数十万円に効いてくる。だからまず ΔP を正確に出さないと、ファン選定もダクトサイズも全部ずれてしまう。
🙋
なるほど。左の「ダクト形状」を矩形→フラットオーバル→円形と切り替えると、同じ風量でも圧力損失が変わりますね。円形が一番低くなりました。
🎓
気付いたね。同じ断面積でも、円形は濡れ縁(壁との接触長さ)が一番短く、等価直径 D_h = 4A/P が大きい。ΔP は 1/D_h に比例するから、円形が一番有利。次がフラットオーバル、最後が矩形だ。じゃあなぜ世の中の業務用建物は矩形ダクトだらけかというと、天井裏の薄いスペースに納めやすいから。設計現場では「圧損を取って円形」か「納まりを取って矩形」のトレードオフを常にやってるんだ。
🙋
「材質」でフレキシブルを選ぶと、いきなり摩擦損失が跳ね上がりますね。これは何が違うんですか?
🎓
フレキは内面の蛇腹が大きな粗さ(ε=3.0 mm)になるんだ。亜鉛メッキ鋼板の 0.09 mm に比べて 30 倍以上。Swamee-Jain 式の f = 0.25/[log10(ε/3.7Dh + ...)]² の括弧の中で ε/Dh が急増するので、摩擦係数 f が一気に 2〜3 倍になる。だから「ファンのすぐ近くまでフレキで引き回す」設計は省エネ的に NG。フレキは末端 1〜2 m だけ、しかも曲げ半径を取って使うのが鉄則だよ。
🙋
風速の判定が「低速/適正/高速/過剰」と出ますが、これって何を見てるんですか?
🎓
ASHRAE が推奨する風速レンジだね。主ダクトで 4〜8 m/s、枝ダクトで 2〜5 m/s が「適正」。10 m/s を超えると風切音が NC30 を超えて、オフィスや住宅では苦情になる。逆に 2 m/s 未満は「ダクトが過大」で初期コストが嵩む。今のデフォルト設定だと風速 5.56 m/s で「適正」、これは商業ビルの主ダクトとして教科書的にちょうどいい設計なんだ。スライダーで風量を 2 倍にしてみて——速度が 11 m/s を超えて判定が一気に「過剰」になるはずだよ。

よくある質問

ASHRAE Handbook (Fundamentals) はダクト摩擦損失に Darcy-Weisbach 式 ΔP = f·(L/Dh)·(ρV²/2) を採用しています。摩擦係数 f は Colebrook-White 式の陰関数で与えられますが、実用上は陽な近似式 Swamee-Jain f = 0.25/[log10(ε/3.7Dh + 5.74/Re^0.9)]² が広く使われます。本ツールは Swamee-Jain で f を求め、Re ≈ 4000 以上の乱流域で ±2% 程度の精度を持ちます。
水力直径 Dh = 4A/P で求めます(A は断面積、P は濡れ縁長さ)。矩形 (W×H) では Dh = 4WH/(2(W+H)) = 2WH/(W+H)。フラットオーバル(幅 W、高さ H、両端が半円)では A = (W-H)·H + π·H²/4、P = 2(W-H) + π·H となります。ASHRAE は別途 Huebscher の等価円形直径式(同摩擦損失基準)De = 1.30·(WH)^0.625/(W+H)^0.25 も提示しており、断面積基準ではなく圧力損失基準でアスペクト比 1:8 以下なら数%以内で一致します。
ASHRAE では一般空調用途で主ダクト 4〜8 m/s、枝ダクト 2〜5 m/s、吹出口端で 2〜3 m/s が騒音と圧損のバランスの目安です。10 m/s を超えると風切音が NC30 を超えやすく、居住空間では苦情の原因になります。逆に 2 m/s を下回るとダクトが過大で初期コストが嵩み、結露リスクも上がります。本ツールは風速に応じて「低速/適正/高速/過剰」を自動判定します。
等摩擦法(Equal Friction Method)では摩擦損失率 0.5〜1.0 Pa/m(インチ水柱では 0.08〜0.10 inWG/100ft)を設計目標にするのが ASHRAE の標準です。低圧力商業ビルでは 0.8 Pa/m、住宅では 0.5 Pa/m、工業用高圧では 2〜4 Pa/m を目安にします。摩擦率を下げるほどダクトは大きくなり初期コストは上がりますが、ファン動力と運転コストは下がります。本ツールは現状の摩擦率を表示するので、目標値(通常 1 Pa/m)と比較してダクトサイズを調整してください。

実世界での応用

オフィスビル・商業施設の中央空調:AHU(空調機)から各フロアの VAV ユニット、さらに天井内の枝ダクトを経て吹出口に至る全経路の圧力損失を本ツールのような Darcy-Weisbach 式で積み上げます。Trane TRACE 3D Plus, Carrier HAP, IES VE のような商用 HVAC 解析ソフトも内部はこの式系。設計者は主ダクト・枝ダクトをセクション分割して個別計算し、最遠端の合計 ΔP がファンの静圧能力に収まるかを確認します。

クリーンルーム・データセンター:半導体工場やサーバールームは風量が極めて大きく(5万〜数百万 m³/h)、ファン動力が全消費電力の 10〜30% を占めます。SFP (Specific Fan Power) ≤ 2.5 W/(L/s) という LEED / BREEAM の要件を満たすため、ダクト寸法を大きくして圧損を 0.5 Pa/m 以下に抑える設計が標準です。本ツールで風量・サイズを振って、SFP の感度を確認できます。

住宅・小規模ビルの全熱交換器ダクト:第一種換気の屋根裏フレキダクトは、長さ 10〜20 m、フィッティング多数、しかも内面が粗いため、想定以上に圧損が出やすい盲点。フレキを 20 m 引き回して 8 個の継手で済ますつもりが、計算してみると 100 Pa を超えてファンが息切れ、というのが典型的な失敗例です。本ツールに「フレキ・20m・継手8」を入力すれば実態が見えます。

CFD 解析の事前検討・サニティチェック:OpenFOAM や ANSYS Fluent でダクト系統を解析する前に、本ツールのような 1D 簡易計算で大まかな ΔP を当たりづけし、CFD 結果と桁が合うかを確認します。CFD が概算と桁違いなら境界条件・乱流モデル・メッシュのいずれかにミスがあるサイン。逆にこの式系を理解せずに CFD だけ回しても、結果の妥当性は判断できません。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「摩擦係数 f は一定」という思い込みです。ムーディ線図を見れば分かるとおり、f は Re と相対粗さ ε/Dh の関数で、温度・風速・ダクトサイズが変わると毎回変化します。Re が 10⁵ 以下の遷移域や、ε/Dh > 0.05 の完全粗面域では Swamee-Jain の誤差が大きくなるため、商用ソフトでは Colebrook-White を反復解法で解いています。本ツールは大半の実用ケース(4×10³ < Re < 10⁸、ε/Dh < 0.05)で十分な精度ですが、フレキで小径ダクトを使う場合などは数%の誤差を見込んでください。

次に、「継手の局所損失係数 K を一律 0.5 で済ます」こと。本ツールは概算のため K=0.5/個(典型的なエルボ相当)で計算していますが、実際の K は形状で大きく異なります。45°ロングエルボは K=0.2、90°ショートエルボは K=0.6〜1.2、T 分岐の枝側は K=1〜3、急縮小は K=0.4 と幅があります。詳細設計では ASHRAE Duct Fitting Database (DFDB) や SMACNA HVAC Duct Design Manual の係数表を一つずつ拾って積み上げないと、ファン静圧が 50% も外れることがあります。

最後に、「ファン動力 = Q·ΔP だけで終わる」という落とし穴。本ツールは P_fan = Q·ΔP/η で 70% のファン効率を仮定していますが、実際にはモーター効率(85〜95%)、駆動損失(V ベルトで 92%)、インバータ損失(97%)が直列に掛かります。さらに低負荷時はファン効率が 30〜40% まで落ちる場合もあり、変流量制御(VAV)では年間平均で「定格 ΔP×Q」より大幅に少ない電力で済むこともあります。総合的な省エネ評価には EnergyPlus 等の年間時刻別シミュレーションが必要です。

使い方ガイド

  1. 風量(m³/h)、ダクト形状(高さ・幅 mm、長さ m)、材質(亜鉛メッキ鋼板 ε=0.15mm / アルミ ε=0.05mm / フレキ ε=0.3mm)を入力
  2. 等価直径 D_h から風速 V と Reynolds 数を自動計算、Colebrook-White 方程式で摩擦係数 f を反復求解
  3. 摩擦損失=(f·L/D_h)·(ρV²/2)と局所損失係数 ξ(90°エルボ ξ=0.25、T分岐 ξ=1.0 等)を合算して全圧力損失とファン電力(P=ΔP·Q/3600η、η=0.75)を出力

具体的な計算例

矩形ダクト 500×300mm、長さ 15m、風量 3000m³/h、亜鉛メッキ鋼板:等価直径 D_h=384mm、風速 V=5.45m/s、Re=182000 で乱流領域。摩擦係数 f=0.0195、摩擦損失 25Pa。90°エルボ 4個(局所損失 15Pa)加算で全損失 40Pa。必要ファン電力=40×(3000/3600)/0.75=44W。一方、フレキダクト(ε=0.3mm、f=0.0235)では同条件で全損失 52Pa、必要電力 58W となり、材質選定で 30%の電力差が生じる。

実務での注意点

  1. 圧力損失 100Pa 超過はファン選定コスト増加の目安。ASHRAE 標準では換気ダクト許容損失を 10Pa/30m に設定しており、本シミュレータで検証後の設計変更(径拡大・長さ短縮)を検討。
  2. 矩形ダクトは製造便利だが等価直径が小さく損失増加。同等風速なら圧力損失は縦横比 1:3 で 15~20% 増加するため、円形への変更や幅 150mm 以上の確保を推奨。
  3. 継手・曲がりの局所損失係数は室内温度(空気密度 ρ)・高地施設(気圧低下)で変動。本ツール既定値(海抜 0m、20℃ρ=1.20kg/m³)から外れた環境では手動補正が必要。
  4. フレキダクトは内面の波状突起で f=0.0235~0.028 と大きく、長大なスパンで避けるべき。5m 以内の配管用に限定し、主管は硬質ダクトで施工。