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構造解析

三ヒンジアーチ シミュレーター

放物線形の三ヒンジアーチに等分布荷重とクラウン集中荷重をかけ、支点に生じる鉛直反力と水平推力を調べるツールです。スパン・ライズ・荷重を変えると、アーチが曲げではなく圧縮で荷重を支える仕組みと、支点を外へ押す推力の大きさがリアルタイムで分かります。

パラメータ設定
スパン L
m
両支点の水平距離
ライズ(アーチ高さ)h
m
支点からクラウンまでの高さ
等分布荷重 w
kN/m
全スパンに作用する分布荷重
クラウン集中荷重 P
kN
頂部(クラウンヒンジ)に加わる点荷重
計算結果
鉛直支点反力 (kN)
水平推力 H (kN)
支点合反力 (kN)
反力の角度 (deg)
ライズ・スパン比 h/L
アーチ形状の判定
三ヒンジアーチ — 荷重と反力

放物線形の三ヒンジアーチ。両支点とクラウンの3つのヒンジ、全スパンの等分布荷重、クラウン集中荷重、各支点の鉛直反力と水平推力を表示します。

水平推力 vs ライズ
アーチ軸線(放物線プロファイル)
理論・主要公式

$$V=\frac{wL}{2}+\frac{P}{2},\qquad H=\frac{wL^{2}}{8h}+\frac{PL}{4h}$$

鉛直支点反力 V と水平推力 H。w:等分布荷重、L:スパン、h:ライズ、P:クラウン集中荷重。鉛直反力は荷重だけで決まり、水平推力はライズに反比例する。

$$R=\sqrt{V^{2}+H^{2}},\qquad \theta=\tan^{-1}\!\left(\frac{V}{H}\right)$$

支点合反力 R とその水平からの角度 θ。両支点のピンとクラウンのヒンジ、合わせて3つのヒンジによりアーチは静定となる。

放物線アーチが全スパンの等分布荷重を受けるとき、アーチ軸線はその荷重のファニキュラー(自然な推力線)と一致し、曲げモーメントはどこでもゼロ — アーチは純圧縮の理想状態になる。

三ヒンジアーチとは

🙋
石橋やトンネルでよく見る「アーチ」って、なんであんなにカーブしてるんですか?まっすぐな梁じゃダメなんですか?
🎓
いい質問だね。まっすぐな梁は荷重を「曲げ」で支えるんだ。曲げって、断面の上半分が縮んで下半分が伸びる…つまり材料の一部しか働かない、けっこう非効率な支え方なんだよ。ところがアーチはカーブの形で荷重の通り道を作ってやることで、荷重をほとんど「軸方向の圧縮」だけで支える。石やコンクリートは圧縮にめっぽう強いから、アーチはその得意分野に持ち込んでるわけだ。
🙋
圧縮で支えるのがそんなに得なんですね。でも、それならいいことだらけじゃないですか?
🎓
うまい話には代償があってね。アーチは効率の対価として「水平推力」を生むんだ。アーチは荷重を受けると、支点を斜め外向きに押し広げようとする。左のツールで「水平推力 H」を見てごらん。デフォルトで375 kNも横向きに押してる。この力を受け止めるアバットメント(橋台)やバットレス(控え壁)、あるいは両支点を結ぶタイ材がしっかりしていないと、アーチは外へ開いて崩れてしまう。
🙋
なるほど…。じゃあ「三ヒンジ」っていうのは何ですか?ヒンジって、あの扉のちょうつがいの?
🎓
そう、回転を許す継ぎ目のことだ。三ヒンジアーチは、両支点に1つずつ、それから頂部(クラウン)に1つ、合計3つのヒンジを入れたアーチなんだ。これがすごく賢い。ヒンジを3つ入れると構造が「静定」になる。つまり、力のつり合いの式だけで全部の反力が解けて、アーチがどれだけ硬いか(剛性)を知らなくても答えが出る。下のツールの計算も、ヤング率も断面も一切使ってないだろう?
🙋
剛性を使わなくていいと、何が嬉しいんですか?
🎓
実務でめちゃくちゃ効くんだ。固定アーチだと、支点がほんの少し沈んだり、夏冬の温度でアーチが伸び縮みしただけで、構造内部に大きな「二次応力」が溜まる。でも三ヒンジアーチは、ヒンジがちょっと回ってその変位を逃がしてくれるから、二次応力がほとんど出ない。だから軟弱地盤や寒暖差の大きい場所の橋・体育館の屋根なんかで好まれる。さらに美しい結果があってね — 放物線のアーチが全スパンに等分布荷重を受けると、曲げモーメントがどこでもゼロ、純圧縮になる。ライズを上げれば推力は下がる。低くて平たいアーチほど支点を強く押す、と覚えておくといいよ。

よくある質問

全スパンに等分布荷重 w がかかる放物線形の三ヒンジアーチでは、クラウンヒンジまわりのモーメントのつり合いから水平推力は H = wL²/(8h) で求まります。L はスパン、h はライズ(アーチ高さ)です。クラウンに集中荷重 P が加わると PL/(4h) が足されます。推力はライズ h に反比例するため、アーチを高くするほど支点を外へ押す力は小さくなります。
三ヒンジアーチは、両支点のピンとクラウンのヒンジ、合わせて3つのヒンジを持ちます。未知の反力は4つ(各支点の鉛直・水平成分)ですが、全体の力のつり合い3式に加えて「クラウンヒンジでの曲げモーメントがゼロ」という条件が1式得られるため、合計4式で4未知数が解けます。つまり材料の剛性を一切使わずに反力が決まる静定構造です。これにより支点沈下や温度変化に対して二次応力が生じにくいという大きな利点があります。
鉛直支点反力は荷重だけで決まるためライズには依存しませんが、水平推力 H = wL²/(8h) はライズ h に反比例します。ライズを2倍にすれば水平推力は半分になります。背の高い急なアーチは支点(アバットメントやバットレス)を外へ押す力が小さく済む一方、アーチ自体が長くなり座屈や施工の難しさが増します。本ツールのライズ・スパン比は、扁平か標準か高いかの目安を示します。
等分布荷重を全スパンに受ける構造の「ファニキュラー(自然な推力線)」はちょうど放物線になります。アーチの軸線がこのファニキュラーと一致していれば、各断面で荷重は軸方向の圧縮だけで伝わり、曲げモーメントはどこでもゼロになります。これはアーチが純圧縮という理想的な応力状態にあることを意味します。荷重分布が変わると推力線も変わり、アーチ軸線とずれた分だけ曲げモーメントが発生します。

実世界での応用

橋梁:三ヒンジアーチは鋼アーチ橋やコンクリートアーチ橋で古くから使われてきました。両支点と頂部のヒンジが支点沈下や温度伸縮を吸収するため、軟弱地盤や大きな寒暖差のある場所でも二次応力が生じにくく、設計が確実になります。施工面でも、左右の半アーチを別々に組み立て、最後にクラウンヒンジで連結できるという利点があり、大スパンの架設に向いています。

大空間の屋根構造:体育館・展示場・格納庫・駅舎などの大スパン屋根に、三ヒンジアーチ(ラチス材や鋼管トラスアーチ)がよく用いられます。柱のない広い無柱空間を低い構造高さで実現でき、屋根の自重と積雪を等分布荷重として効率よく圧縮で支えます。両端のヒンジ支点は基礎の不同沈下に強く、メンテナンス上も安心です。

歴史的な石造・組積アーチ:ローマ水道橋や石橋、教会のヴォールトは、明示的なヒンジこそありませんが、ひび割れが入った位置が実質的なヒンジとして働き、三ヒンジアーチに近い挙動を示すことが知られています。組積構造の安定性評価では、推力線がアーチ断面の中央三分の一(ミドルサード)に収まるかを調べる「推力線解析」が用いられ、本ツールの放物線推力線の考え方が基礎になります。

構造設計の学習と概算検討:三ヒンジアーチは静定構造なので、つり合い式だけで反力が手計算でき、構造力学を学ぶ最初の題材として最適です。実務でも、詳細な不静定アーチや有限要素解析に進む前に、本ツールのような静定モデルで水平推力のオーダーを把握し、アバットメントや基礎の規模を当たりづけします。FEM結果がこの概算と桁違いなら、境界条件のミスを疑うサニティチェックにもなります。

よくある誤解と注意点

まず多い誤解が、「水平推力を忘れて鉛直反力だけで基礎を設計する」ことです。梁の感覚で支点を考えると鉛直反力ばかりに目がいきますが、アーチで本当に効くのは横向きの水平推力です。デフォルト条件でも鉛直反力300 kNに対し水平推力は375 kNと、むしろ水平のほうが大きいことも珍しくありません。この推力に耐えるアバットメント(橋台)、バットレス(控え壁)、またはタイ材を設けないと、アーチは支点が外へ滑って一気に崩壊します。アーチの崩壊事例の多くは、アーチ本体ではなく支点まわりの不足が原因です。

次に、「放物線アーチなら荷重がどうあれ曲げモーメントはゼロ」という思い込み。曲げモーメントがゼロになるのは、アーチ軸線が荷重のファニキュラー(推力線)と一致したときだけです。放物線が推力線になるのは、あくまで全スパンの等分布荷重に対してです。実際の橋や屋根は、片側だけの積雪、活荷重の偏り、風荷重などの非対称な荷重を必ず受けます。そのときアーチ軸線と推力線はずれ、曲げモーメントが発生します。三ヒンジアーチの設計では、この非対称荷重ケースが断面を決めることが多いので、等分布だけで安心してはいけません。

最後に、「ライズは高ければ高いほど良い」という誤解。確かにライズを上げれば水平推力は反比例で下がり、アバットメントは小さくできます。しかしライズを上げるとアーチ軸線そのものが長くなり、圧縮材としての座屈の危険が増し、必要な構造高さや施工足場のコストもかさみます。逆にライズを下げて扁平にしすぎると、わずかな荷重で巨大な推力が発生し、支点条件がシビアになります。実務ではライズ・スパン比をおおむね 1/8〜1/3(h/L で 0.12〜0.33)程度に収めることが多く、推力・座屈・施工性・意匠のバランスで決めます。

使い方ガイド

  1. 左側パネルでスパン長(3~20m)、ライズ(1~8m)を設定し、アーチの基本形状を決定します
  2. 均布荷重(0~50kN/m)または頂点集中荷重(0~100kN)を入力し、荷重条件を設定します
  3. 「計算実行」ボタンをクリックすると、支点反力・水平推力・反力角度がリアルタイム更新され、アーチ挙動が右側グラフに可視化されます

具体的な計算例

スパン12m、ライズ4m、均布荷重25kN/mの放物線アーチを解析した場合、各支点の鉛直反力は75kN、水平推力Hは56.3kNとなります。支点合反力は95.2kN、反力方向は37.5度の角度を示します。h/L比は0.333で、中程度のアーチ効率を有する標準的な橋梁形状です。鋼材SS400を想定した圧縮応力は約18MPaに留まり、アーチの圧縮支配性が確認されます。

実務での注意点