手は3つある。まず「短くする」。式 L ≈ 0.2·h·(ln(4h/d)+1) を見ると、L は長さ h にほぼ比例するから、薄い基板を使ったりブラインドビア・バックドリルで不要な部分を削ったりすると効く。次に「太くする」。ただし d は対数の中にしか入っていないから効きは弱い。そして一番実戦的なのが「並列化」。n本のビアを並べると合成インダクタンスは L/n に下がる。電源・グラウンドのビアスティッチングや、信号の隣にリターン用ビアを置くのは、まさにこの原理なんだ。左の並列ビア数を増やして、低減率を見てみて。
同じ電流経路に n 本のビアを並列に配置すると、合成インダクタンスは単純には L/n に下がり、誘導リアクタンスも 1/n になります。例えば 2本並列で50%、4本並列で75%のリアクタンス低減です。電源・グラウンドの接続や信号リターン経路では、複数ビアを並べる「ビアスティッチング」や「ビアアレイ」が定番の手法です。ただし実際にはビア間の相互インダクタンスで効果はやや目減りするため、ビアを十分に離して配置することが重要です。
アスペクト比はビア長さ h をビア直径 d で割った値(h/d)で、ビアの細長さを表します。電気的にはアスペクト比が大きい(細長い)ほどインダクタンスが大きくなります。一方で製造面では、めっき液がビア内部まで均一に回らなくなるため、一般にアスペクト比は8〜10程度が量産の上限の目安です。電気性能と製造性の両面から、ビアは「太く短く」が望ましく、本ツールでアスペクト比とインダクタンスの関係を確認できます。
次に、「インダクタンスの式の係数や対数項を絶対値だと信じ込む」こと。本ツールの L ≈ 0.2·h·(ln(4h/d)+1) は、孤立した円筒導体に対する代表的な近似式の一つで、文献によって係数や項の形が少しずつ異なります。実際のビアのインダクタンスは、リターン電流がどこを流れるか(隣接グラウンドビアの位置)に強く依存する「ループインダクタンス」であり、孤立ビアの自己インダクタンスとは値が変わります。本ツールの数値は桁感と傾向をつかむための目安と捉え、最終設計はシミュレーションで詰めてください。
最後に、「並列ビアを増やせば必ず L/n まで下がる」という誤解です。理想的には n 本で 1/n ですが、近接したビアどうしは磁束を共有し、正の相互インダクタンスを持ちます。このため4本並べても実効的な低減は理想の1/4には届かず、3割程度目減りすることも珍しくありません。効果を最大化するには、ビアどうしを可能な範囲で離す、リターン電流のループ面積そのものを小さくする、という発想が重要です。「本数を増やす」より「ループを小さくする」が高周波設計の本質だと意識してください。