熱プルーム解析
理論:上昇しながら空気を巻き込む流れ
概要
火災の煙が天井に広がる様子をCFDで解きたいんですが、まず何を押さえればいいですか?
熱源の上にできる上昇流、熱プルームの性質だ。プルームは上るにつれて周りの空気を巻き込むので、流量はどんどん増え、温度は急に下がる。天井にぶつかると横に広がる天井流になり、これが感知器やスプリンクラーを動かす。こうした流れには実験に基づく相関式がそろっていて、CFDの結果を確かめる物差しになる。100 kWの火源を例に、プルームと天井流の値、それに格子の目安まで計算してみよう。
プルームの中心温度と速度(Heskestad)
$\dot Q_c$ は発熱のうち対流で運ばれる分(全体の約7割)、$z_0$ は仮想原点。温度は高さの−5/3乗で急に下がり、速度は−1/3乗でゆっくり下がる。火炎より上で使う式だ。
天井流(Alpert)
$H$ は火源から天井までの高さ、$r$ はプルーム軸からの水平距離。天井のすぐ下を流れる高温の層の温度で、感知器やスプリンクラーの作動時間の計算に使う。
火源の代表径
火災のCFDで格子の細かさを決める目安。$D^*$ を格子幅で割った値が大きいほど、プルームがよく解像される。
巻き込みの仮説
1956年、イギリスのモートン、テイラー、ターナーは、プルームが周りの流体を巻き込む速さは、プルームの上昇速度に比例するという簡単な仮説を立てた。この『巻き込み仮説』から、点熱源のプルームで温度が高さの−5/3乗、速度が−1/3乗で変わることが導かれる。のちに火災工学ではヘスケスタッドやズコスキーらが実験でこれを確かめ、火源の大きさを考えた式に発展させた。60年以上前の仮説が、今も煙の制御設計の土台になっている。
計算例
例1:100 kWの火源(直径0.5 m)
周囲20℃。火炎の高さは0.97 m、仮想原点はほぼ床面(0.01 m)。
| 高さ | 中心温度上昇 | 中心速度 | プルームの流量 |
|---|---|---|---|
| 1.5 m | 219 K | 3.72 m/s | 0.70 kg/s |
| 2 m | 135 K | 3.38 m/s | 1.05 kg/s |
| 3 m | 69 K | 2.95 m/s | 1.94 kg/s |
| 5 m | 29 K | 2.49 m/s | 4.39 kg/s |
| 8 m | 13 K | 2.13 m/s | 9.47 kg/s |
高さが2 mから8 mになると、温度上昇は10分の1になるが、流量は9倍に増える。煙の量は火の大きさよりも、煙が天井まで上る距離で大きく変わる。
例2:天井流の温度
| 条件 | 直上 | 1 m離れる | 3 m離れる | 5 m離れる |
|---|---|---|---|---|
| 天井3 m・100 kW | 58 K | 39 K | 19 K | 13 K |
| 天井3 m・500 kW | 171 K | 113 K | 54 K | 39 K |
| 天井6 m・100 kW | 18 K | 18 K | 9 K | 7 K |
| 天井6 m・500 kW | 54 K | 54 K | 27 K | 19 K |
天井が6 mになると、100 kWの火でも直上で18 Kしか上がらないんですね。感知器が動くのが遅れそうです。
そのとおり。天井が高いと、プルームは天井に届くまでに多くの空気を巻き込んで薄まる。温度は高さの−5/3乗で下がるから、天井を2倍にすると温度上昇は約3分の1になる。多くの熱感知器は周囲より数十K高くならないと作動しないので、高い天井のアトリウムや倉庫では、煙感知器や炎感知器を使ったり、感知器の間隔を狭めたりする。さらに、室内の上部が暖かい温度成層があると、プルームが天井まで届かずに途中で止まることもある。
例3:CFDの格子の目安
| 発熱 | D* | D*/δx = 4 | D*/δx = 10 | D*/δx = 16 |
|---|---|---|---|---|
| 100 kW | 0.38 m | 9.6 cm | 3.8 cm | 2.4 cm |
| 500 kW | 0.73 m | 18 cm | 7.3 cm | 4.6 cm |
| 2 MW | 1.27 m | 32 cm | 13 cm | 7.9 cm |
小さな熱源では、人体(100 W)の2 m上で温度上昇1.4 K・速度0.34 m/s、1 kWの暖房機で6.7 K・0.74 m/sとなる。室内の換気計算では、こうした弱いプルームも空気の動きを決める。
解析のポイント
- まず相関式でプルームと天井流の値を出し、CFDの結果と比べる。
- 格子はD*/δxで決め、2段階以上の格子で結果が変わらないことを確かめる。
- プルームの巻き込みを解くには、LESなど非定常の乱流モデルが向いている。
- 天井や壁への熱の逃げ(伝導と放射)を入れる。天井流の温度が下がる。
- 開口部や換気の条件でプルームが傾くので、境界条件を現実に合わせる。
「アトリウムで煙が途中で止まった」
高さ30 mのガラス張りのアトリウムで火災の煙の実験をしたところ、夏の昼には煙が天井まで上がらず、途中の高さで横に広がって止まった。日射でアトリウムの上部が暖まり、温度成層ができていたため、途中で煙の温度が周りと同じになり、浮力を失ったのだ。天井の感知器は作動しなかった。そこで、途中の高さにも感知器を置き、排煙の方法を見直した。プルームの計算では、周囲の温度分布まで入れないと、こうした現象を見逃す。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 格子が粗すぎる | 巻き込みを誤る | D*/δxで決める |
| 発熱の全量を対流に | 温度を過大評価 | 対流分は約7割 |
| 火炎内で相関式を使う | 温度を誤る | 火炎高さを確認 |
| 周囲の温度成層を無視 | 煙の到達を誤る | 温度分布を入れる |
| 壁への熱損失を無視 | 天井流を過大評価 | 伝導と放射を入れる |
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スプリンクラー配置ツールとトンネル火災換気ツールで試せるよ。関連するページは火災シミュレーション、温度成層、混合対流、自然対流と熱伝導の連成が参考になる。
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