火災熱流体シミュレーション
理論:区画火災の成長と上限
概要
FDSで部屋の火災を計算してみたんですが、結果が正しいかどうか、どう確かめればいいですか?
まず手計算の式で大まかな値を出して、桁が合うか比べるのが基本だ。火災の計算は、火源の大きさの与え方で結果がほとんど決まる。火は時間の2乗で大きくなるt²火源で与えることが多い。部屋の天井付近にたまる高温層の温度はMQH式で見積もれて、約500 K上がるとフラッシュオーバー、つまり部屋全体が一気に燃え出す状態になる。さらに、火の大きさは出入口から入る空気の量で頭打ちになる。標準的な大きさの部屋で、この3つを計算してみよう。
t²火源
発熱速度が時間の2乗で増えるとした火源。係数 $\alpha$ は、1 MWに達するまでの時間がそれぞれ約600秒、300秒、150秒、75秒になるように決められている。
高温層の温度(MQH式)
$A_o\sqrt{H_o}$ は開口の換気因子、$A_T$ は開口を除く内表面積、$h_k$ は壁への熱の逃げやすさ。壁が厚い材料なら時間とともに $h_k$ は小さくなり、同じ火でも高温層は熱くなっていく。
換気による上限
MQH式とt²火源
MQH式は、1981年にアメリカ国立標準局(今のNIST)のマッキャフリー、クインティア、ハーケルロードが、多くの区画火災の実験をまとめて作った式で、3人の頭文字から名付けられた。t²火源の考え方も同じころ、火災の成長を簡単に表す方法として広まった。どちらも簡単な式だが、今もFDSなどの計算結果を確かめるときの物差しとして使われている。FDS自体もNISTが開発し、2000年に公開されたソフトだ。
計算例:3.6×2.4×2.4 mの部屋
出入口は幅0.8 m・高さ2.0 m、壁と天井は石こうボード(熱伝導率0.48 W/mK、密度1440 kg/m³、比熱840 J/kgK)。開口を除く内表面積44.5 m²、換気因子2.26 m^2.5。
フラッシュオーバーまでの時間
| 火の成長 | フラッシュオーバーの時刻 | そのときの発熱速度 |
|---|---|---|
| 遅い(slow) | 612 秒 | 1.10 MW |
| 中程度(medium) | 331 秒 | 1.28 MW |
| 速い(fast) | 178 秒 | 1.49 MW |
| 極めて速い(ultrafast) | 96 秒 | 1.75 MW |
換気で決まる発熱速度の上限は3.4 MW、Thomasの式によるフラッシュオーバーの目安は1.2 MW。
300 kWで燃え続けた場合の高温層
| 経過時間 | 高温層の温度上昇 |
|---|---|
| 1 分 | 143 K |
| 5 分 | 187 K |
| 10 分 | 210 K |
| 20 分 | 236 K |
成長の速い火だと、3分もたたずにフラッシュオーバーになるんですね。そのときの火の大きさは成長の遅い火とあまり変わらないのに。
フラッシュオーバーに必要な火の大きさは、部屋の大きさと開口で大まかに決まり、1〜2 MWの範囲に収まる。違うのはそこに到達する時間だ。成長の速い火では、壁がまだ冷たく熱をよく吸うので、少し大きな火が必要になるが、それでも3分かからない。避難や消火の計画では、この時間がどれだけあるかが大事で、家具や内装の燃えやすさが成長の速さを決める。CFDで計算するときは、火源の発熱速度をどう与えるかで結果がほぼ決まるので、t²のどの速さを選んだかを必ず明記し、手計算の値と比べて桁を確かめよう。
CFDの進め方
- 火源の発熱速度を、実験データかt²火源で与え、根拠を記録する。
- 格子は火源の代表径D*に対して十分細かくする(D*/δx = 4〜16が目安)。
- 壁の材料と厚さを入れ、壁への熱の逃げを解く。高温層の温度に大きく効く。
- 開口部の大きさと外の条件を正しく与える。換気が火の大きさを決める。
- MQH式・プルーム式・天井流の式と比べ、桁が合うことを確かめる。
「窓が割れて火が大きくなった」
ある火災の再現計算で、最初は出入口だけを開口として計算したところ、火は換気で頭打ちになり、実際の被害より小さな火災になった。現場を調べると、途中で窓ガラスが熱で割れ、そこから大量の空気が入っていた。窓が割れる時刻を入れて計算し直すと、発熱速度が急に増える様子が再現できた。区画火災では、開口の大きさが途中で変わると火の大きさも変わるので、ガラスの破損や扉の開閉も条件として考える必要がある。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 発熱速度の根拠がない | 結果が意味を持たない | t²や実験で与える |
| 換気の上限を無視 | 火を過大に | 開口から上限を確認 |
| 壁を断熱で与える | 高温層を過大評価 | 壁の熱伝導を解く |
| 格子が粗い | プルームを誤る | D*/δxで決める |
| 開口の変化を無視 | 火の成長を誤る | 破損や開閉を入れる |
関連する内容も知りたいです。
構造部材の耐火ツールとスプリンクラー配置ツールで試せるよ。関連するページは熱プルーム、温度成層、共役熱伝達、熱応力解析が参考になる。
関連トピック
なった
詳しく
報告