火災熱流体シミュレーション

カテゴリ: 連成解析・熱流体 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for fire simulation thermal theory - technical simulation diagram
火災熱流体シミュレーション

理論:区画火災の成長と上限

概要

🙋

FDSで部屋の火災を計算してみたんですが、結果が正しいかどうか、どう確かめればいいですか?

🎓

まず手計算の式で大まかな値を出して、桁が合うか比べるのが基本だ。火災の計算は、火源の大きさの与え方で結果がほとんど決まる。火は時間の2乗で大きくなるt²火源で与えることが多い。部屋の天井付近にたまる高温層の温度はMQH式で見積もれて、約500 K上がるとフラッシュオーバー、つまり部屋全体が一気に燃え出す状態になる。さらに、火の大きさは出入口から入る空気の量で頭打ちになる。標準的な大きさの部屋で、この3つを計算してみよう。

t²火源

$$ \dot Q(t) = \alpha\,t^2,\qquad \alpha = 0.00293\ (\text{slow}),\ 0.01172\ (\text{medium}),\ 0.0469\ (\text{fast}),\ 0.1876\ (\text{ultrafast})\ \mathrm{kW/s^2} $$

発熱速度が時間の2乗で増えるとした火源。係数 $\alpha$ は、1 MWに達するまでの時間がそれぞれ約600秒、300秒、150秒、75秒になるように決められている。

高温層の温度(MQH式)

$$ \Delta T_g = 6.85\left(\frac{\dot Q^2}{A_o\sqrt{H_o}\,h_k A_T}\right)^{1/3},\qquad h_k = \sqrt{\frac{k\rho c}{t}} $$

$A_o\sqrt{H_o}$ は開口の換気因子、$A_T$ は開口を除く内表面積、$h_k$ は壁への熱の逃げやすさ。壁が厚い材料なら時間とともに $h_k$ は小さくなり、同じ火でも高温層は熱くなっていく。

換気による上限

$$ \dot Q_{max} \approx 1500\,A_o\sqrt{H_o}\ \ \mathrm{kW} $$
Coffee Break よもやま話

MQH式とt²火源

MQH式は、1981年にアメリカ国立標準局(今のNIST)のマッキャフリー、クインティア、ハーケルロードが、多くの区画火災の実験をまとめて作った式で、3人の頭文字から名付けられた。t²火源の考え方も同じころ、火災の成長を簡単に表す方法として広まった。どちらも簡単な式だが、今もFDSなどの計算結果を確かめるときの物差しとして使われている。FDS自体もNISTが開発し、2000年に公開されたソフトだ。

計算例:3.6×2.4×2.4 mの部屋

出入口は幅0.8 m・高さ2.0 m、壁と天井は石こうボード(熱伝導率0.48 W/mK、密度1440 kg/m³、比熱840 J/kgK)。開口を除く内表面積44.5 m²、換気因子2.26 m^2.5。

フラッシュオーバーまでの時間

火の成長フラッシュオーバーの時刻そのときの発熱速度
遅い(slow)612 秒1.10 MW
中程度(medium)331 秒1.28 MW
速い(fast)178 秒1.49 MW
極めて速い(ultrafast)96 秒1.75 MW

換気で決まる発熱速度の上限は3.4 MW、Thomasの式によるフラッシュオーバーの目安は1.2 MW。

300 kWで燃え続けた場合の高温層

経過時間高温層の温度上昇
1 分143 K
5 分187 K
10 分210 K
20 分236 K
🙋

成長の速い火だと、3分もたたずにフラッシュオーバーになるんですね。そのときの火の大きさは成長の遅い火とあまり変わらないのに。

🎓

フラッシュオーバーに必要な火の大きさは、部屋の大きさと開口で大まかに決まり、1〜2 MWの範囲に収まる。違うのはそこに到達する時間だ。成長の速い火では、壁がまだ冷たく熱をよく吸うので、少し大きな火が必要になるが、それでも3分かからない。避難や消火の計画では、この時間がどれだけあるかが大事で、家具や内装の燃えやすさが成長の速さを決める。CFDで計算するときは、火源の発熱速度をどう与えるかで結果がほぼ決まるので、t²のどの速さを選んだかを必ず明記し、手計算の値と比べて桁を確かめよう。

CFDの進め方

  1. 火源の発熱速度を、実験データかt²火源で与え、根拠を記録する。
  2. 格子は火源の代表径D*に対して十分細かくする(D*/δx = 4〜16が目安)。
  3. 壁の材料と厚さを入れ、壁への熱の逃げを解く。高温層の温度に大きく効く。
  4. 開口部の大きさと外の条件を正しく与える。換気が火の大きさを決める。
  5. MQH式・プルーム式・天井流の式と比べ、桁が合うことを確かめる。
Coffee Break よもやま話

「窓が割れて火が大きくなった」

ある火災の再現計算で、最初は出入口だけを開口として計算したところ、火は換気で頭打ちになり、実際の被害より小さな火災になった。現場を調べると、途中で窓ガラスが熱で割れ、そこから大量の空気が入っていた。窓が割れる時刻を入れて計算し直すと、発熱速度が急に増える様子が再現できた。区画火災では、開口の大きさが途中で変わると火の大きさも変わるので、ガラスの破損や扉の開閉も条件として考える必要がある。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
発熱速度の根拠がない結果が意味を持たないt²や実験で与える
換気の上限を無視火を過大に開口から上限を確認
壁を断熱で与える高温層を過大評価壁の熱伝導を解く
格子が粗いプルームを誤るD*/δxで決める
開口の変化を無視火の成長を誤る破損や開閉を入れる
🙋

関連する内容も知りたいです。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

構造解析電磁界解析熱解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0