自然対流-伝導連成

カテゴリ: 連成解析・熱流体 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for natural convection conduction theory - technical simulation diagram
自然対流-伝導連成

理論:伝導・対流・放射が直列と並列に並ぶ

概要

🙋

複層ガラスは空気の層で断熱しているんですよね。空気の層は厚いほどいいんですか?

🎓

途中まではそうだ。空気は熱を伝えにくいから、動かなければ厚いほど断熱になる。ところが空気層が厚くなると、暖かいガラス側で空気が上がり、冷たいガラス側で下がる循環が起き、熱を運びはじめる。これが自然対流だ。流れの強さは空気層の温度差で決まり、その温度差はガラスや室内外の熱の伝わり方で決まる。つまり伝導と対流を一緒に解かないと答えが出ない。さらに空気層では放射も大きい。この3つを連成させて、最適な厚さを求めてみよう。

空気層の対流

$$ Ra_L = \frac{g\beta\,\Delta T\,L^3}{\nu\alpha},\qquad Nu_L = \frac{h_c L}{k} = \max\left(Nu_1,\ Nu_2,\ Nu_3\right) $$

$L$ は空気層の厚さ、$\Delta T$ は2枚のガラスの温度差。ヌセルト数 $Nu$ は対流で熱の伝わり方が伝導の何倍になるかを表す。縦長の空気層では、レイリー数が数千を超えるまで $Nu \approx 1$(伝導だけ)で、それを超えると対流が効きはじめる。今回はElSherbinyらの縦型空洞の式を使った。

熱貫流率

$$ \frac{1}{U} = \frac{1}{h_i} + \frac{2t_g}{k_g} + \frac{1}{h_c + h_r} + \frac{1}{h_o},\qquad h_r = \frac{4\sigma T_m^3}{1/\varepsilon_1 + 1/\varepsilon_2 - 1} $$

室内側の熱伝達、ガラス2枚の伝導、空気層(対流と放射の並列)、屋外側の熱伝達が直列に並ぶ。空気層の温度差は熱貫流率に応じて変わるので、繰り返し計算で求める。

Coffee Break よもやま話

レイリーとベナール

1900年、フランスのベナールは、下から温めた薄い液体の層に、きれいな六角形の対流の模様が現れることを観察した。1916年、イギリスのレイリー卿はこれを理論で説明し、温度差がある値を超えるまでは液体は静止したままで、超えると対流が始まることを示した。その境目を決める無次元数が、今のレイリー数だ。複層ガラスの空気層で『ある厚さから対流が始まる』のも、同じ考え方で説明できる。

計算例:高さ1 mの複層ガラス

室内20℃(室内側熱伝達率8 W/m²K)、屋外0℃(23 W/m²K)、ガラス厚さ4 mm(熱伝導率1.0 W/mK)、ガラスの放射率0.84(Low-E膜は0.10)。

空気層の厚さと熱貫流率

空気層普通ガラス・空気Low-E・空気Low-E・アルゴン
6 mm3.302.562.11
12 mm2.871.781.46
16 mm2.761.651.39
20 mm2.751.651.41
30 mm2.781.711.45
最適な厚さ16.3 mm(2.75)14.6 mm(1.65)15.9 mm(1.39)

単位は W/m²K。1枚ガラスは5.80 W/m²K。空気層のヌセルト数は、普通ガラス・空気で12 mmまで1.00、20 mmで1.30、30 mmで2.08と、厚くなるにつれて対流が強まった。

空気層の中の熱の内訳(厚さ12 mm)

ガラス対流(伝導)放射放射の割合
普通ガラス2.09 W/m²K3.73 W/m²K64%
Low-E2.10 W/m²K0.51 W/m²K19%
🙋

空気層を厚くしても16 mmくらいで効かなくなるし、そもそも熱の6割以上が放射で運ばれていたんですね。

🎓

伝導だけなら熱の伝わり方は厚さに反比例するので、厚くするほど良くなる。ところが厚さの3乗でレイリー数が増えるので、ある厚さで対流が始まり、厚くした分の効果を対流が打ち消す。だから最適な厚さがある。そして放射は空気層の厚さにほとんど関係なく、ガラスの放射率で決まる。普通のガラスでは放射の方が大きいので、厚さを工夫するよりLow-E膜をつける方が効く。アルゴンは空気より熱を伝えにくく、さらに下がる。室内側のガラス表面温度は、1枚ガラスの5.5℃から、普通の複層で12.8℃、Low-Eとアルゴンで16.5℃に上がり、結露しにくくなる。

解析のポイント

  1. まずレイリー数を求め、伝導だけで済むか、対流を解く必要があるかを判断する。
  2. CFDで解くときは、浮力(ブシネスク近似)を入れ、壁近くを細かく分割する。
  3. 空気層や筐体の中では放射を必ず入れる。対流と同じくらいかそれ以上になる。
  4. 温度差が小さいと流れが弱く、収束が遅い。緩和係数や初期値に注意する。
  5. レイリー数が大きい(10⁹程度以上)と乱流になるので、乱流モデルを検討する。
Coffee Break よもやま話

「厚い空気層にしたのに寒い」

ある住宅の改修で、断熱を良くしようと複層ガラスの空気層を12 mmから30 mmの特注品に変えたが、体感はほとんど変わらなかった。計算すると、普通のガラスでは熱貫流率は2.87から2.78 W/m²Kと3%しか下がらない。空気層の中で対流が始まっていたうえ、熱の多くは放射で運ばれていたからだ。結局、Low-E膜つきのガラスに替えたところ、窓辺の冷たさが大きく改善した。自然対流と放射を一緒に考えないと、効く対策を選べない例だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
空気層を伝導だけで扱う厚い層で過大評価レイリー数で判断
放射を無視熱損失を大きく過小評価放射を入れる
浮力を入れ忘れる流れが生じない重力と熱膨張を設定
温度差を固定で与える連成を無視繰り返し計算
壁近くのメッシュが粗い熱伝達の誤差境界層を解像
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

自然対流ツールと対流拡散のシミュレーターで試せるよ。関連するページは共役熱伝達、混合対流、熱プルーム、温度成層が参考になる。

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