EMIフィルタ設計

カテゴリ: 電磁界解析・EMC | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for emi filter design theory - technical simulation diagram
EMIフィルタ設計

理論:挿入損失と寄生成分

概要

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電源の伝導ノイズが規格を超えたので、フィルタを入れたいのですが、どう選べばいいですか?

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まず、どの周波数で何dB足りないかを測る。伝導ノイズは150 kHzから30 MHzが対象で、スイッチング電源では低い周波数側の差動モードと、高い周波数側のコモンモードが問題になりやすい。LCフィルタはカットオフより上で1桁あたり約40 dB減衰するので、必要な減衰量からLとCを決められる。ただし、ここで計算する減衰は理想部品の話で、実際のインダクタには巻線の間の静電容量、コンデンサにはリードや電極のインダクタンスがある。それらが効くと、高い周波数ではフィルタがほとんど効かなくなる。だから低い周波数の減衰と、高い周波数での寄生成分の両方を見て設計する。

挿入損失

$$ IL = 20\log_{10}\left|\frac{V_{L,\,without}}{V_{L,\,with}}\right|,\qquad f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} $$

フィルタを入れる前後の負荷電圧の比。電源側と負荷側をどちらも50 Ω(LISNの規定値)とした。直列のL、負荷側に並列のCの1段フィルタで、L = 100 μH、C = 1 μF。

寄生成分と自己共振

$$ Z_L = \left(\frac{1}{j\omega L} + j\omega C_{p}\right)^{-1},\qquad Z_C = \frac{1}{j\omega C} + j\omega L_{ESL} + R_{ESR},\qquad f_{SRF} = \frac{1}{2\pi\sqrt{L C_p}},\ \frac{1}{2\pi\sqrt{C L_{ESL}}} $$

C_p はインダクタの巻線間容量(20 pF)、L_ESL と R_ESR はコンデンサの等価直列インダクタンス(15 nH)と抵抗(10 mΩ)。

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ラジオ放送を守るための規格

電気機器のノイズを規制する国際的な取り組みは、1934年に設立されたCISPR(国際無線障害特別委員会)に始まる。当初の目的は、普及し始めたラジオ放送の受信を、モーターや電灯の雑音から守ることだった。伝導ノイズの測定で電源線に入れるLISN(擬似電源回路網)は、測定のたびに電源のインピーダンスが変わらないよう、50 Ωの基準を与える装置だ。フィルタの性能も、この50 Ωを前提に比べられることが多い。

計算例

例1:理想部品と寄生成分ありの挿入損失(L = 100 μH、C = 1 μF、カットオフ15.9 kHz)

周波数理想寄生成分あり巻線間容量だけESLだけ
150 kHz34.0 dB34.1 dB34.0 dB34.1 dB
1 MHz65.9 dB74.3 dB66.6 dB73.6 dB
5 MHz93.9 dB71.3 dB94.1 dB71.1 dB
10 MHz105.9 dB53.8 dB89.1 dB70.6 dB
30 MHz125.0 dB33.6 dB88.2 dB70.5 dB

インダクタの自己共振は3.56 MHz、コンデンサは1.30 MHz。1 MHz付近ではコンデンサが直列共振に近づいて減衰がむしろ増えるが、それより上では両方の寄生成分が重なって減衰が急に落ちる。

例2:150 kHzで60 dBを得る方法

構成部品150 kHzの挿入損失
1段(基準)100 μH + 1 μF34.0 dB
1段(大きくする)473 μH + 4.73 μF60.0 dB
2段100 μH + 1 μF を2組72.7 dB
🙋

1段で大きな部品を使うより、同じ部品を2段にしたほうがよく効くんですね。

🎓

1段の減衰は周波数の2乗で増えるが、部品の値に対してはLとCの積に比例するだけなので、20 dB増やすには積を10倍にしなければならない。2段にすると、減衰は周波数の4乗で増え、同じ部品でも段の数だけ掛け算で効く。大きなインダクタは巻数が増えて巻線間容量も大きくなり、高い周波数の性能が悪くなるので、その点でも段数を増やすほうが有利だ。ただし段の間で共振が起きることがあるので、減衰用の抵抗(ダンピング)を入れて共振の山を抑える。また、どれだけ部品がよくても、入力側と出力側の配線が近くて磁界や電界で結合すると、ノイズはフィルタを飛び越えてしまう。高い周波数では部品の配置と接地が性能を決める。

設計と解析の進め方

  1. 対策なしのノイズを差動モードとコモンモードに分けて測る。
  2. 規格との差に余裕を加えて、必要な挿入損失を周波数ごとに決める。
  3. 部品の寄生成分を含めた回路シミュレーションで挿入損失を確認する。
  4. 段間の共振をダンピング抵抗で抑える。
  5. 基板の配置で入出力の結合と接地インピーダンスを小さくし、実測で確かめる。
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「大きなチョークに替えたら悪化した」

ある電源で20 MHz付近のノイズが規格を超え、コモンモードチョークをインダクタンスの大きいものに替えたところ、低い周波数は改善したが20 MHz付近はかえって悪化した。大きなチョークは巻数が多く、巻線間容量が大きいため、自己共振が数MHzまで下がり、20 MHzでは容量として働いてノイズを通していた。インダクタンスの小さい高周波用のチョークを追加して2段にし、20 MHz付近でも規格内に収めた。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
理想部品で設計高周波で効かない寄生成分を入れる
Lを大きくして済ます自己共振が下がる段数を増やす
ノイズのモードを分けない効かない対策をする差動・コモンを分離
段間共振を無視特定周波数で悪化ダンピングを入れる
入出力の配線が近いフィルタを迂回配置を分ける
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