PCBレイアウトEMC解析

カテゴリ: 電磁界解析・EMC | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for pcb emc layout theory - technical simulation diagram
PCBレイアウトEMC解析

理論:ループとケーブルはアンテナ

概要

🙋

基板の放射ノイズを減らすために、レイアウトで何を一番気をつければいいですか?

🎓

放射の源は大きく2つある。1つは、信号の電流と戻りの電流が作るループで、小さなループアンテナとして電波を出す(差動モード放射)。もう1つは、基板につながったケーブルに流れる、往きと帰りで打ち消し合わない電流で、長いケーブルが棒のアンテナとして電波を出す(コモンモード放射)。差動モードは面積に比例するので、戻り電流が信号線のすぐ下を流れるようにグラウンド面を途切れさせないことが基本だ。コモンモードはわずかな電流でも大きく効くので、グラウンドの電位差を作らない配置と、ケーブルの出口での対策が重要になる。簡単な式で、どちらがどれくらい効くかを比べてみよう。

差動モードとコモンモードの放射

$$ E_{DM} = 1.316\times10^{-14}\,\frac{f^2 A\,I_{DM}}{r}\ \mathrm{[V/m]},\qquad E_{CM} = 1.257\times10^{-6}\,\frac{f\,L\,I_{CM}}{r}\ \mathrm{[V/m]} $$

f は周波数(Hz)、A はループの面積(m²)、L はケーブルの長さ(m)、r は距離(m)。どちらも小さなアンテナとみなした近似式(オットによる)で、地面での反射は含めていない。比較の限度はFCCのクラスB(家庭用、3 m)で、88〜216 MHzでは150 μV/m(43.5 dBμV/m)。

Coffee Break よもやま話

戻り電流はどこを流れるか

低い周波数では、戻り電流は抵抗の最も小さい経路、つまりグラウンド面の中を最短距離で流れる。しかし周波数が高くなると、インダクタンスの最も小さい経路、つまり信号線の真下を通るようになる。これはループの面積が最小になる経路でもある。この性質は1990年代に高速デジタル基板の設計で強く意識されるようになり、「グラウンド面を分割しない」「信号線にグラウンド面の切れ目をまたがせない」といったレイアウトの基本ルールにつながった。

計算例

例1:ループの面積と放射(100 MHz、20 mA、3 m)

ループの面積電界dBμV/mクラスBとの余裕
10 cm²(切れ目を迂回)877 μV/m58.9−15.3 dB
1 cm²87.7 μV/m38.9+4.7 dB
0.1 cm²(グラウンド面上、50 mm×0.2 mm)8.8 μV/m18.9+24.7 dB

例2:1 mのケーブルのコモンモード電流と放射(100 MHz、3 m)

コモンモード電流電界dBμV/m
1 μA42 μV/m32.4
3.6 μA150 μV/m(限度)43.5
5 μA210 μV/m46.4
20 μA838 μV/m58.5
🙋

基板のループの電流は20 mAなのに、ケーブルではわずか数μAで同じくらいの放射になるんですね。

🎓

差動モードの放射は、往きと帰りの電流が近くで逆向きに流れて大部分が打ち消し合い、残ったわずかな差だけが放射になる。だから面積に比例し、面積が小さければ大きな電流でも放射は小さい。一方、コモンモード電流は打ち消す相手がないので、1 mのケーブル全体がアンテナとして効率よく放射する。計算では、20 mA・1 cm²のループより、5 μAのコモンモード電流のほうが2倍以上大きな放射になった。コモンモード電流の多くは、グラウンド面に戻り電流が作る小さな電圧差で生まれる。だからグラウンド面を途切れさせないことは、差動モードとコモンモードの両方に効く。そのうえでケーブルの出口にフィルタやフェライトコアを置き、ケーブルに乗る電流を減らす。

レイアウトと解析の進め方

  1. 高速信号の層のすぐ隣に、切れ目のないグラウンド面を置く。
  2. 信号線がグラウンド面の切れ目をまたがないように配線する。
  3. クロックなど強い信号は短くし、基板の端やコネクタから離す。
  4. ケーブルの出口にフィルタやコモンモードチョークを置き、グラウンドを1か所で筐体につなぐ。
  5. 電磁界解析と近傍磁界プローブで、強い放射源を特定する。
Coffee Break よもやま話

「1本の配線が10 dB」

ある機器で、放射ノイズの試験で100 MHz付近が限度を超えた。基板を調べると、クロックの配線が、電源の都合で分割されたグラウンド面の切れ目をまたいでいた。戻り電流が切れ目を迂回し、ループの面積が大きくなっていたうえに、切れ目の両側に生じた電圧差がケーブルにコモンモード電流を流していた。配線の経路を変えて切れ目をまたがないようにすると、その周波数の放射は10 dB以上下がり、限度内に収まった。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
グラウンド面を分割ループ面積が増大切れ目をまたがない
差動モードだけを対策ケーブル放射が残るコモンモードを抑える
クロックを基板の端に配線端からの放射内層・中央へ
ケーブル出口に対策なしコモンモード電流が流出フィルタ・フェライト
試験の直前に評価手戻りが大きい設計段階で解析
🙋

関連する内容も知りたいです。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

連成解析構造解析熱解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0