磁気エンコーダ

カテゴリ: 電磁場解析・センサー | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for magnetic encoder theory - technical simulation diagram
磁気エンコーダ

理論:磁気スケールの磁場とすき間

概要

🙋

磁気エンコーダは光学式のエンコーダと比べて何が違うのですか?

🎓

汚れや油、振動に強いことが大きな違いだ。光学式はガラスの目盛りを光で読むので、細かい目盛りで高い精度が出せるが、油や粉じんで光がさえぎられると読めなくなる。磁気式は、N極とS極を交互に並べた磁気スケールの磁場をホール素子や磁気抵抗素子で読むので、多少汚れても磁場は通る。その代わり、磁場はスケールから離れるほど急に弱まり、波形もゆがみやすい。だから磁気エンコーダの設計では、磁極ピッチ、センサーとのすき間、磁場の波形のゆがみ(高調波)、信号の補正をまとめて考え、どれだけの精度が出るかを見積もる。

すき間による磁場の減り方

$$ B_n(z) \propto \frac{1}{n}\,e^{-n\pi z/p}\quad (n = 1, 3, 5, \dots),\qquad h_3(z) = \frac{1}{3}\,e^{-2\pi z/p} $$

p は磁極ピッチ(1 mm)、z はスケールの表面からの距離。N極とS極が急に切り替わる理想的な着磁を考えると、磁場には奇数次の高調波が含まれ、次数が高いほど速く減る。h₃ は基本の成分に対する3次の高調波の割合。

角度の計算と位置の誤差

$$ \hat\theta = \arctan\frac{V_{sin}}{V_{cos}},\qquad \Delta x = \frac{\Delta\theta}{2\pi}\cdot 2p $$

1周期は磁極2つ分(2p = 2 mm)。電気角の誤差 Δθ が位置の誤差 Δx に換算される。

Coffee Break よもやま話

鋼のワイヤーに声を記録

磁気スケールは、言い換えれば位置の目盛りを磁気で「記録」したものだ。磁気で情報を記録する考えは、1898年にデンマークのポールセンが鋼のワイヤーに声を記録した装置にさかのぼる。その後、録音テープ、ハードディスクと発展した磁気記録の技術、つまり細かい磁極をそろえて書き込み、離れた場所から読み取る技術が、磁気エンコーダのスケールとセンサーにも生かされている。

計算例

例1:すき間と信号・高調波・位置の誤差(磁極ピッチ1 mm)

すき間基本の成分(表面比)3次の高調波電気角の誤差位置の誤差
0.1 mm73.0%17.8%0.179 rad56.9 μm
0.2 mm53.3%9.5%0.095 rad30.2 μm
0.5 mm20.8%1.4%0.014 rad4.6 μm
1.0 mm4.3%0.06%0.0006 rad0.2 μm

例2:信号のずれによる誤差

原因位置の誤差誤差の周期
オフセット1%3.2 μm1周期に1回
振幅のずれ1%1.6 μm1周期に2回
1周期を1000分割したときの分解能2 μm—
🙋

すき間1.0 mmなら誤差は0.2 μmですごく小さいですね。すき間は大きいほどいいのでは?

🎓

高調波だけを見ればそうだが、信号が表面の4.3%まで弱くなる。センサーの雑音や、まわりのモーターや配線からの磁場は信号の大きさに関係なく入ってくるので、信号が小さいほど相対的に雑音が大きくなり、それが位置のばらつきになる。さらに、すき間が大きいと、すき間の変化(取り付けの誤差や振動)で信号の大きさが大きく変わる。例えば0.5 mmのすき間が0.1 mm変わると、信号は約27%変わる。信号が変わると、補正しきれない振幅のずれが残って誤差になる。だから実際には、高調波と雑音の両方が小さくなるすき間を選び、そのうえで残った高調波を信号処理で補正する。磁極ピッチを大きくすれば同じすき間でも信号は強いが、1周期が長くなるので、同じ電気角の誤差が大きな位置の誤差になる。磁場の解析で、スケールの着磁の形、すき間、センサーの位置を合わせて最適化するのはこのためだ。

モデリングの進め方

  1. 着磁の形(磁極の境目の幅、深さ方向の分布)を入れてスケールの磁場を解く。
  2. センサーの位置での2方向の磁場を求め、sinとcosの信号に換算する。
  3. すき間・傾き・磁極ピッチのばらつきを振って信号の変化を見る。
  4. 角度の計算と補正を入れて、位置の誤差を求める。
  5. 外からの磁場(モーター、配線)の影響を加えて確かめる。
Coffee Break よもやま話

「モーターの近くだけ精度が落ちたエンコーダ」

ある直動の装置で、磁気エンコーダの位置の誤差が、駆動用のモーターに近い区間だけ大きくなった。磁場の解析で調べると、モーターの磁石からの漏れ磁場がセンサーに届き、信号にオフセットとして加わっていた。オフセットは位置によって変わるので、一度の補正では取り切れなかった。センサーのまわりに薄い磁性の遮へいを付け、差動の配置のセンサーに替えて一様な外部磁場を打ち消すようにすると、区間による誤差の差はなくなった。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
分解能を精度とみなす精度を過大評価誤差の要因を積み上げる
磁場を正弦波と仮定高調波の誤差を見逃す着磁の形から解く
すき間を一定とする取り付けのばらつきに弱いすき間を振って評価
外部磁場を無視場所によって誤差が増える遮へい・差動配置
補正を一度だけ行う温度で誤差が戻る温度ごとに補正
🙋

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