渦電流式変位センサ
理論:渦電流がコイルの磁界を打ち消す
概要
回転軸の振れを測る渦電流センサは、どうして金属に触れずに距離がわかるんですか?
センサの先端のコイルに高い周波数の電流を流すと、交流の磁界が出る。近くに金属があると、その中に磁界の変化を打ち消すように渦電流が流れ、渦電流の磁界がコイルに戻ってくる。金属が近いほど打ち消しが強くなり、コイルのインダクタンスが下がる。この変化を電気回路で読み取れば距離になる。高い周波数では渦電流は金属の表面近くだけを流れるので、金属は鏡のように働き、コイルの反対側に逆向きの電流を持つ「鏡像のコイル」があると考えて計算できる。
表皮深さ
ρ は抵抗率、μ_r は比透磁率。渦電流は表面から表皮深さ程度の層を流れ、対象の厚さがその3倍程度あれば、厚い板と同じ応答になる。
鏡像法によるインダクタンス
コイルは外径5 mmの平板コイルで、20巻きを半径1.0〜2.5 mmに並べた(導線の半径0.04 mm)。各巻きを円形ループとみなし、間隔 g の対象の向こう側、距離2g の位置に逆向き電流の鏡像コイルを置いた。対象は完全導体(表皮深さが十分小さい)とした。自由空間でのインダクタンス L₀ は1.47 μH。
回転機械の監視から
渦電流による非接触の変位センサは、1960年代から蒸気タービンや圧縮機の軸の振動監視に広く使われるようになった。すべり軸受の中で回る軸は、軸受との隙間の中でわずかに動くので、その動きを直接測るには非接触のセンサが向いていた。今では軸受の隙間の中の軸の位置を2方向から測って軌跡を描き、異常を見つける方法が回転機械の状態監視の基本になっている。
計算例
例1:材料と周波数による表皮深さ
| 材料 | 100 kHz | 1 MHz | 1 MHzで必要な厚さ(3δ) |
|---|---|---|---|
| アルミニウム | 0.259 mm | 0.082 mm | 0.25 mm |
| 銅 | 0.206 mm | 0.065 mm | 0.20 mm |
| SUS304 | 1.350 mm | 0.427 mm | 1.28 mm |
| 炭素鋼(比透磁率100) | 0.066 mm | 0.021 mm | 0.06 mm |
例2:間隔とインダクタンス・感度(外径5 mmの平板コイル)
| 間隔 | 間隔/直径 | L/L₀ | 感度(μH/mm) | 0.1 mmでの感度との比 |
|---|---|---|---|---|
| 0.1 mm | 0.02 | 0.165 | 2.52 | 100% |
| 0.25 mm | 0.05 | 0.378 | 1.73 | 69% |
| 0.5 mm | 0.10 | 0.602 | 1.00 | 40% |
| 1.0 mm | 0.20 | 0.819 | 0.39 | 15% |
| 1.5 mm | 0.30 | 0.908 | 0.17 | 7% |
| 2.0 mm | 0.40 | 0.948 | 0.08 | 3% |
| 3.0 mm | 0.60 | 0.980 | 0.03 | 1% |
間隔が直径の3割を超えると、感度は1割を切ってしまうんですね。
コイルの磁界は、コイルの大きさ程度の距離で急に弱まる。鏡像のコイルとの距離は間隔の2倍なので、間隔が直径の数割になると打ち消しの効果がほとんど届かない。だから測定範囲を広げたければコイルを大きくするしかないが、大きくすると対象もそれ以上の大きさが必要になり、横方向の分解能も落ちる。また、インダクタンスと間隔の関係は曲線なので、そのままでは出力が直線にならない。実際のセンサでは回路で直線化し、決まった材料の対象で較正する。対象の材料が変わると、表皮深さや透磁率が変わって応答が変わるので、較正をやり直す必要がある。
センサ設計と解析の進め方
- 必要な測定範囲から、コイルの直径(範囲の数倍)を決める。
- 対象の材料と厚さから、周波数を選ぶ(厚さが表皮深さの3倍以上になるように)。
- 軸対称の電磁界解析で、間隔ごとのインピーダンスを求める。
- 対象の大きさ(直径の3倍程度以上)や曲面の影響を確認する。
- 温度による抵抗率の変化と、周囲の金属の影響を評価する。
「軸の振れが実際より大きく出た」
ある圧縮機で、渦電流センサの振れの値が、ダイヤルゲージで測った値より明らかに大きかった。調べると、センサは鋼の軸の表面を直接見ていたが、その場所の材料の組織や残留応力にむらがあり、透磁率と導電率が周方向に変わっていた。センサは距離の変化と区別できず、見かけの振れとして出力していた。これは電気的ランアウトと呼ばれる現象で、測定面を研削して材料の状態をそろえ、見かけの振れを小さくして解決した。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 別の材料の較正を流用 | 距離を誤る | 材料ごとに較正 |
| 対象が薄い | 感度が変わる | 厚さ3δ以上 |
| 対象が小さい | 出力が低下 | 直径の3倍以上 |
| 周囲の金属を無視 | 取り付けで出力がずれる | 取り付け状態で解析 |
| 電気的ランアウト | 見かけの振れ | 測定面を処理 |
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