LVDT(差動変圧器式変位センサ)
理論:コアの位置で変わる2つの結合
概要
LVDTのカタログにある測定範囲は、そのまま全部使えるのですか?
範囲の端では直線性が落ちることが多い。LVDTは、1次コイルが作る磁束を鉄のコアが2つの2次コイルへ振り分ける仕組みで、コアが片側に動くほど、そちらの結合が強く反対側が弱くなる。コアがコイルの中に十分入っている間は、結合の変化がコアの移動量に比例するので出力は直線になる。ところがコアの端がコイルの端に近づくと、比例の関係が崩れる。しかもコアの端では磁束が外へ広がるため、崩れ始めは幾何学的な端より手前になる。この広がりはコアとコイルのすき間や材料で変わるので、詳しくは電磁界の解析で求める。ここではその考え方を、重なりの簡単なモデルで示す。
重なりのモデル
2次コイルは長さ20 mmで、[5, 25] mm と [−25, −5] mm に置く(間に1次コイル)。コアの長さ L_c = 30 mm。w はコアの端での磁束の広がりの長さで、w → 0 なら結合は重なりの長さそのもの。電磁界の解析の代わりに使う例示のモデルである。
出力と直線性の誤差
k は ±R の範囲で原点を通る最適な直線の傾き。誤差は ±R での出力に対する割合で表す。
飛行機の舵とLVDT
電気信号で舵を動かすフライ・バイ・ワイヤの飛行機では、舵を動かす油圧のアクチュエーターの位置を、LVDTで測ってフィードバックすることが多い。接触がないので摩耗せず、振動や温度の変化にも強く、壊れにくい。さらに1つのアクチュエーターに複数のコイルを組み込み、どれかが故障しても位置がわかるようにする。単純な構造で信頼性が高いことが、何十年たってもLVDTが選ばれ続ける理由である。
計算例
例1:範囲と磁束の広がりによる直線性の誤差
| 磁束の広がり w | ±4 mm | ±6 mm | ±8 mm | ±10 mm |
|---|---|---|---|---|
| 0.5 mm | 0.00% | 0.00% | 0.00% | 1.54% |
| 1.5 mm | 0.00% | 0.04% | 0.46% | 3.89% |
| 3.0 mm | 0.19% | 0.71% | 2.28% | 5.93% |
中央での感度はどの場合もほぼ同じ(1 mmあたり2.0、コイルの長さで正規化)。幾何学的な範囲は±10 mmだが、誤差0.5%以内で使えるのは、w = 1.5 mmで±8 mm、w = 3 mmで±5 mm程度まで。
磁束の広がりが大きいと範囲が狭くなるなら、コアをコイルにぴったり近づければいいのでは?
すき間を小さくするほど広がりは小さくなるが、別の問題が出る。コアは管の中を動くので、すき間が小さすぎると取り付けのずれや熱膨張でこすれ、接触しないという長所が失われる。また、コアが中心からずれると、すき間の変化で結合が変わり、変位とは関係のない出力の変化が出る。そのため実際には、コアを長めにして使う範囲をコイルの中央寄りにとる、コイルの巻き方を端で密にして端の結合を補う、といった工夫をする。どの工夫が効くかは、コアの材料の透磁率、コイルの形、励磁の周波数(渦電流で磁束が表面に寄る)で変わるので、電磁界の解析で出力の曲線を求めて確かめる。ここでの重なりのモデルは、その前に「範囲の端は使えない」ことと、その目安をつかむためのものだ。
モデリングの進め方
- コアの長さとコイルの配置から、幾何学的な範囲の見当をつける。
- 軸対称の電磁界の解析で、コアの位置ごとに2次コイルの電圧を求める。
- 励磁の周波数での渦電流とコアの透磁率を入れる。
- 差と比の出力の直線性を求め、使える範囲を決める。
- コアの偏心や温度を振って、出力の変化を確かめる。
「暖機の後に零点がずれたセンサー」
ある試験機で、LVDTの零点が、装置が温まるにつれて少しずつずれた。調べると、2つの2次コイルの巻き数がわずかに違い、温度で銅の抵抗が変わると、2つの電圧の位相がずれて差が完全には0にならなかった。出力を差ではなく比(差/和)で処理し、位相を合わせて検波する回路に変えると、温度による零点のずれは小さくなった。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 幾何学的な範囲を全部使う | 端で直線性が落ちる | 誤差から使える範囲を決める |
| 差の出力だけを使う | 励磁の変動で出力が変わる | 比の出力を使う |
| 渦電流を無視 | 周波数で感度が変わる | 励磁周波数で解く |
| コアの偏心を考えない | 変位以外の出力変化 | 偏心を振って評価 |
| 位相を見ない | 零点が残る・ずれる | 位相を合わせて検波 |
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