変形勾配テンソル — CAE用語解説
変形勾配テンソル
先生、変形勾配テンソルFって大変形解析で必ず出てきますが、正直意味が難しくて…
直感的に言うと「変形前の微小線分がどう変形後の線分に変わるか」を記述するテンソルだ。変形前の位置Xにいた点が変形後にx(X)に移動するとき、F = dx/dX(ヤコビアン)というのが変形勾配テンソルだ。小変形では変位勾配で十分だが、ゴムや生体組織の50%以上の大変形では「元の配置」と「現在の配置」がかけ離れるから、変形前後を丁寧に区別しないと間違った応力を計算してしまう。FはAbaqusのSDVOUT/NE出力などで見られる。
定義
変形勾配テンソルFから何を計算できるんですか?
Fを使って様々な力学量を求められる。①Green-Lagrangeひずみテンソル: E = (F^T*F - I)/2——変形前の座標系での有限ひずみ。②左Cauchy-Greenテンソル: b = F*F^T——超弾性モデルの不変量計算に使う。③体積変化比: J = det(F)——J=1なら体積保存(非圧縮性)、Jが1から離れると体積変化。④極分解: F = R*U = V*R——Rは純粋な剛体回転、UとVは右・左伸張テンソル——これで変形から「どれだけ回転したか」と「どれだけ伸びたか」を分離できる。
超弾性・大変形解析での役割
超弾性モデル(ゴムの解析)でどう使うんですか?
Mooney-Rivlin、Neo-Hookean、Ogden——これらの超弾性モデルは変形エネルギー密度W(I1, I2, I3)という形で表されていて、I1, I2, I3はbテンソルの不変量(b = F*F^T)だ。つまりFからbを計算して、bの不変量からWを計算して、WをbやEで微分して応力を求めるという流れになる。Abaqusの超弾性材料定義(HYPERELASTIC)は内部でFを使ったこの計算を全自動でやってくれる。ゴムシールやOリングの大変形解析、タイヤの接地変形解析はこのルートで解かれている。
生体組織のシミュレーションでも変形勾配テンソルを使いますか?
必須だ。心臓の筋肉や血管は非常に柔軟で収縮・拡張時に50〜100%の大変形を起こす。変形勾配テンソルを基礎にした有限変形理論がなければ正しい応力と変形が計算できない。さらに生体組織は異方性(筋線維方向に沿って剛性が高い)で不均質だから、F = R*U の極分解でローカルな繊維方向の伸びを追跡することが重要になる。Abaqus UMAXTやFEBioなど生体力学専用FEMコードはFテンソルを用いた異方性超弾性モデルを実装している。
関連用語
FがすべてのひずみとエネルギーのGrandmotherみたいな存在なんですね。生体組織への応用まで幅広くてびっくりしました!
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「変形勾配テンソルをもっと効率的に解析できないか?」——私たちは実務者の声に耳を傾け、既存ワークフローの改善を目指す次世代CAEプロジェクトに取り組んでいます。具体的な機能はまだ公開前ですが、開発の進捗をお届けします。
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