多軸疲労
多軸疲労の理論基礎
多軸疲労とは
先生、多軸疲労って何ですか?
通常のS-N法は一軸応力を仮定するが、実構造では複数方向の応力が同時に変動する。これが多軸疲労。
多軸疲労の基準
| 基準 | パラメータ | 特徴 |
|---|---|---|
| von Mises等価応力 | $\sigma_{vm}$ | 最もシンプル。比例荷重のみ |
| 臨界面法(Critical Plane) | 最も損傷が大きい面 | 非比例荷重に対応 |
| Fatemi-Socie | $\gamma_{max}(1+k\sigma_{n,max}/\sigma_y)$ | せん断ひずみベース |
| Smith-Watson-Topper | $\sigma_{max} \cdot \Delta\varepsilon/2$ | 法線応力ベース |
| Dang Van | メソスコピック応力 | 高サイクル多軸疲労 |
臨界面法が最も一般的ですか?
非比例荷重(位相がずれた多軸応力)では臨界面法が必須。von Mises等価では非保守的。
まとめ
von Misesが解けなかった問題
単軸疲労理論をそのまま多軸応力場に適用すると危険な過大評価になることがある。von Mises相当応力で評価すると、位相差180°の二軸応力では疲労限が40%も高く予測される。これを解決したのがBrown-Miller基準(1973年)で、最大せん断ひずみと最大主ひずみの組合せで評価することで実験と15%以内の精度を達成した。
多軸疲労の数値計算手法
多軸疲労のFEM
1. FEMで全応力成分の時刻歴を計算($\sigma_x(t), \sigma_y(t), \tau_{xy}(t)$)
2. 疲労ソフトで臨界面を探索(全方向を走査)
3. 臨界面上でレインフロー+損傷計算
nCode, fe-safeが多軸疲労の臨界面法に対応。
まとめ
臨界面法の計算手順
多軸疲労の臨界面法では、全方向にわたってき裂発生パラメータを計算し、最大値を与える面(臨界面)を特定する。実装では0°〜180°を10°刻みで18方向計算するのが一般的だ。FEMポスト処理として実装するとソリッドモデル1万要素の計算に数秒かかるが、比例・非比例荷重どちらにも適用できる汎用性が高い。
多軸疲労の実務適用
多軸疲労の実務
クランクシャフト、車軸、圧力容器のノズル接続部等、多軸応力が支配する部品。
実務チェックリスト
ターボファンエンジンディスクの多軸評価
航空機エンジンのコンプレッサーディスクは遠心力(引張)と熱応力(圧縮)が同時に働く典型的な多軸疲労の場だ。CFM56エンジンのディスクでは多軸疲労基準による寿命が単軸評価より30%短く予測され、早期のオーバーホールスケジュールを組む根拠となった。
多軸疲労のソフトウェア比較
ツール
FEMFAT MultaxialモジュールのCapability
オーストリアECS社のFEMFATはMultiaxialモジュールで臨界面法・積分法・等価応力法を全て実装しており、AB社ではエンジンマウントブラケットの認証解析に使用している。FEMからの直接インポートが可能で、ABAQUS/ANSYS/Nastranに対応。1万要素モデルの全方向臨界面探索が3分以内で完了する。
多軸疲労の先端研究
多軸疲労の先端
非比例硬化と疲労寿命の関係
位相差のある多軸応力では材料が追加硬化(非比例硬化)し、単軸疲労の寿命予測より20〜40%短命になる。ステンレス鋼SUS304では位相差90°の場合に硬化量が最大で、同一相当応力振幅でも疲労寿命が半分以下になることがある。2000年代に開発されたItoh-Katakokeモデルはこの現象を定量的に扱える。
多軸疲労のトラブル対応
多軸疲労のトラブル
多軸度の見落としによる破損事例
表面き裂発生位置が最大主応力点と一致しないとき、多軸度の考慮が必要だ。圧力容器ノズル溶接部の破損調査では、単軸評価では問題なしと判定された場所が多軸臨界面解析で最大損傷点と判明した事例がある。応力トリアキシャリティ比τ/σが0.4を超えたら多軸評価を適用することを検討すべきだ。
関連トピック
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