Code_Aster疲労解析
理論:応力履歴から寿命までの流れ
概要
Code_Asterの疲労解析は、応力解析とは別のコマンドで行うのですか?
そうだ。疲労は応力解析の「後処理」として評価する。まず静解析や過渡解析で、荷重の変化に応じた応力を求める。次に評価したい点の応力の時間履歴を取り出し、POST_FATIGUEに渡す。POST_FATIGUEは、レインフロー法で履歴をサイクルに分け、平均応力の補正をかけ、材料に定義したS-N曲線から各サイクルの損傷を求めて、Miner則で足し合わせる。応力が多軸で主応力の向きが変わるような場合は、POST_FATIGUEの多軸の評価やCALC_FATIGUEで、臨界面法などを使って構造全体の損傷分布を求める。Code_Asterはフランス電力公社の原子力機器の評価に使われてきたので、圧力容器の規格(RCC-M)に沿った評価の手順も用意されている。
平均応力補正・S-N曲線・Miner則
σ_a は振幅、σ_m は平均応力、σ_u は引張強さ、σ_ar は補正後の等価振幅、σ_f′ と b はBasquin式の定数、N は破断までの繰返し数、n はそのサイクルの回数、D は累積損傷(1で破断)。
雨が屋根を流れるように数える
レインフロー法は1968年に九州工業大学の遠藤達雄と松石正克が提案した。応力履歴の図を縦にして、雨が屋根(パゴダ)を流れ落ちる様子にたとえてサイクルを数えることから、この名が付いた。不規則な荷重でも、材料が実際に描くヒステリシスループと対応したサイクルを取り出せるため、今では自動車、航空機、原子力のどの分野でも標準の方法になっている。
計算例
例:短い応力履歴の損傷(引張強さ600 MPa、σ_f′ = 900 MPa、b = −0.09の鋼と仮定)
応力履歴(MPa):0 → 250 → −50 → 150 → 50 → 200 → −150 → 0。レインフローで数えたサイクルは次のとおり。
| 範囲 | 平均 | 回数 | Goodman補正後の振幅 | 破断繰返し数 N |
|---|---|---|---|---|
| 250 | 125 | 0.5 | 157.9 | 1.25×10⁸ |
| 100 | 100 | 1 | 60.0 | 5.84×10¹² |
| 250 | 75 | 1 | 142.9 | 3.81×10⁸ |
| 400 | 50 | 0.5 | 218.2 | 3.44×10⁶ |
| 150 | −75 | 0.5 | 75.0 | 4.90×10¹¹ |
1ブロックの損傷は1.52×10⁻⁷で、このブロックを約660万回繰り返すと破断する。損傷の約95%は、範囲400 MPaの半サイクル(最初の山250 MPaと後の谷−150 MPa)から来ている。平均応力の補正をしないと寿命は約1,780万ブロックとなり、2.7倍長く見積もる。
長い計測データを、1日ごとのファイルに分けて別々に疲労計算し、損傷を足し合わせました。何か問題はありますか?
最大のサイクルを見落とす恐れがある。この例でも、損傷のほとんどは履歴の最初の山と終わり近くの谷が作る範囲400 MPaのサイクルで、履歴を途中で切るとこの組み合わせは数えられず、小さなサイクルの半分ずつに分かれてしまう。疲労損傷は振幅の数乗(この例では約11乗)で効くので、最大振幅のサイクルを失うと寿命を大きく過大評価する。区切って処理する場合は、各区間の数え残し(未完の半サイクル)をつないで最後にもう一度レインフローにかけるか、全期間の最大値と最小値を含む1サイクルを別に加える。また、評価点を変えれば履歴も変わるので、応力の最大点だけでなく、振幅と平均応力の組み合わせが厳しい点も調べる。
実務での進め方
- 荷重ケースごとに応力解析を行い、評価点と評価する応力成分(または等価応力)を決める。
- 材料のS-N曲線を関数として定義し、引張強さなど平均応力補正に必要な値を与える。
- POST_FATIGUEでレインフローとGoodman等の補正を指定し、損傷を求める。
- 手計算の簡単な履歴で結果を確かめてから、実際の荷重履歴に進む。
- 多軸の場合は臨界面法などで構造全体の損傷分布を見て、最も危険な点を確かめる。
「S-N曲線の単位と定義を確かめる」
疲労計算で最も多い間違いの一つは、S-N曲線の定義の取り違えだ。縦軸が振幅か範囲か、横軸が繰返し数 N か反転数 2N か、応力の単位がMPaかPaかで、寿命は何桁も変わる。Code_Asterでは関数として与えた曲線がそのまま使われるので、文献の曲線を写すときは、どの定義で描かれているかを確かめ、手計算できる一定振幅の場合で寿命が文献と一致するかを最初に確かめるのがよい。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 履歴を区切って数える | 最大サイクルを見落とす | 残りをつないで再計数 |
| 平均応力を無視 | 寿命を過大評価 | Goodman等で補正 |
| 振幅と範囲の取り違え | 寿命が桁違い | S-N曲線の定義を確認 |
| 応力最大点だけ評価 | 危険点を見逃す | 損傷分布を確認 |
| 多軸を等価応力1つで評価 | 主応力回転を無視 | 臨界面法 |
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