ひずみ寿命法(低サイクル疲労)
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)の理論基礎
ひずみ寿命法とは
先生、ひずみ寿命法はS-N曲線法とどう違いますか?
S-N曲線法は応力ベースで高サイクル疲労($N > 10^4$)。ひずみ寿命法はひずみベースで低サイクル疲労($N < 10^4$)に対応。塑性ひずみが大きい問題に必須。
Coffin-Manson式
第1項が弾性ひずみ(Basquinの式)、第2項が塑性ひずみ(Coffin-Mansonの式)。
$\sigma_f'$: 疲労強度係数、$b$: 疲労強度指数、$\varepsilon_f'$: 疲労延性係数、$c$: 疲労延性指数。
弾性ひずみと塑性ひずみの両方を含む。低サイクル(大ひずみ)では塑性項が支配的。
S-N法では応力が降伏以下を仮定。ひずみ寿命法は降伏を超える塑性ひずみを直接扱える。
まとめ
Coffin-Mansonの独立発見
ひずみ-寿命法の基礎となるCoffin-Manson則は1954年に原子力関連の研究として独立に発見された。Coffinはプラット&ホイットニーでタービンブレードの熱疲労を研究し、Mansonは当時NASAの前身NACKで蒸気タービンを研究していた。両者が同じ式Δεp/2=εf'(2Nf)^cに到達したことは科学史上の奇妙な偶然とされる。
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)の数値計算手法
ひずみ寿命のFEM
1. 弾塑性FEM解析 — 繰り返し荷重でヒステリシスループを追跡
2. 安定化ひずみ範囲 $\Delta\varepsilon$ を取得
3. Coffin-Manson式で寿命 $N_f$ を計算
疲労ソフト(nCode, fe-safe)はFEMの応力/ひずみ結果からCoffin-Mansonで寿命を自動計算。
まとめ
弾性・塑性ひずみ範囲の分離
ひずみ-寿命法では全ひずみ範囲ΔεをCoffin-Manson式(塑性成分)とBasquin則(弾性成分)に分離して寿命を評価する。実用的な遷移寿命2Nt(両成分が等しくなる点)はA7075アルミで約2000サイクル、SS400鋼で約4000サイクルが典型値だ。低サイクル疲労(Nf<104)では塑性成分が支配的になる。
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)の実務適用
ひずみ寿命の実務
エンジン部品の熱疲労、圧力容器の圧力サイクル、地震の低サイクル疲労で使用。
実務チェックリスト
原子力配管の低サイクル疲労評価
原子力発電所の配管は起動・停止・地震で大きなひずみ範囲が生じ、低サイクル疲労が設計上の主要課題だ。ASME Code Sec.III NB-3200では素材の設計疲労曲線(ひずみ-寿命ベース)を使い、許容累積損傷係数を1.0未満に保つよう規定している。Δε=0.5%で許容サイクル数は304SSで約10万サイクルとなる。
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)のソフトウェア比較
ツール
ε-N法の材料定数データベース差
SAE J1099規格準拠のMATLAB Fatigue ToolboxとnodeDB(旧MatDB)では、同一鋼材S45Cの疲労延性係数εfが約8%異なる文献値を収録している。ANSYS nCodeはASME材料DBと独自試験DBを併用し、材料選択UIで出典明示を義務付けている点が信頼性設計で重視されている。
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)の先端研究
先端
熱機械疲労(TMF)とひずみ-寿命
温度と機械的荷重が同時に変動する熱機械疲労(TMF)では、等温ひずみ-寿命曲線をそのまま使えない。位相が同期したIn-phase TMFは酸化による寿命低下が大きく、位相が逆のOut-of-phase TMFは硬化が顕著だ。自動車ターボチャージャーハウジングのSiMoダクタイル鋳鉄は600℃でのTMF試験から専用ひずみ-寿命曲線を作成して設計する。
ひずみ寿命法(低サイクル疲労)のトラブル対応
トラブル
塑性ひずみの過小評価による誤差
弾性解析のみのFEM結果にNeuber補正を使ってひずみ-寿命評価すると、多軸応力場では誤差が大きくなることがある。圧力容器ノズル周辺のような高応力集中部では弾塑性解析が必須で、弾性解析+Neuber補正より20〜30%の誤差が生じる。降伏強度の1.3倍以上の相当応力が生じる領域では必ず弾塑性FEMを使うこと。
関連トピック
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