熱-機械サイクル疲労(TMF)
熱-機械サイクル疲労(TMF)の理論基礎
TMFとは
先生、TMFってthermal-fatigueと同じですか?
TMF(Thermo-Mechanical Fatigue)は温度と機械的荷重が同時に繰り返される問題。単なる熱疲労は温度のみの繰り返しだが、TMFは圧力や遠心力も同時に変動。エンジンのシリンダーヘッド、タービンブレードが典型。
IP vs. OP
IPとOPで寿命が全然違うんですか?
数倍〜10倍違うことがある。OPのほうが寿命が短い場合が多い(酸化促進)。
まとめ
TMF(熱機械疲労)の定義と種類
熱機械疲労(Thermo-Mechanical Fatigue, TMF)は温度サイクルと機械的ひずみサイクルが同時に作用する疲労。温度とひずみが同位相で変化する「in-phase TMF(IP-TMF)」と逆位相の「out-of-phase TMF(OP-TMF)」では破損メカニズムが異なる。IP-TMFは高温高ひずみで酸化と疲労が連成し粒界破壊が支配、OP-TMFは低温引張ひずみ時に酸化膜のき裂がき裂源になる。ガスタービン翼のような高温構造物ではOP-TMFが寿命を支配することが多く、Nissley(1995年、P&W)が整理した定式化が今も参照される。
熱-機械サイクル疲労(TMF)の数値計算手法
TMFのFEM
1. 温度サイクル+機械荷重サイクルを同時に与える
2. Chabocheモデルで弾塑性+クリープ(*VISCO)
3. 安定化ヒステリシスループを取得
4. TMF寿命予測(Coffin-Manson + クリープ損傷 + 酸化損傷)
まとめ
TMF試験(ISO 12111)の実施手順
TMF試験の国際規格ISO 12111(2011年制定)は、丸棒試験片を誘導加熱しながら機械式引張試験機でひずみを与える同時制御試験を規定。温度範囲は材料の使用温度(例:ニッケル基超合金では200〜950°C)、機械的ひずみ範囲は0.5〜2.0%が代表値。加熱冷却速度は5〜10°C/secが標準で、1サイクル約5〜20分、総試験時間は数日〜数週間に及ぶ。装置コストは1台5000万〜1億円台でMTSシステムズ社製かInstron社製の高温試験機が主流。日本ではNIMS(つくば)、東芝ESS(横浜)、東北大(仙台)が設備を保有。
熱-機械サイクル疲労(TMF)の実務適用
TMFの実務
エンジンのシリンダーヘッド、排気マニホールド、タービンブレード。ASME NHのクリープ-疲労評価。
実務チェックリスト
ターボチャージャーハウジングの寿命予測
自動車用ターボチャージャーのタービンハウジング(SiMo鋳鉄製)は、エンジン始動〜停止で20〜900°Cのサイクルを繰り返す。各サイクルで0.1〜0.3%の機械的ひずみが生じ、典型寿命は100,000〜200,000サイクル(車齢15〜20年相当)が設計目標。Continental AG(独)ではNastran→Abaqus連携のTMF解析フローを確立しており、IP/OP-TMF損傷をそれぞれ独立変数として評価した後にMiner則で合算する方法を採用。解析で40%以上のホットスポットを特定し形状最適化(フィレットR拡大)で寿命2倍を達成した報告がある(2019年、SAE Paper 2019-01-0281)。
熱-機械サイクル疲労(TMF)のソフトウェア比較
ツール
TMF解析に対応した主要ソフト
TMF専用解析対応ソフト比較:Abaqus/Standardは非線形クリープ-疲労連成モデルの自由度が高くロールスロイス、MTU Aeroがエンジン翼設計に使用。Ansys Mechanical(nCode DesignLife連携)はISO 12111に準拠したTMFポストプロセスが自動化されており実務効率が高い。fe-safe(DS傘下)はIP/OP-TMFを自動判別し損傷をコンター表示できる。SIMcenter Nastranは線形-非線形連成に優れるが高度TMFには制限がある。MATDAT社のMATERIAL PROPERTYデータベースはニッケル超合金のTMF材料定数を多数収録し設計標準に使用されている。
熱-機械サイクル疲労(TMF)の先端研究
TMFの先端
熱機械疲労の発見:ジェットエンジン開発の歴史
熱機械疲労(TMF)が独立した破壊モードとして認識されたのは1960年代のプラット&ホイットニー JT9D エンジン開発時だ。タービンブレードが飛行サイクル毎に700〜1,050℃の熱機械荷重を受けて1,000サイクル以下で破断する現象を解明するため、In-phase/Out-of-phase TMF試験機が開発され、IN738LC合金の等温疲労寿命の1/4しかTMF寿命がないことが判明した。
熱-機械サイクル疲労(TMF)のトラブル対応
TMFのトラブル
ラチェッティングによる寿命過大評価
TMF解析で「ラチェッティング(塑性ひずみの一方向的蓄積)」を見落とすと、疲労寿命が実際より数倍長く計算される。温度・荷重の非対称サイクルがある場合に発生し、時定数が異なるクリープと塑性の重ね合わせで平均ひずみが毎サイクル累積される。Chaboche非線形移動硬化モデル(1986年)は背応力の動的回復項を含み、ラチェッティングをある程度再現できる。Abaqusの*CYCLICHARDENINGオプションで実装可能。ただしChabocheモデルでもラチェッティング速度が実験の2〜5倍になる傾向があり、長谷川-Cederbaum修正則(2007年、名古屋大)などの補正が提案されている。
なった
詳しく
報告