コンパクト熱交換器
理論:小さな体積に大きな面積
概要
ラジエーターのような熱交換器は、なぜあんなに細かいフィンが並んでいるんですか?
空気の熱伝達率は水の数十分の一しかないので、空気側は面積で稼ぐしかない。細かいフィンを密に並べると、体積あたりの面積が1,000 m²/m³を超える。さらにフィンを短く切ってずらすと、境界層が途切れて熱伝達率も上がる。ただし流れが通りにくくなり、圧力損失が大きくなる。熱伝達と圧力損失を、j係数とf係数という2つの数で整理するのがコンパクト熱交換器の設計の基本だ。オフセットストリップフィンで実際に計算してみよう。
j係数とf係数
$G$ は最小流路断面での質量速度、$D_h$ は水力直径。今回のオフセットストリップフィン(間隔1.5 mm・高さ6 mm・厚さ0.1 mm・長さ3 mm)では $D_h$ = 2.33 mm。j と f はManglikとBerglesの相関式で求めた。
直交流の温度効率
両方の流体が混ざらない直交流の近似式。ラジエーターや空調の熱交換器の多くがこの形式だ。
KaysとLondonのデータ集
コンパクト熱交換器の設計は、アメリカのケイズとロンドンが1950年代にまとめた『Compact Heat Exchangers』で大きく進んだ。彼らは、さまざまなフィンの形を実験で測り、j係数とf係数をレイノルズ数に対してグラフにまとめた。設計者は自分のフィンに近い形を選べば、性能をすぐに見積もれるようになった。オフセットストリップフィンのManglikとBerglesの式(1995年)は、こうした多くの実験データを1つの式で表したものだ。
計算例
例1:オフセットストリップフィン(空気、50℃)
| レイノルズ数 | 速度 | j | f | 熱伝達率 | 平行平板比 | 圧力勾配 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 300 | 2.3 m/s | 0.0272 | 0.131 | 88 W/m²K | 1.2 | 0.66 kPa/m |
| 500 | 3.9 m/s | 0.0210 | 0.090 | 113 W/m²K | 1.5 | 1.26 kPa/m |
| 1,000 | 7.7 m/s | 0.0150 | 0.056 | 161 W/m²K | 2.1 | 3.14 kPa/m |
| 2,000 | 15.4 m/s | 0.0109 | 0.042 | 234 W/m²K | 3.1 | 9.31 kPa/m |
| 3,000 | 23.2 m/s | 0.0091 | 0.037 | 294 W/m²K | 3.9 | 18.4 kPa/m |
平行平板は、同じ1.5 mm間隔の平らな流路で十分発達した層流(Nu = 8.23)とした場合の熱伝達率76 W/m²Kとの比。伝熱面積密度は流路体積あたり約1,560 m²/m³。
例2:直交流(両流体非混合)の温度効率
| NTU | 熱容量比0.5 | 熱容量比1 | 向流・熱容量比1 |
|---|---|---|---|
| 0.5 | 0.352 | 0.315 | 0.333 |
| 1 | 0.545 | 0.469 | 0.500 |
| 2 | 0.739 | 0.615 | 0.667 |
| 3 | 0.828 | 0.684 | 0.750 |
| 5 | 0.905 | 0.749 | 0.833 |
風速を上げると熱伝達率は増えますが、圧力損失はもっと急に増えるんですね。
Re = 1000から3000で熱伝達率は1.8倍だが、圧力勾配は5.9倍になる。ファンの動力は圧力損失と風量の積なので、約18倍だ。だからコンパクト熱交換器は、風速を上げるより、面積を増やしたり前面を広くしたりして、遅い風速で使うのが基本になる。オフセットストリップフィンが平らなフィンより有利なのは、同じ圧力損失で比べても熱伝達がよいからだが、レイノルズ数が低いほどその差は小さくなる(Re = 300で1.2倍)。熱容量比が1に近いときは、直交流でも温度効率が頭打ちになりやすく、NTUを5に上げても0.75にとどまる。
設計のポイント
- j係数とf係数を使い、同じ圧力損失(ファン動力)で比べてフィンを選ぶ。
- フィン効率を含めて有効面積を求める。
- ε-NTU法で、流れの形式(向流・直交流)に合った式を使う。
- 前面の風速分布のむらを考える。中央と端で風量が違うと性能が落ちる。
- 汚れや霜でフィンの間がふさがると、圧力損失が急に増える。
「霜でふさがったフィン」
冷凍倉庫の冷却器で、運転を続けるうちに冷えが悪くなった。フィンの間隔が狭く、空気中の水分がフィンに霜として付き、すき間がふさがって風量が大きく減っていたのだ。間隔の狭いコンパクトなフィンは、霜や汚れに弱い。霜が付きやすい入口側だけフィン間隔を広くし、定期的に霜を溶かす運転を入れることで解決した。体積を小さくする設計は、使われる環境まで考えないと逆効果になる。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 熱伝達だけで比較 | ファン動力が過大 | 同じ圧損で比較 |
| 流路断面を前面積で | Reとhを誤る | 最小流路断面 |
| 流れの形式を無視 | 効率を誤る | 直交流の式 |
| フィン効率を1 | 面積を過大評価 | 効率を計算 |
| 霜・汚れを無視 | 性能低下 | 間隔に余裕 |
関連する内容も知りたいです。
ε-NTUツールと熱交換器設計ツールで試せるよ。関連するページはピンフィンアレイ、マイクロチャネル冷却、二相流熱交換器が参考になる。
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