熱電変換(熱電発電)の解析
理論:温度差から電圧を取り出す
概要
工場の排ガスの熱で熱電発電をしたいです。どれくらい発電できるか、どう見積もればいいですか?
熱電発電は、温度差をつけた半導体の素子にゼーベック効果で電圧が生じることを使う。見積もりには2つの段階がある。1つ目は材料で決まる効率の上限で、性能指数ZTとカルノー効率から求まる。2つ目が大事で、実際にモジュールにかかる温度差だ。排ガスからモジュールへ、モジュールから冷却水へ熱を運ぶ熱交換器にも熱抵抗があるから、全体の温度差のうちモジュールにかかるのは一部だけになる。発電量は温度差の2乗で効くから、ここを見誤ると見積もりが大きく外れるんだ。
最大効率
$\alpha$ はゼーベック係数、$\rho$ は電気抵抗率、$\kappa$ は熱伝導率、$\bar T$ は平均温度。ZTが無限大でカルノー効率に近づくが、実際の材料では大きく下回る。
出力と熱交換器
$\Delta T_m$ はモジュールにかかる温度差、$R$ は内部の電気抵抗(負荷を同じ抵抗にすると出力が最大)。$R_m$・$R_h$・$R_c$ はモジュールと高温側・低温側の熱交換器の熱抵抗(ペルチェ熱やジュール熱は省略)。
探査機を半世紀動かす電源
ゼーベック効果は1821年にドイツのゼーベックが、異なる金属の接合部を温めると方位磁針が振れることから見つけた。金属では効率が低く、長く温度の測定(熱電対)に使われるだけだった。1950年代に半導体の熱電材料が開発されると発電に使えるようになり、1977年に打ち上げられたボイジャー探査機は、プルトニウムの崩壊熱を熱電変換する電源で、打ち上げから半世紀近く経っても太陽系の外から信号を送り続けている。効率は数%でも、可動部のない電源の長寿命は他に代えがたい。
計算例
例1:性能指数と効率(500 K / 300 K)
| ZT | 0.5 | 1.0 | 1.5 | 2.0 |
|---|---|---|---|---|
| 最大効率 | 4.9% | 8.2% | 10.7% | 12.6% |
| カルノー効率(40%)に対する割合 | 12% | 21% | 27% | 31% |
例2:モジュールの出力
127対のテルル化ビスマスのモジュール(ゼーベック係数0.0508 V/K、内部抵抗2.0 Ω、熱コンダクタンス0.5 W/K)に温度差100 Kをかけると、開放電圧5.08 V、負荷を2.0 Ωにしたときの最大出力3.23 W(電流1.27 A)。
例3:熱交換器の熱抵抗の影響
排ガス側と冷却水側の温度差が全体で200 K、モジュールの熱抵抗2 K/W。両側の熱交換器の熱抵抗を変えた場合(理想は200 K全部がかかった12.9 W):
| 両側の熱抵抗 | モジュールの温度差 | 出力 | 理想に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 0.5 K/W | 133 K | 5.73 W | 44% |
| 1.0 K/W | 100 K | 3.23 W | 25% |
| 2.0 K/W | 67 K | 1.43 W | 11% |
熱交換器の熱抵抗が1 K/Wでも、出力が4分の1になってしまうんですね。
出力は温度差の2乗で効くから、温度差が半分になると出力は4分の1になる。熱電モジュールは熱をよく通しすぎると温度差がつかず、通さなすぎると熱が流れないので、モジュールと熱交換器の熱抵抗のつり合いで出力が決まる。実際の排ガスは空気に近く熱伝達率が低いので、ガス側の熱交換器(フィン)の設計がいちばん難しい。材料のZTを1から1.5に上げる研究も大事だけど、同じ装置なら熱交換器の熱抵抗を半分にするほうが出力への効き目が大きいことが多いんだ。
解析の進め方
- 熱源と冷却側の温度、使える熱量(流量×温度差)を把握する。
- 材料のZTから効率の上限を見積もる。
- 熱交換器・接触面・モジュールの熱抵抗を並べ、モジュールにかかる温度差を求める。
- 流れ方向に熱源の温度が下がる分を、区間に分けて積み上げる。
- 温度の繰り返しによる接合部の劣化と、高温での材料の安定性を確かめる。
「モジュールを増やしたのに出力が増えない」
排熱回収の試作で、熱電モジュールの数を2倍にしたのに、出力は1割ほどしか増えなかった——という例がある。ガス側の熱交換器はそのままだったため、モジュールを増やして熱の通り道が増えた分、ガス側の熱抵抗の割合が大きくなり、1つのモジュールあたりの温度差が下がっていた。熱の流れを計算し直し、ガス側のフィンの面積を増やしたところ、出力はほぼ2倍になった。熱電発電は、発電素子よりも熱の通り道の設計で決まることが多い。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 全体の温度差をモジュールに | 出力を大きく過大評価 | 熱抵抗の直列で分配 |
| ガス側の熱伝達を軽視 | 温度差がつかない | フィンの設計 |
| 負荷の抵抗を合わせない | 出力が下がる | 内部抵抗に合わせる |
| 流れ方向の温度低下を無視 | 下流の出力を過大評価 | 区間に分けて計算 |
| 接触熱抵抗を無視 | 温度差が減る | 締め付け・熱界面材料 |
関連する計算を試したいです。
性能指数ZTの計算とゼーベック起電力の計算で試せるよ。関連するページは熱電冷却(ペルチェ)、ヒートシンクの設計、熱抵抗、熱界面材料が参考になる。
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