座屈拘束ブレース(BRB)シミュレーター 戻る
構造解析

座屈拘束ブレース(BRB)シミュレーター

座屈しない筋かい「座屈拘束ブレース(BRB)」を設計するツールです。芯材の断面積・降伏応力・有効長さ・設計層間変形を変えると、降伏耐力・軸剛性・延性率・1サイクルあたりの履歴消費エネルギーがリアルタイムで分かり、地震エネルギーを安定吸収する制振ブレースを検討できます。

パラメータ設定
芯材の断面積 A_core
mm²
軸力を負担し降伏する鋼製芯材の断面積
芯材の降伏応力 F_y
MPa
芯材鋼種の降伏応力(低降伏点鋼ほど小さい)
芯材の有効長さ L
mm
芯材のうち降伏する区間の長さ
ヤング率 E
GPa
芯材鋼材の弾性係数(鋼は約205 GPa)
設計層間変形
mm
設計地震時にブレースに生じる軸方向変形
計算結果
降伏耐力 P_y (kN)
軸剛性 k (kN/mm)
降伏変位 δ_y (mm)
延性率(要求)μ
1サイクル消費エネルギー (kJ)
芯材ひずみ判定
BRB断面と履歴挙動 — 軸サイクルアニメーション

芯材・縁切り層・拘束材からなるBRBが、引張(伸び)と圧縮(縮み)を繰り返します。座屈しないため圧縮でも対称に降伏し、横の履歴ループを安定して描きます。

履歴ループ(力-変形)
1サイクル消費エネルギー vs 設計層間変形
理論・主要公式

$$P_y = A_{core}\,F_y, \qquad \delta_y = \frac{F_y\,L}{E}, \qquad \mu = \frac{\delta_{design}}{\delta_y}$$

降伏耐力 P_y、降伏変位 δ_y、延性率(要求)μ。A_core:芯材断面積、F_y:芯材の降伏応力、L:芯材の有効長さ、E:ヤング率、δ_design:設計層間変形。

$$k = \frac{A_{core}\,E}{L}, \qquad E_{cyc} = 4\,P_y\,(\delta_{design}-\delta_y)$$

軸剛性 k と、理想化した完全弾塑性履歴ループ1サイクルの消費エネルギー E_cyc。拘束材が座屈を防ぐため、芯材は引張・圧縮で対称に降伏し、E_cyc はループが囲む面積に等しい。

座屈拘束ブレースとは

🙋
「座屈拘束ブレース」って、建物の壁に斜めに入っている筋かいの一種ですよね?普通の筋かいと何が違うんですか?
🎓
いい質問だね。普通の鋼製ブレースって、引っ張る方向には強いんだけど、細長い棒だから押されると簡単に「座屈」してグニャッと曲がってしまうんだ。一度座屈すると圧縮側の踏ん張りが一気に効かなくなる。地震は建物を行ったり来たり揺らすから、引張と圧縮の両方が交互にくる。普通のブレースだと圧縮側だけ弱いという、ものすごく不公平な部材になってしまうんだよ。
🙋
なるほど…じゃあ座屈拘束ブレースは、その座屈をどうやって防いでいるんですか?
🎓
発想がうまくてね。「軸力を担う仕事」と「座屈を防ぐ仕事」を、別々の部品に分けたんだ。中心に細い鋼の芯材を入れて、これに軸力を負担させて降伏もさせる。その芯材を、鋼管にモルタルを詰めた拘束材でぐるりと包んで、横にふくらもうとするのを物理的に押さえ込む。しかも拘束材は芯材とわざと縁切り(アンボンド)してあって、軸力そのものは持たない。横から支えるだけの役だよ。
🙋
芯材が座屈しなくなると、何が嬉しいんですか?
🎓
座屈の心配がなくなると、芯材は「圧縮側でも引張側とまったく同じように」降伏できるようになる。すると力-変形のグラフ、つまり履歴ループが太くて左右対称な、まるで理想的な弾塑性ダンパーみたいな形になるんだ。右上のアニメーションで、引張と圧縮を繰り返しても同じ太さのループを描いているのが見えるだろう。普通のブレースだとここが片側だけ絞られた「ピンチング」した形になってしまう。
🙋
その太いループが大きいと、何がいいんでしょう?地震に強くなるんですか?
🎓
そのとおり。ループが囲む面積は、ブレースが熱に変えて捨てた地震エネルギーの量そのものなんだ。BRBが地震エネルギーをせっせと吸収してくれる分、柱や梁といった主架構に入るエネルギーが減って損傷が抑えられる。左のスライダーで設計層間変形を大きくすると、消費エネルギーがぐっと増えるのが分かるよ。BRBは建物の「地震エネルギー専用の吸収装置」として働くわけだね。
🙋
設計するとき、特に気をつけるべき数字はどれですか?
🎓
「芯材ひずみ」だね。設計地震で芯材がどれくらい伸び縮みするか、その割合だ。芯材を短くしたり大きく変形させたりするとひずみが増える。数パーセント以内なら鋼の粘りで十分耐えられるけど、3%を超えるような大きなひずみだと、少ない繰り返し回数で芯材が切れる「低サイクル疲労」が心配になる。実務では芯材の有効長さを十分に取って、ひずみを実用範囲に収めるのが基本だよ。

よくある質問

普通の鋼製ブレースは引張には強い一方、細長いために圧縮では低い荷重で座屈します。一度座屈すると圧縮抵抗が一気に低下し、履歴ループが大きく「絞られた(ピンチング)」非対称な形になり、エネルギー吸収がほとんどできなくなります。座屈拘束ブレース(BRB)は、軸力を負担する細い芯材を、座屈を防ぐ拘束材(鋼管+モルタル等)で横方向に支えることで、圧縮でも引張と同じように安定して降伏させます。その結果、太く対称で安定した履歴ループが得られ、地震エネルギーを繰り返し安定して吸収できます。
降伏耐力 P_y は芯材の断面積 A_core と芯材の降伏応力 F_y の積で求めます。P_y = A_core × F_y です。例えば A_core = 2500 mm²、F_y = 235 MPa なら P_y = 587,500 N ≒ 587.5 kN となります。BRB は座屈しないため、この降伏耐力は引張側でも圧縮側でもほぼ同じ値となり、設計が単純で見通しよくなります。拘束材は芯材から意図的に縁切り(アンボンド)されており、軸力そのものは負担しません。
BRB の性能で最も注視すべきは、設計地震時に芯材が受けるひずみ量です。芯材ひずみは設計層間変形を芯材の有効長さで割った値で、本ツールでは百分率で表示します。数パーセント以内であれば鋼材の延性に十分収まりますが、ひずみが過大になると芯材が少ない繰り返し回数で破断する低サイクル疲労が問題になります。一般に芯材ひずみが3%を超える設計は、繰り返し変形を受ける部材として疲労の観点から見直しが必要です。
1サイクルの消費エネルギーは、ブレースが ±設計層間変形まで1往復する際に履歴ループ(力-変形関係)が囲む面積で、ブレースが熱として散逸させた地震エネルギーを表します。理想化した完全弾塑性ループでは、消費エネルギーは 4×降伏耐力×(設計層間変形−降伏変位) で近似でき、本ツールは kJ で表示します。この面積が大きいほど建物に入った地震エネルギーを効率よく吸収でき、主架構の損傷を抑えられます。

実世界での応用

新築建物の制振(耐震)骨組:座屈拘束ブレースは、新築の鉄骨造・鉄筋コンクリート造の骨組に組み込み、地震エネルギーを集中的に吸収させる制振部材として広く使われます。柱・梁といった主架構を弾性に近い状態に保ちつつ、BRBに損傷を引き受けさせることで、大地震後も建物の機能を維持しやすくなります。学校・庁舎・病院など、地震後も使い続けたい建物で採用例が多い部材です。

既存建物の耐震補強:古い基準で建てられた建物に後から座屈拘束ブレースを増設し、耐震性能を引き上げる補強にも多用されます。普通の鋼ブレースで補強すると圧縮側で座屈し補強効果が片側に偏りますが、BRBなら引張・圧縮で対称に効くため、補強量を合理的に決められます。窓を塞がない開口付きフレームへの設置など、意匠との両立を図った納まりも実用化されています。

橋梁・産業施設の制震ブレース:高架橋や鉄塔、プラント架構など、繰り返し荷重を受ける構造物のブレースとしても用いられます。芯材が安定した弾塑性挙動を示すため、地震応答解析でモデル化しやすく、応答低減量を定量的に評価できるのも実務上の利点です。

制振設計・時刻歴応答解析の検討:詳細な非線形時刻歴応答解析を行う前に、本ツールのような単純化モデルで降伏耐力・剛性・履歴吸収エネルギーの見当をつけます。概算でブレースの分担エネルギーを把握しておくと、解析モデルの妥当性チェックや、ブレース本数・芯材寸法の初期設定が合理的に行えます。

よくある誤解と注意点

まず多い誤解が、「拘束材が軸力を負担している」という思い込みです。座屈拘束ブレースの拘束材(鋼管+モルタル等)は、芯材が横にふくらんで座屈するのを押さえる役目に徹しており、芯材とは縁切り(アンボンド)されていて軸力そのものは負担しません。降伏耐力 P_y を決めるのはあくまで芯材の断面積と降伏応力です。拘束材を太くしても降伏耐力は上がらず、上げたいなら芯材を見直す、という点を取り違えないようにしてください。

次に、「芯材ひずみを気にせず短い芯材で済ませる」こと。芯材を短くすると同じ設計層間変形でも芯材ひずみが大きくなり、低サイクル疲労で芯材が早期に破断する恐れがあります。本ツールの芯材ひずみ判定が「ひずみ過大」を示す設計は、繰り返し変形に対する寿命の観点から見直しが必要です。BRBは数十回規模の繰り返しに耐えることが期待される部材であり、ひずみは余裕をもって計画してください。

最後に、「BRBを入れれば剛性も自由に上がる」という誤解。軸剛性 k は芯材の断面積とヤング率に比例し、有効長さに反比例します。降伏耐力を上げようと芯材断面積を増やすと剛性も上がり、建物の固有周期や地震入力が変わります。耐力・剛性・履歴エネルギーは独立に決められるわけではなく、互いに連動します。BRBの設計は、これら三つのバランスと主架構との取り合いを見ながら、芯材寸法と有効長さを決めることが重要です。

使い方ガイド

  1. 芯材断面積(mm²)を100~5000の範囲で設定。一般的な角形鋼管BRBはA=1500~3000mm²
  2. 降伏応力(MPa)を235~390で入力。SS400で235MPa、SM490で325MPaを選択
  3. 芯材長さ(mm)を1000~3000で指定。座屈拘束長が実構造の柱間距離に対応
  4. ヤング係数(GPa)は通常200(鋼材)に固定。アルミニウム合金の場合70を設定
  5. シミュレーター計算開始で降伏耐力・軸剛性・1サイクル吸収エネルギーがリアルタイム表示

具体的な計算例

断面積A=2000mm²、降伏応力σ_y=325MPa、芯材長L=2000mm、E=200GPaの角形鋼管BRBの場合:降伏耐力P_y=325×2000÷1000=650kN、軸剛性k=200×2000÷2000=200kN/mm、降伏変位δ_y=650÷200=3.25mm。地震時に要求延性率μ=4を設定すると最大変位δ_max=13mm時、1サイクル消費エネルギーは約3.2kJと計算されます。

実務での注意点