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構造解析

塑性ヒンジと崩壊荷重シミュレーター

延性のある梁は、最初の断面が降伏しても即座には壊れません。塑性ヒンジが一つずつ形成され、構造が機構になったとき崩壊します。支持条件・荷重・全塑性モーメントを変えて、機構法による真の崩壊荷重と安全余裕をリアルタイムに確かめられるツールです。

パラメータ設定
梁の支持条件
必要な塑性ヒンジ数と崩壊機構を決める
荷重
中央集中荷重か等分布荷重かを選択
梁のスパン L
m
全塑性モーメント M_p
kN·m
断面が全断面降伏したときの抵抗モーメント
作用荷重
点荷重 kN または等分布 kN/m。崩壊荷重と比較する
計算結果
崩壊荷重
必要塑性ヒンジ数
崩壊機構
荷重係数 λ
弾性限界に対する余力
安全性の判定
崩壊機構アニメーション

梁が支持条件に応じた塑性ヒンジ(○印)で剛体セグメントに分かれ、機構として崩壊していく様子を繰り返し表示します。

崩壊荷重 vs 全塑性モーメント M_p
荷重-変位曲線(弾性 → ヒンジ形成 → 崩壊プラトー)
理論・主要公式

$$\text{単純: }P_c=\frac{4M_p}{L},\quad \text{プロップ付き: }P_c=\frac{6M_p}{L},\quad \text{両端固定: }P_c=\frac{8M_p}{L}$$

中央集中荷重に対する崩壊荷重 P_c。崩壊荷重は、崩壊機構の外力仮想仕事と各塑性ヒンジが吸収する内部仮想仕事を等置して求める。

$$\text{単純: }w_c=\frac{8M_p}{L^{2}},\quad \text{プロップ付き: }w_c=\frac{11.66\,M_p}{L^{2}},\quad \text{両端固定: }w_c=\frac{16M_p}{L^{2}}$$

等分布荷重に対する崩壊荷重 w_c(単位 kN/m)。M_p:全塑性モーメント、L:スパン。

$$\lambda=\frac{\text{崩壊荷重}}{\text{作用荷重}},\qquad W_{\text{ext}}=W_{\text{int}}=\sum M_p\,\theta_i$$

荷重係数 λ と機構法の基本式。外力仮想仕事 W_ext と内部仮想仕事 W_int(θ_i:各ヒンジの回転角)を等置する。

塑性ヒンジと崩壊荷重とは

🙋
鋼の梁って、断面のどこかが「降伏応力」に達したらもう壊れる、ってことじゃないんですか?
🎓
そこが面白いところでね。延性のある鋼材は、表面の繊維が降伏してもすぐには壊れない。荷重を増やすと降伏した領域が断面の内側へどんどん広がって、最後は断面まるごとが降伏する。このとき断面が伝えるモーメントが「全塑性モーメント M_p」で、ここまで来ると、その断面は M_p を伝えたまま自由にクルクル回れる「塑性ヒンジ」になるんだ。最初の降伏点で壊れるわけじゃない、というのが肝だよ。
🙋
クルクル回れるなら、もう支えてないってことですよね?じゃあそこで崩壊では?
🎓
単純支持の梁なら、その通り。ヒンジが1つできた瞬間に梁は折れ曲がる機構になって崩壊する。でも両端固定の梁を考えてみて。端を2か所もガッチリ固定してあるから、真ん中にヒンジが1つできても、まだ両端が踏ん張って荷重を支える。崩壊するには両端と中央、合計3つのヒンジがそろう必要があるんだ。左で支持条件を切り替えて、必要ヒンジ数のカードを見てごらん。
🙋
なるほど!ヒンジが増えるほど崩壊しにくい。じゃあ崩壊荷重そのものは、どうやって計算するんですか?
🎓
弾塑性の載荷履歴を最初から最後まで追うのは大変だけど、極限解析の「機構法」を使えば一発だ。崩壊する瞬間の機構の形を仮定して、外の荷重がする仮想仕事と、各塑性ヒンジで M_p が吸収する仮想仕事をイコールで結ぶ。これを解くと崩壊荷重が直接出る。たとえばプロップ付き片持ち梁の中央集中荷重なら Pc=6M_p/L。下の崩壊機構アニメーションが、まさにその仮定した機構の動きだよ。
🙋
荷重-変位曲線のグラフ、途中で何回かカクッと折れていますね。あれは何ですか?
🎓
あの「カクッ」が、塑性ヒンジが1つ生まれた瞬間なんだ。最初はまっすぐな弾性の直線。ヒンジが1個できると構造が少し柔らかくなって傾きが緩くなる。2個目、3個目と進むたびにさらに緩くなり、最後のヒンジができると傾きがゼロ=水平のプラトーになる。荷重がもう増えないのに変位だけが伸びる、これが崩壊だ。不静定構造ほどカクッの数が多くて、最初の降伏から崩壊まで余裕がある。それが冗長性の正体だよ。
🙋
「弾性限界に対する余力」というカードがありますが、これはその冗長性のことですか?
🎓
そうそう。単純支持はヒンジ1個で即崩壊だから、最初の降伏(弾性限界)と崩壊がほぼ同じ=余力は1.0。プロップ付きは2個、両端固定は3個ぶんの余裕があるから、それぞれ約1.33、約1.5の余力がある。設計で「降伏したらアウト」とだけ考えると、この冗長性ぶんの耐力をまるごと捨てることになる。だから塑性設計では崩壊荷重をきちんと評価するんだ。

よくある質問

塑性ヒンジとは、延性のある鋼材の断面が全塑性モーメント M_p に達し、断面全体が降伏して「それ以上モーメントが増えないまま自由に回転できる点」になった状態を指します。物理的なピンのようにモーメントが消えるのではなく、M_p を伝え続けながら回転するのが特徴です。荷重が増えると最も応力の高い断面から順に塑性ヒンジが形成され、十分な数がそろうと構造が機構(メカニズム)になって崩壊します。
機構法(仮想仕事法)では、塑性ヒンジで構成される崩壊機構を仮定し、外力がする仮想仕事と各ヒンジで M_p が吸収する内部仮想仕事を等置して崩壊荷重を直接求めます。例えば単純支持梁の中央集中荷重では Pc=4M_p/L、プロップ付き片持ち梁では Pc=6M_p/L、両端固定梁では Pc=8M_p/L です。弾塑性の全載荷履歴を追跡せずに崩壊荷重だけを得られるのが、極限解析の強みです。
静定構造(単純支持梁)は塑性ヒンジが1つできた瞬間に機構となり崩壊します。一方、不静定構造はヒンジが1つできても残りの拘束が荷重を支え続け、ヒンジが2つ・3つとそろって初めて崩壊します。プロップ付き片持ち梁は2ヒンジ、両端固定梁は3ヒンジを必要とします。この「最初の降伏から崩壊までの余裕」が冗長性であり、不静定構造の安全余力の源です。
荷重係数 λ は崩壊荷重を作用荷重で割った値で、いま構造が崩壊までどれだけ余裕を持つかを表します。λ≥1.5 なら崩壊に対して十分な安全余裕、1.0≤λ<1.5 は余裕が小さく要注意、λ<1.0 は作用荷重がすでに崩壊荷重を超えており崩壊します。設計では用途に応じた目標 λ(建築鋼骨では概ね 1.5〜2.0)を満たすよう、M_p やスパンを調整します。

実世界での応用

鋼構造建築の塑性設計:鉄骨ラーメン構造の梁・柱は、許容応力度設計だけでなく、塑性ヒンジを前提とした保有水平耐力の検討が行われます。大地震時に梁端へ意図的に塑性ヒンジを誘導し、エネルギーを吸収させながら崩壊機構を制御する「梁降伏型」設計はその典型です。本ツールが扱う梁機構の崩壊荷重は、その最も基本的な構成要素にあたります。

耐震・耐衝撃の余力評価:橋梁や工場架構では、設計荷重を超える地震・衝撃に対して構造がどこまで持ちこたえるかが問われます。弾性解析は最初の降伏点までしか答えませんが、極限解析の崩壊荷重は冗長性ぶんの余力を含めた「真の限界」を示します。荷重係数 λ は、その余力を一目で示す指標として使われます。

連続梁・多スパン構造の設計:連続梁では、支点上と支間中央に複数の塑性ヒンジが現れます。どの組み合わせのヒンジが最小の崩壊荷重を与えるか(支配的な崩壊機構)を機構法で探すのが設計の要点です。本ツールは単スパンの3つの典型ケースを通じて、その考え方の核心を体験できます。

非線形FEM解析の事前検討と検証:詳細なプッシュオーバー解析や弾塑性FEMを行う前に、機構法で崩壊荷重のオーダーを当たりづけできます。逆にFEM結果が機構法の上限値を大きく超えていれば、境界条件や材料モデルの誤りを疑うサニティチェックになります。極限解析は数値解析の「答え合わせ」としても有用です。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「断面が降伏した=構造が壊れた」という思い込みです。延性のある鋼材では、最初の降伏は崩壊の始まりではなく、むしろ余力の入口です。降伏した断面が塑性ヒンジになり、荷重をまだ降伏していない領域へ再分配しながら、十分な数のヒンジがそろって初めて崩壊します。弾性解析の「最初の降伏点」で設計を止めると、不静定構造では冗長性ぶんの耐力を丸ごと無視することになります。本ツールの「弾性限界に対する余力」はその差を示すための指標です。

次に、「機構法は常に安全側の答えを出す」という誤解。機構法(上界定理)は、仮定した崩壊機構が正しければ正解を、間違っていれば真の崩壊荷重より大きい値=危険側の値を返します。可能な崩壊機構をすべて調べ、その中で最小の崩壊荷重を採用しなければなりません。本ツールは単スパンの典型機構のみを扱うため正解を返しますが、実際の連続梁や骨組では「梁機構・節点機構・組合せ機構」を網羅的に検討する必要があります。

最後に、「崩壊荷重さえ満たせば設計は十分」ではないという点。極限解析は崩壊時の耐力だけを扱い、使用時のたわみ・座屈・繰り返し荷重による低サイクル疲労は別問題です。特に、塑性ヒンジが形成される領域では局部座屈や横座屈で M_p に達する前に耐力が落ちることがあり、断面のコンパクト性(幅厚比)の確認が前提になります。崩壊荷重は構造の限界耐力の一面に過ぎず、使用性・安定性・延性能力と合わせて評価すべきものです。

使い方ガイド

  1. スパン長(LspanRange: 2~10m)を設定し、延性梁の支持条件を選択する
  2. 全塑性モーメントMp(MpRange: 50~500 kNm)を鋼材の降伏応力とセクション係数から決定する。例:SS400鋼H形鋼で計算
  3. 集中荷重または分布荷重(appliedLoadRange: 10~100 kN)を入力し、機構法により崩壊荷重λと必要塑性ヒンジ数を自動計算する
  4. 崩壊機構図で塑性ヒンジ位置を確認し、安全性の判定結果(OK/NG)を評価する

具体的な計算例

両端固定梁、スパン6m、Mp=200 kNmの場合:等分布荷重50 kN/mを負荷すると、機構法により崩壊荷重λ=1.92が得られます。この時、中央と支点上部に2つの塑性ヒンジが形成され、弾性限界時の曲げモーメント(約156 kNm)に対して28%の余力が確保されます。支持条件を片持ち梁に変更すると、λ=1.35に低下し、安全余裕が減少することが明確に確認できます。

実務での注意点

  1. 連続梁の場合、スパン長の変動(1.5倍以上)があると塑性ヒンジの配置が大きく変わり、λ値が30%以上変動するため、各スパンを個別に検証する
  2. 全塑性モーメントは熱間圧延材の正確な断面係数Z(例:H-450×200×9×14でZ=1810cm³)に基づいて設定し、厚板の局部座屈を考慮する
  3. 崩壊荷重係数λ<1.5の場合は、鋼材グレードのアップグレード(SS400→SM490)またはセクション変更を検討する
  4. 部分安全係数γM=1.1を適用し、必要塑性モーメント≧λ×Melastic×γMを満たすことを確認する