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材料力学

ひずみゲージ ロゼット解析シミュレーター

3枚のひずみゲージを組み合わせた「ロゼット」の読みから、面内の完全なひずみ状態を解くツールです。各ゲージの読み εa・εb・εc を入力すると、εx・εy・γxy、主ひずみ、主方向、そしてフックの法則による主応力がリアルタイムで求まり、ひずみのモール円も描かれます。

パラメータ設定
ロゼットの種類
3枚のゲージの配置角度を切り替える
ゲージA の読み εa
μ
基準(0°)方向のゲージの読み(マイクロひずみ)
ゲージB の読み εb
μ
中間(45°または60°)方向のゲージの読み
ゲージC の読み εc
μ
第3(90°または120°)方向のゲージの読み
ヤング率 E
GPa
材料の弾性率。鋼で約200GPa
ポアソン比 ν
横方向の縮みの度合い。鋼で約0.3
計算結果
垂直ひずみ εx (μ)
垂直ひずみ εy (μ)
せん断ひずみ γxy (μ)
主ひずみ ε₁ (μ)
主ひずみ ε₂ (μ)
主応力 σ₁ (MPa)
ロゼット配置と主ひずみ方向

材料パッチ上の3枚のゲージ A/B/C を配置角度どおりに描き、解いた主ひずみ ε₁・ε₂ の軸を矢印で重ねます。パッチは主ひずみに合わせて誇張変形します。

ひずみのモール円
ひずみ成分(マイクロひずみ)
理論・主要公式

直角ロゼット(0°-45°-90°)の面内ひずみ:

$$\varepsilon_x=\varepsilon_a,\quad \varepsilon_y=\varepsilon_c,\quad \gamma_{xy}=2\varepsilon_b-\varepsilon_a-\varepsilon_c$$

εa・εb・εc:3枚のゲージの読み。εx・εy:垂直ひずみ、γxy:せん断ひずみ。

主ひずみ:

$$\varepsilon_{1,2}=\frac{\varepsilon_x+\varepsilon_y}{2}\pm\sqrt{\left(\frac{\varepsilon_x-\varepsilon_y}{2}\right)^2+\left(\frac{\gamma_{xy}}{2}\right)^2}$$

主方向は θp = ½·atan2(γxy, εx−εy)。デルタロゼットは 0°/60°/120° 配置を用い、εy=(2εb+2εc−εa)/3、γxy=2(εb−εc)/√3 となる。

フックの法則による主応力(平面応力):

$$\sigma_{1}=\frac{E}{1-\nu^{2}}(\varepsilon_1+\nu\varepsilon_2),\quad \sigma_{2}=\frac{E}{1-\nu^{2}}(\varepsilon_2+\nu\varepsilon_1)$$

E:ヤング率、ν:ポアソン比。ひずみはマイクロひずみ(×10⁻⁶)で計算する。

ひずみゲージ ロゼットとは

🙋
実験で部品にひずみゲージを貼るんですけど、なんで1枚じゃなくて3枚セットの「ロゼット」を使うんですか?1枚でひずみは測れますよね?
🎓
いい疑問だね。1枚のひずみゲージが測れるのは「そのゲージが伸び縮みした1方向のひずみ」だけなんだ。でも部品の表面の状態は、本当は εx・εy・γxy という3つの数字で決まっている。未知数が3つなら式も3本いる。だから角度を変えた3枚のゲージを同じ1点に貼って、3つの読みを集める。これがロゼットだよ。
🙋
なるほど。でも、もし主方向…つまり一番伸びてる向きが事前に分かってたら、その向きに1枚貼ればいいんじゃないですか?
🎓
そう、主方向が確実に分かっているなら、その向きと直角に2枚貼れば足りる。問題は「実物では主方向がほとんど分からない」こと。穴のまわりや溶接部、複雑な形状の部品だと、力の流れる向きは直感では当てられない。ロゼットを使えば向きを当てずに3枚貼るだけで、計算で主方向まで全部割り出せる。だから現場では『とりあえずロゼット』が定石なんだ。
🙋
左の「ロゼットの種類」に直角とデルタがありますね。どう使い分けるんですか?
🎓
直角ロゼットは 0°・45°・90° に並べたもので、εx=εa、εy=εc とそのまま読めて式がシンプル。x・y方向がだいたい想像つく場合に向くよ。デルタロゼットは 0°・60°・120° で3方向に均等。どっちを向いていても精度が落ちにくいから、主方向が全く読めないときに使う。種類を切り替えてみて。同じ読みでも εy と γxy の式が変わるのが分かるはずだ。
🙋
最終的に「主応力 σ₁」も出ますよね。ひずみゲージなのに、なんで応力が出せるんですか?
🎓
そこは大事なポイント。ひずみゲージが直接測っているのは、あくまで「ひずみ」だけ。応力はフックの法則で「換算」しているんだ。σ₁=E/(1−ν²)·(ε₁+ν·ε₂) のように、ヤング率 E とポアソン比 ν を使って主ひずみを主応力に変える。だから材料の E と ν を正しく入れないと、ひずみは正しくても応力の数字はズレる。左でν を動かすと σ₁ が変わるのを見てみて。
🙋
下の「ひずみのモール円」は何を見るためのものですか?
🎓
応力のモール円のひずみ版だよ。円の中心が平均ひずみ (εx+εy)/2、半径 R がせん断の効きを表す。円と横軸の交点が主ひずみ ε₁・ε₂ になる。点 (εx, γxy/2) からどれだけ円が傾いているかで、主軸がどれだけ回っているかも一目で分かる。数字の羅列より、円1つ見たほうがひずみ状態を直感的につかめるんだ。実験応力解析の現場で必ず出てくる道具だよ。

よくある質問

1枚のひずみゲージは「そのゲージが向いている1方向のひずみ」しか測れません。しかし一般の平面応力状態は εx・εy・γxy という3つの独立成分で決まります。未知数が3つあるので、方程式も3本必要です。そこで角度の異なる3枚のゲージを1点に貼り、3つの読みを得ます。これが「ロゼット」です。3つの読みを連立させて εx・εy・γxy を解き、そこから主ひずみ・主方向・主応力が一意に求まります。
ゲージの配置角度が違います。直角(矩形)ロゼットは 0°・45°・90° の3枚で、εx=εa、εy=εc、γxy=2εb−εa−εc と式が非常にシンプルです。x・y方向がだいたい分かっている部品に向きます。デルタロゼットは 0°・60°・120° の3枚で、3方向に均等に配置されるため、主方向が全く分からない場合でも特定方向に偏らず精度よく測れます。どちらも面内ひずみ状態を完全に決定でき、最終的な主ひずみ・主応力は一致します。
ひずみゲージが測るのはあくまで「ひずみ」です。応力は直接は測れません。そこで平面応力を仮定し、フックの法則で主ひずみから主応力に換算します。σ1=E/(1−ν²)·(ε1+ν·ε2)、σ2=E/(1−ν²)·(ε2+ν·ε1) です。E はヤング率、ν はポアソン比。ここで重要なのは、正しい応力を得るには材料の E と ν を正確に知っている必要がある点です。材料が分からなければ、ひずみは測れても応力には換算できません。
主方向は θp=½·atan2(γxy, εx−εy) で求めます。これは x 軸から主ひずみ ε1 の軸までの回転角です。atan2 を使うことで、通常の atan では区別できない象限まで含めて正しい角度が得られます。θp が正なら反時計回り、負なら時計回りに主軸が傾いていることを意味します。せん断ひずみ γxy がゼロなら θp=0 で、x・y 軸がそのまま主軸になります。

実世界での応用

機械部品の実機ひずみ計測:圧力容器、配管、回転軸、フレーム、ブラケットなど、実際に使われている部品の表面にロゼットを貼り、運転中のひずみを記録します。穴・段付き・溶接部のように応力集中が起きる場所では主方向が直感で読めないため、3枚で向きごと割り出せるロゼットが欠かせません。得られた主応力を材料の許容応力や疲労限度と比較し、安全性を評価します。

FEM解析の検証(実験との突き合わせ):有限元解析(FEM)が出した応力が本当に正しいかは、最終的には実測で確認します。供試体の代表点にロゼットを貼って試験し、計測した主ひずみ・主応力をFEMの同じ位置の結果と比較します。両者が一致すれば境界条件やメッシュが妥当だと裏付けられ、桁違いなら荷重・拘束の設定ミスを疑えます。本ツールのような手計算レベルの換算は、その突き合わせの基礎になります。

残留応力の測定(穴あけ法):溶接や機械加工で部品内部に残った残留応力は、ロゼットの中心に小さな穴をあけ、穴あけ前後のひずみ変化を3方向で読むことで推定します(ASTM E837 などの規格)。3ゲージの読みの差から解放された残留ひずみを逆算する手法で、ロゼット解析の応用例の代表格です。

構造ヘルスモニタリング:橋梁・クレーン・風力タービン・航空機構造などに常設のロゼットを貼り、長期間にわたって主ひずみの履歴を記録します。これにより想定外の荷重や疲労損傷の進行を早期に検知でき、点検計画や寿命評価に活用されます。多軸状態を扱える点が、1軸ゲージにはない強みです。

よくある誤解と注意点

まず最大の誤解が、「ゲージの読み εb がそのまま 45°方向の垂直ひずみだから、主ひずみもゲージのどれかに一致するはず」という思い込みです。εa・εb・εc はあくまで「各ゲージ方向の垂直ひずみ」であり、主ひずみ ε₁・ε₂ とは別物です。主ひずみはふつう、どのゲージ方向とも一致しません。本ツールで確認できるとおり、デフォルト値では εa=600 に対し ε₁≈612、ε₂≈−212 となり、ゲージの読みそのものとはズレます。「測った値=主ひずみ」と混同すると、危険な過小評価につながります。

次に、「直角ロゼットの γxy=2εb−εa−εc を、デルタロゼットにもそのまま使ってしまう」ミスです。面内ひずみを読みから復元する式は、ゲージの配置角度に完全に依存します。0°/45°/90° と 0°/60°/120° では式の係数がまったく違い、デルタロゼットでは εy=(2εb+2εc−εa)/3、γxy=2(εb−εc)/√3 を使わなければなりません。種類を取り違えると、同じ読みでも主ひずみ・主応力が大きくずれます。実験ではまず「貼ったロゼットがどの配置か」を必ず確認してください。

最後に、「ひずみゲージは応力を測っている」という言い回しの危うさです。ゲージが物理的に検知しているのはひずみ(伸び縮み)だけで、応力は E と ν を使った換算結果にすぎません。温度変化による見かけのひずみ(熱出力)、ゲージの貼り付け不良、横感度、材料の非線形・塑性域では、この換算が成り立たなくなります。特に降伏後はフックの法則自体が破れるため、本ツールの平面応力・線形弾性の前提(小ひずみ・降伏前)を外れる領域では、出てくる応力値を鵜呑みにしてはいけません。

使い方ガイド

  1. 45度ロゼット配置の3枚のひずみゲージ出力値を、εA、εB、εCに微ひずみ(μ)単位で入力する
  2. 材料のヤング率Eを入力する(例:鋼鉄200GPa、アルミニウム70GPa)
  3. 「計算実行」をクリックすると、面内ひずみテンソル(εx、εy、γxy)とモール円が自動生成される
  4. 主ひずみε₁、ε₂および主応力σ₁、σ₂がリアルタイム更新される

具体的な計算例

軟鋼製平板(E=210GPa、ポアソン比0.30)の機械加工面に45度ロゼット配置したゲージで測定:εA=480μ、εB=320μ、εC=200μの場合、計算結果はεx=480μ、εy=200μ、γxy=240μとなり、主ひずみはε₁=533μ、ε₂=147μ、主応力σ₁=120.2MPa、σ₂=17.5MPaが得られる。モール円の半径は応力集中度の判定に活用される。

実務での注意点