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構造解析

木造梁の設計シミュレーター

等分布荷重を受ける単純支持の木造梁を設計するツールです。梁の幅・せい・スパン・荷重・樹種を変えると、曲げ応力・せん断応力・たわみの3つの検定がリアルタイムで分かり、どの検定が設計を支配しているかを確かめながら安全な断面を探せます。

パラメータ設定
梁の幅 b
mm
梁のせい h
mm
梁の上下方向の寸法。曲げとたわみに最も効く
スパン L
m
支点間の距離
等分布荷重 w
kN/m
床や屋根からの単位長さあたりの荷重
樹種・等級
許容曲げ応力 f_b・許容せん断応力 f_v・ヤング率 E を自動設定
計算結果
最大曲げ応力 σ (MPa)
曲げ検定比 σ/f_b
最大せん断応力 τ (MPa)
せん断検定比 τ/f_v
最大たわみ δ (mm)
総合判定
木造梁モデル — 荷重とたわみアニメーション

単純支持の木造梁が等分布荷重を受けてたわむ様子です。上の矢印列が荷重、下の曲線がたわみ形。梁の色は支配的な検定比(緑→橙→赤)を表します。

最大曲げ応力 σ とスパン L の関係
最大たわみ δ と梁せい h の関係
理論・主要公式

$$\sigma=\frac{M}{Z},\qquad \tau=\frac{3V}{2bh},\qquad \delta=\frac{5wL^4}{384EI}$$

最大曲げ応力 σ、最大せん断応力 τ、最大たわみ δ。M:最大曲げモーメント、V:最大せん断力、Z:断面係数、I:断面二次モーメント、b:梁幅、h:梁せい、E:ヤング率。

$$M=\frac{wL^2}{8},\qquad V=\frac{wL}{2},\qquad Z=\frac{bh^2}{6},\qquad I=\frac{bh^3}{12}$$

等分布荷重 w を受ける単純支持梁の最大モーメント M とせん断力 V、矩形断面の断面諸量。

$$\frac{\sigma}{f_b}\le 1,\qquad \frac{\tau}{f_v}\le 1,\qquad \frac{\delta}{L/300}\le 1$$

設計は曲げ・せん断・たわみの3つの検定比がすべて1以下のときにのみ成立します。1つでも超えると梁断面の見直しが必要です。

木造梁の設計とは

🙋
木造の家で天井を見上げると太い「梁」が渡してありますよね。あの梁って、どうやって太さを決めているんですか?
🎓
いい質問だね。木造梁の設計は、ざっくり言うと「3つのチェックを全部パスさせる」作業なんだ。1つ目が曲げ応力——荷重で梁が反るとき、上側が縮んで下側が伸びる、その応力が木の許容値を超えないか。2つ目がせん断応力——梁が支点付近でズレ切れないか。3つ目がたわみ——梁がどれだけ下がるか。左のスライダーで荷重 w を上げてみて。3つの検定比が全部上がっていくのが見えるはずだよ。
🙋
3つもチェックするんですね。鉄骨だと曲げだけ見ればいいって聞いたことがあるんですが、木は違うんですか?
🎓
そこが木造梁のいちばん面白いところでね。木はヤング率——曲げにくさを表す値——が鋼の20分の1くらいしかない。だから曲げ応力的にはまだ余裕があるのに、梁がぐにゃっと下がりすぎる、ということが起きる。実際、木造梁の設計はたわみで決まることが本当に多いんだ。このツールでデフォルト条件のままスパン L を6mくらいまで伸ばしてみて。曲げ検定比よりたわみ検定比のほうが先に1に近づくのが分かるよ。
🙋
なるほど。じゃあたわみが厳しいときは、梁をどう変えればいいんですか?幅を広げる?それとも背を高くする?
🎓
圧倒的に「背を高くする」、つまり梁のせい h を大きくするのが効く。たわみは断面二次モーメント I に反比例して、I は h の3乗に比例する。だから h を1.26倍にするだけでたわみはほぼ半分。幅 b は1乗でしか効かないから、同じ木材量なら平たい梁より縦長の梁のほうがずっと有利なんだ。下の「最大たわみと梁せい」のグラフを見ると、h を増やしたときの急なカーブがよく分かるよ。だから天井の梁は横に薄く縦に高い、平たくない形をしているんだ。
🙋
せん断のほうはどういうときに問題になるんですか?あまり聞かない気がして。
🎓
木は繊維に沿った方向のせん断がすごく弱いんだ。スギだと許容せん断応力は0.6MPaしかなくて、曲げの10分の1以下。だから短くて太い梁——スパンが短いのに大きな荷重がかかる梁——では、曲げよりせん断が先に効くことがある。試しにスパン L を1.5mくらいまで短くして荷重 w を上げてみて。せん断検定比が曲げを追い抜くのが見えるはずだ。逆に長いスパンの梁ではせん断はほぼ余裕で、たわみと曲げの勝負になる。
🙋
樹種を「スギ」から「集成材」に変えると数字がガラッと変わりますね。同じ木なのにそんなに違うものですか?
🎓
違うんだよ。無等級のスギは節やばらつきがそのまま強度に響くから、許容曲げ応力は6.5MPaと控えめ。一方の集成材は、薄い板を選別して欠点を散らしながら接着して作るから、強度が高くて安定している——13.5MPa、スギの2倍以上だ。ヤング率も高いからたわみも小さくなる。大スパンの梁や、見た目を活かした化粧梁では集成材がよく使われる。ただし実際の設計では、ここに含水率や荷重がかかり続ける時間による低減も加わる。長期間かかる荷重には強度をフルには見込めない、というのも木材ならではの注意点だね。

よくある質問

木材はヤング率 E が鋼の約20分の1(スギで約7GPa、鋼で約205GPa)と低いため、同じ荷重でも大きくたわみます。曲げ応力やせん断応力が許容値内に収まっていても、たわみがスパンの300分の1(L/300)といった使用上の制限を超えてしまうことが多く、結果として「たわみ」が梁断面を決める支配ケースになります。本ツールは曲げ・せん断・たわみの3つの検定比を同時に表示し、どれが効いているかが一目で分かります。
断面係数 Z=bh²/6 はせい h の2乗、断面二次モーメント I=bh³/12 は h の3乗に比例します。一方で幅 b には1乗でしか効きません。つまり曲げ応力もたわみも、せい h を大きくするほうが圧倒的に効率的です。たわみは I に反比例するので、h を1.26倍にすればたわみはほぼ半分になります。同じ木材量で梁を強くしたいなら、平たい断面より縦長の断面にするのが原則です。ただしせいを大きくしすぎると横座屈の危険が出るため、別途横補剛の検討が必要です。
木材は繊維に平行な方向のせん断(水平せん断)が弱く、許容せん断応力はスギで0.6MPa、ベイマツで0.9MPa程度と曲げの10分の1以下しかありません。矩形断面のせん断応力は中立軸で最大となり τ=1.5V/(bh) で計算します。スパンが短く荷重が大きい梁、あるいは支点近くに集中荷重がかかる梁では、曲げよりも先にせん断が効くことがあります。本ツールでスパンを短くして荷重を上げると、せん断検定比が曲げを上回る様子を確認できます。
同じ「木」でも樹種・等級で強度は大きく異なります。本ツールのプリセットでは、スギ無等級材が許容曲げ応力6.5MPa、ベイマツ E120 が10.6MPa、集成材が13.5MPa です。集成材は小さな板(ラミナ)を選別・接着して作るため節などの欠点が分散され、無等級材より高く安定した強度が得られます。さらに実際の設計では、含水率や荷重継続時間(長期・短期)による低減係数も掛かります。長期荷重では強度を大きく見込めない点に注意が必要です。

実世界での応用

木造住宅の床梁・小屋梁:木造軸組工法の家では、床を支える床梁(はり)や屋根を支える小屋梁が、まさにこのツールが扱う「等分布荷重を受ける単純支持梁」です。床梁では人や家具による積載荷重と床自体の重さ、小屋梁では屋根材や積雪荷重を支えます。設計者はスパンと負担幅から梁にかかる等分布荷重を求め、曲げ・せん断・たわみの3検定を満たす断面(例:105×300、120×360 など)を選びます。

大スパンの集成材梁:体育館・店舗・ホールのように柱を減らして大きな空間を取りたい建物では、無等級材では強度・たわみともに足りず、集成材の大断面梁が使われます。集成材はラミナを積層するため断面のせいを自由に大きく取れ、長スパンでもたわみを L/300 以内に抑えられます。湾曲集成材を使えばアーチ状の屋根も実現できます。

木造の梁の増改築・補強検討:古い木造住宅のリフォームで間仕切り壁を撤去すると、それまで壁が支えていた荷重が梁に集中し、たわみが過大になることがあります。本ツールのような簡易計算で「既存梁の断面で新しいスパン・荷重に耐えられるか」を当たりづけし、足りなければ梁の追加・添え木・鋼板補強などの対策を検討します。

構造設計の概算と教育:詳細な構造計算ソフトや有限要素解析にかける前に、本ツールのような梁理論の手計算で梁断面の当たりをつけます。学生や若手設計者にとっては、「荷重を上げると3つの検定比がどう動くか」「樹種を変えると何が変わるか」を体感する教材として有用です。逆に解析ソフトの結果がこの概算と桁違いなら、入力や支持条件のミスを疑うサニティチェックにもなります。

よくある誤解と注意点

まず多いのが、「曲げ応力さえ許容値内なら梁はOK」という思い込みです。木造梁は曲げ・せん断・たわみの3つを独立にチェックし、最も厳しい1つで設計が決まります。木はヤング率が低いため、曲げ応力に大きな余裕があってもたわみが先に制限を超えることが非常に多く、たわみを無視した断面選定は床鳴り・建具の建て付け不良・天井の波打ちといった使用上のトラブルを招きます。本ツールが3つの検定比を並べて表示するのは、この「支配ケースの取り違え」を防ぐためです。

次に、「木材の許容応力は1つの固定値」という誤解。このツールのプリセット値は標準的な代表値ですが、実際の許容応力は荷重継続時間で大きく変わります。木材は荷重がかかり続けると徐々に強度が低下する「クリープ」を起こすため、構造設計では長期荷重(自重・常時の積載)には基準強度の小さい割合しか見込めず、短期荷重(地震・暴風)には大きな割合を見込みます。同じ梁でも長期と短期では許容応力が2倍近く違うことがあり、本ツールの単一の f_b・f_v はあくまで概算用の値である点に注意してください。さらに含水率が高いほど強度は下がります。

最後に、「縦長の梁ほど良い、せいは大きいほど安心」という単純化。確かに曲げもたわみもせい h を大きくするほど有利ですが、幅に対してせいが極端に大きい細長い梁は、荷重を受けたときに横方向へねじれて倒れる「横座屈(横倒れ座屈)」を起こす危険があります。本ツールが扱うのは横座屈が生じない前提の断面強度・たわみであり、実際の細長い梁では母屋・根太・火打ち材などで梁の上端を横方向に拘束(横補剛)する設計が別途必要です。せいを上げたら横補剛もセットで考える、と覚えておきましょう。

使い方ガイド

  1. 樹種を選択します。スギ・ヒノキ・カラマツなど構造用製材の基準強度が自動設定されます(スギ:曲げf_b=18 MPa、せん断f_v=1.5 MPa)
  2. 梁の断面寸法を入力します。梁幅(b)と梁せい(h)をmm単位で指定し、短辺×長辺の矩形断面を定義します
  3. スパン長L(mm)と等分布荷重w(kN/m)を入力し、「計算実行」をクリックすると最大曲げ応力・せん断応力・たわみが即座に算出されます
  4. 各検定比が1.0以下であれば構造上安全です。赤色表示の項目は改善が必要な箇所です

具体的な計算例

スギの梁(b=120 mm、h=240 mm、L=3500 mm)に等分布荷重w=2.5 kN/mが作用する場合:最大曲げ応力σ_max=M/Z=(2.5×3.5²/8)/(120×240²/6)≈8.4 MPa、検定比=8.4/18=0.47(合格)。最大せん断応力τ_max=1.5V/A=(1.5×2.5×3.5/2)/(120×240)≈0.45 MPa、検定比=0.45/1.5=0.30(合格)。最大たわみδ=5wL⁴/384EI=(5×2.5×3500⁴)/(384×7000×120×240⁴/12)≈12.3 mm(スパン比L/δ=285で許容範囲内)

実務での注意点