円管内層流(ハーゲン・ポアズイユ流)

カテゴリ: V&V・品質保証 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for pipe hagen poiseuille theory - technical simulation diagram
円管内層流(ハーゲン・ポアズイユ流)

理論:放物線の速度分布

概要

🙋

新しく導入したCFDソフトの設定が正しいか、簡単な問題で確かめたいです。何がいいですか?

🎓

円管の中の層流、ハーゲン・ポアズイユ流がおすすめだよ。十分に発達した層流なら、速度は壁で0、中心で平均流速の2倍の放物線になり、圧力損失も管摩擦係数も式で正確にわかる。形状が単純で、境界条件の設定、粘性の扱い、壁の近くの格子の影響をまとめて確かめられる。しかも『どこから助走区間が終わるか』まで式があるから、計算領域の長さの確認にも使えるんだ。

厳密解

$$ u(r) = 2U\left(1 - \frac{r^2}{R^2}\right), \qquad \Delta p = \frac{32\mu L U}{D^2}, \qquad f = \frac{64}{Re}, \qquad \tau_w = \frac{R}{2}\left(-\frac{dp}{dx}\right) $$

$U$ は断面平均の流速、$R$ は半径、$D$ は直径、$\mu$ は粘度、$Re = \rho U D/\mu$。壁のせん断応力は、管の一部分の力の釣り合い(圧力の力=壁の摩擦力)から直接決まる。

助走区間

$$ \frac{L_e}{D} \approx 0.05\,Re $$

入口から流れが十分に発達するまでの長さ。Re = 100なら直径の約5倍、1,000なら約50倍、2,000なら約100倍。検証で厳密解と比べるのは、この長さより下流の位置にする。

Coffee Break よもやま話

血管と水道管から生まれた法則

この流れの法則は、1839年にドイツの技術者ハーゲンが水道管の実験から、1840年代にフランスの医師ポアズイユが毛細管の中の血液の流れを調べる実験から、それぞれ独立に見つけた。流量が管の半径の4乗に比例するという強い依存性が特徴で、血管がわずかに細くなるだけで血流が大きく減る理由もこれで説明できる。粘度の単位『ポアズ』はポアズイユにちなむ。理論的な導出はその後、ナビエ–ストークス方程式の最も基本的な厳密解として整えられた。

計算例:放射方向の有限体積法

十分発達した流れの放射方向の式を有限体積法で解き、格子の数を5・10・20・40分割にしたときの誤差を求めた。

分割数中心速度の誤差壁せん断(流束から)壁せん断(2次式の当てはめ)
51.00%0(厳密)6.7%
100.25%0(厳密)3.3%
200.063%0(厳密)1.7%
400.016%0(厳密)0.83%
🙋

流束から取った壁のせん断応力は、5分割でも誤差0なんですか?

🎓

そう、有限体積法の『保存』の性質のおかげだ。各セルで流入と流出が釣り合うように解くから、全体を足し合わせると、壁の流束は駆動している圧力の力とちょうど釣り合う。だから格子が粗くても合計の摩擦力は正しい。一方、セルの速度の値に2次式を当てはめて壁での傾きを求めると、速度の誤差(格子幅の2乗)を格子幅で割ることになって、1次精度に落ちる。表の右の列が格子を半分にするたびに半分にしか減らないのはそのためだ。後処理で壁のせん断応力を取り出すときは、ソルバーが使った流束の値を使おう。

例2:圧力損失の検算

内径10 mmの管に水(20 ℃)を平均0.1 m/sで流すと、Re ≈ 1,000で層流。長さ1 mの圧力損失は32 Paで、管摩擦係数は0.064(= 64/Re)。助走区間は直径の約50倍(0.5 m)なので、CFDで比べるなら管の長さを1 m以上にし、出口に近い下流側で圧力の勾配を読む。

検証の進め方

  1. 入口に一様な流速、出口に圧力一定、壁にすべりなしを与える。または周期境界で十分発達した流れだけを解く。
  2. 助走区間より下流で、速度分布・圧力勾配・壁のせん断応力を厳密解と比べる。
  3. 3段階以上の格子で誤差の減り方を確かめる。
  4. 3次元の管では、断面の格子(O型の分割など)の違いでも結果が変わるので、断面の格子の品質も確認する。
Coffee Break よもやま話

「圧力損失が1割多く出る」

管の圧力損失を検証したら厳密解より1割ほど大きく出た——入口から出口までの全体の圧力差で比べていたのが原因、ということがよくある。入口の近くは速度分布が平らから放物線へ変わる助走区間で、発達した流れより圧力損失が大きい。Re = 1,000で長さ直径の100倍の管なら、半分が助走区間の影響を受けている。下流側の十分発達した区間の圧力勾配で比べれば、厳密解とよく合う。検証では『どこで何と比べるか』を解の前提条件と合わせることが大事だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
助走区間を含めて比較圧力損失を過大に評価発達した区間で比較
壁せん断をセル値の当てはめで1次精度に落ちるソルバーの流束を使う
格子1つで判断次数が確認できない3段階以上
Reが高すぎる乱流になり厳密解が使えないRe < 2,000程度で検証
管の長さが足りない発達した区間がない0.05 Re D より長く
🙋

ほかの検証用の問題も知りたいです。

🎓

管内流れの計算とダルシーとファニングの摩擦係数で管の圧力損失、リチャードソン外挿ツールで収束次数を試せるよ。ほかの厳密解・基準の問題はクエット流れ、キャビティ流れ、球の抗力、解析解のない問題の検証には製造解の方法が使える。

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