不確かさ伝播(Forward UQ)

カテゴリ: V&V・不確かさの定量化 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for uq propagation theory - technical simulation diagram
不確かさ伝播(Forward UQ)

理論:入力のばらつきを出力へ運ぶ

概要

🙋

解析の入力にはばらつきがあるのに、結果は1つの値しか出していません。どうやって幅を示せばいいですか?

🎓

それが不確かさの伝播、順方向のUQだよ。材料の特性や荷重、寸法のばらつきを確率分布で表して、それが結果にどれだけのばらつきを生むかを求める。簡単な方法は、各入力に対する結果の感度を求めて、1次近似で足し合わせるやり方(FOSM)。もう一つは、入力を乱数で何百回、何千回と振って、結果の分布をそのまま作るモンテカルロ法だ。どちらを使うかは、平均やばらつきを知りたいのか、許容値を超える確率を知りたいのかで変わる。

1次近似(FOSM)

$$ \sigma_y^2 \approx \sum_i \left(\frac{\partial y}{\partial x_i}\right)^2 \sigma_{x_i}^2, \qquad \delta = \frac{P L^3}{3 E I},\ \ I = \frac{b h^3}{12} \ \Rightarrow\ \left(\frac{\sigma_\delta}{\delta}\right)^2 \approx c_P^2 + c_E^2 + (3c_h)^2 $$

入力が独立なら、出力の分散は感度の2乗×入力の分散の和で近似できる。片持ちはりのたわみでは、荷重・ヤング率・板厚の変動係数 $c$ から、たわみの変動係数が求まる。板厚は3乗で効くので、係数が3倍になる。

モンテカルロ法

$$ \hat p = \frac{1}{N}\sum_{k=1}^{N} \mathbb{1}\left[\delta_k > \delta_{lim}\right], \qquad \mathrm{SE}(\hat p) = \sqrt{\frac{p(1-p)}{N}} $$

超過確率の推定値のばらつき(標準誤差)は、回数 $N$ の平方根に反比例する。確率が小さいほど、同じ相対精度を得るのに多くの回数が要る。

Coffee Break よもやま話

モンテカルロという名前

モンテカルロ法は、1940年代のアメリカのロスアラモス研究所で、ウラムとフォン・ノイマンらが中性子の拡散を計算するために考えた。ウラムは病気の療養中にトランプの一人遊びの成功確率を考え、式で解くより何度も試すほうが早いと気づいたという。名前はウラムのおじが通ったというモナコのカジノにちなむ。初期の電子計算機ENIACで実行され、いまでは不確かさの伝播のほか、放射線の輸送、金融、統計物理などで広く使われている。

計算例:片持ちはりのたわみ

長さ1 m、幅50 mmの片持ちはり。荷重500 N(変動係数10%)、ヤング率200 GPa(5%)、板厚20 mm(2%)をいずれも正規分布とし、先端のたわみ(公称25.0 mm)と、許容値30 mmを超える確率を求めた。

方法平均標準偏差30 mmを超える確率
1次近似(FOSM)25.00 mm3.17 mm5.75%
モンテカルロ法(100万回)25.12 mm3.20 mm6.91%

分散への寄与は荷重62%、板厚22%、ヤング率16%。板厚は変動係数が2%と小さくても、3乗で効くため2番目に大きい。

🙋

標準偏差はほぼ同じなのに、超える確率は2割も違うんですね。

🎓

たわみは板厚の3乗やヤング率に反比例するから、分布が右に少し長く伸びた形(ゆがみ0.25)になる。1次近似は正規分布を仮定するので、右の裾を短く見積もってしまうんだ。平均も0.5%ずれている。ばらつきの大きさを知るには1次近似で十分でも、壊れる確率のような裾の値を知るには、モンテカルロ法やもっと高次の方法が要る。特に確率が1%より小さいときは差が大きくなりやすい。

例2:サンプル数とばらつき

同じ計算を200回くり返し、推定値のばらつき(1σ)を求めた。

回数標準偏差の推定(MC)超過確率(MC)超過確率(LHS)
1003.19 ± 0.23 mm7.2 ± 2.4%6.9 ± 1.9%
1,0003.20 ± 0.07 mm6.9 ± 0.8%7.0 ± 0.7%
10,0003.20 ± 0.02 mm6.9 ± 0.27%7.0 ± 0.20%

解析の進め方

  1. ばらつく入力を選び、分布の形と大きさを試験データや規格から決める。
  2. 1次近似で感度と分散への寄与を求め、重要な入力を絞り込む。
  3. 超過確率などの裾が必要なら、モンテカルロ法やラテン超方格法で分布を作る。
  4. 解析が重いときは、代理モデル(多項式カオス、クリギング)を作ってから大量に評価する。
  5. 推定値のばらつきも報告する(回数による誤差)。
Coffee Break よもやま話

「100回で十分と思った」

部品の強度を100回のモンテカルロ計算で評価し、破損確率は0%と報告した——という例がある。ところが1万回で計算し直すと、確率は0.3%だった。100回では、0.3%の事象は平均0.3回しか起きないので、0回になるのが普通だ。回数で割り算した確率の推定は、事象が数十回起きるくらいの回数がないと信用できない。小さな確率を扱うなら、回数を増やすか、重要度サンプリングのような工夫が要る。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
1次近似で裾の確率を求める確率を過小評価モンテカルロ法などで確認
回数が少ない小さな確率が0になる事象が数十回起きる回数に
入力の相関を無視ばらつきを誤る相関を入れてサンプリング
分布の形を根拠なく決める裾の確率が大きく変わるデータから分布を選ぶ
推定値の誤差を報告しない結果を過信する信頼区間を示す
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