不確かさ伝播(Forward UQ)
理論:入力のばらつきを出力へ運ぶ
概要
解析の入力にはばらつきがあるのに、結果は1つの値しか出していません。どうやって幅を示せばいいですか?
それが不確かさの伝播、順方向のUQだよ。材料の特性や荷重、寸法のばらつきを確率分布で表して、それが結果にどれだけのばらつきを生むかを求める。簡単な方法は、各入力に対する結果の感度を求めて、1次近似で足し合わせるやり方(FOSM)。もう一つは、入力を乱数で何百回、何千回と振って、結果の分布をそのまま作るモンテカルロ法だ。どちらを使うかは、平均やばらつきを知りたいのか、許容値を超える確率を知りたいのかで変わる。
1次近似(FOSM)
入力が独立なら、出力の分散は感度の2乗×入力の分散の和で近似できる。片持ちはりのたわみでは、荷重・ヤング率・板厚の変動係数 $c$ から、たわみの変動係数が求まる。板厚は3乗で効くので、係数が3倍になる。
モンテカルロ法
超過確率の推定値のばらつき(標準誤差)は、回数 $N$ の平方根に反比例する。確率が小さいほど、同じ相対精度を得るのに多くの回数が要る。
モンテカルロという名前
モンテカルロ法は、1940年代のアメリカのロスアラモス研究所で、ウラムとフォン・ノイマンらが中性子の拡散を計算するために考えた。ウラムは病気の療養中にトランプの一人遊びの成功確率を考え、式で解くより何度も試すほうが早いと気づいたという。名前はウラムのおじが通ったというモナコのカジノにちなむ。初期の電子計算機ENIACで実行され、いまでは不確かさの伝播のほか、放射線の輸送、金融、統計物理などで広く使われている。
計算例:片持ちはりのたわみ
長さ1 m、幅50 mmの片持ちはり。荷重500 N(変動係数10%)、ヤング率200 GPa(5%)、板厚20 mm(2%)をいずれも正規分布とし、先端のたわみ(公称25.0 mm)と、許容値30 mmを超える確率を求めた。
| 方法 | 平均 | 標準偏差 | 30 mmを超える確率 |
|---|---|---|---|
| 1次近似(FOSM) | 25.00 mm | 3.17 mm | 5.75% |
| モンテカルロ法(100万回) | 25.12 mm | 3.20 mm | 6.91% |
分散への寄与は荷重62%、板厚22%、ヤング率16%。板厚は変動係数が2%と小さくても、3乗で効くため2番目に大きい。
標準偏差はほぼ同じなのに、超える確率は2割も違うんですね。
たわみは板厚の3乗やヤング率に反比例するから、分布が右に少し長く伸びた形(ゆがみ0.25)になる。1次近似は正規分布を仮定するので、右の裾を短く見積もってしまうんだ。平均も0.5%ずれている。ばらつきの大きさを知るには1次近似で十分でも、壊れる確率のような裾の値を知るには、モンテカルロ法やもっと高次の方法が要る。特に確率が1%より小さいときは差が大きくなりやすい。
例2:サンプル数とばらつき
同じ計算を200回くり返し、推定値のばらつき(1σ)を求めた。
| 回数 | 標準偏差の推定(MC) | 超過確率(MC) | 超過確率(LHS) |
|---|---|---|---|
| 100 | 3.19 ± 0.23 mm | 7.2 ± 2.4% | 6.9 ± 1.9% |
| 1,000 | 3.20 ± 0.07 mm | 6.9 ± 0.8% | 7.0 ± 0.7% |
| 10,000 | 3.20 ± 0.02 mm | 6.9 ± 0.27% | 7.0 ± 0.20% |
解析の進め方
- ばらつく入力を選び、分布の形と大きさを試験データや規格から決める。
- 1次近似で感度と分散への寄与を求め、重要な入力を絞り込む。
- 超過確率などの裾が必要なら、モンテカルロ法やラテン超方格法で分布を作る。
- 解析が重いときは、代理モデル(多項式カオス、クリギング)を作ってから大量に評価する。
- 推定値のばらつきも報告する(回数による誤差)。
「100回で十分と思った」
部品の強度を100回のモンテカルロ計算で評価し、破損確率は0%と報告した——という例がある。ところが1万回で計算し直すと、確率は0.3%だった。100回では、0.3%の事象は平均0.3回しか起きないので、0回になるのが普通だ。回数で割り算した確率の推定は、事象が数十回起きるくらいの回数がないと信用できない。小さな確率を扱うなら、回数を増やすか、重要度サンプリングのような工夫が要る。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 1次近似で裾の確率を求める | 確率を過小評価 | モンテカルロ法などで確認 |
| 回数が少ない | 小さな確率が0になる | 事象が数十回起きる回数に |
| 入力の相関を無視 | ばらつきを誤る | 相関を入れてサンプリング |
| 分布の形を根拠なく決める | 裾の確率が大きく変わる | データから分布を選ぶ |
| 推定値の誤差を報告しない | 結果を過信する | 信頼区間を示す |
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不確かさの伝播の計算とモンテカルロ統計のシミュレーターで試せるよ。関連する方法はラテン超方格法、Sobol感度解析、多項式カオス展開、クリギング代理モデル、不確かさの種類は認識論的・偶然的不確かさが参考になる。
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