ダクト音響解析
理論:ダクトの中を伝わる音
概要
空調のダクトから出る送風機の騒音を減らしたいです。どこから解析すればいいですか?
まず、対象の周波数でダクトの中の音がどう伝わるかを確かめよう。周波数が低ければ、音は断面で一様な平面波としてダクトに沿って進むから、1次元の伝達マトリクスで簡単に解析できる。高くなると断面方向にも音圧の分布ができる高次のモードが伝わり始め、3次元の解析が必要になる。その境目がカットオン周波数だ。そのうえで、内張りの吸音材で広い周波数を少しずつ減らすのか、共鳴を使って特定の周波数を大きく減らすのかを選ぶんだよ。
カットオン周波数と吸音ダクト
$c$ は音速、$a$ は長方形の長い辺、$D$ は直径。吸音ダクトのサビンの式で、$\alpha$ は吸音率、$P$ は内張りした周長、$S$ は断面積。細いダクトほど $P/S$ が大きく、よく減衰する。
サイドブランチ(1/4波長管)
閉じた枝管の長さが1/4波長になる周波数で、枝管の入り口の音圧が0になり、音が下流へ伝わらない。$S_b$ は枝管の断面積、$\delta_{end}$ は入り口の端部補正(開口の少し外側まで空気が一緒に動く分)。
オルガンのパイプと消音器
管の中の音の共鳴は、パイプオルガンや管楽器を通して古くから知られていた。管の端では音が管の口よりも少し外まで振動しているため、管の実際の長さより少し長い管として鳴る。この『端部補正』は、19世紀にレイリー卿が理論的に求めた。20世紀に入り、自動車のマフラーや空調のダクトで騒音を減らす必要が高まると、同じ原理を逆に使い、管の共鳴で特定の音を打ち消す消音器が作られるようになった。
計算例
例1:平面波として扱える範囲
| ダクト | カットオン周波数 |
|---|---|
| 600 × 300 mm | 286 Hz |
| 400 × 200 mm | 429 Hz |
| 1,000 × 500 mm | 172 Hz |
| 直径150 mm | 1,340 Hz |
| 直径300 mm | 670 Hz |
| 直径600 mm | 335 Hz |
例2:吸音ダクトの減衰(600×300 mm、4面)
| 吸音率 | 0.3 | 0.5 | 0.7 | 0.9 |
|---|---|---|---|---|
| 減衰 | 1.9 dB/m | 4.0 dB/m | 6.4 dB/m | 9.1 dB/m |
例3:125 Hzに合わせたサイドブランチ
直径300 mmのダクトに、直径150 mmの閉じた枝管をつけた。端部補正なしで長さを c/(4f) = 0.686 m にした場合の透過損失:
| 周波数 | 100 Hz | 115 Hz | 120 Hz | 125 Hz | 130 Hz | 135 Hz | 150 Hz | 250 Hz |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 透過損失 | 0.6 dB | 3.0 dB | 6.9 dB | 理論上無限大 | 6.9 dB | 3.0 dB | 0.6 dB | 0.0 dB |
125 Hzでは無限大に効くのに、少し外れるとほとんど効かないんですね。
10 dB以上効くのは121.7〜128.3 Hzの6.6 Hzしかない。実際には空気の粘性などの損失で、ピークも20〜30 dB程度に抑えられる。そして一番危ないのが端部補正だ。枝管の入り口では、空気が開口の少し外まで一緒に動くから、枝管は約45 mm長いものとして共鳴する。これを忘れると共鳴は117 Hzにずれ、125 Hzでの減音はわずか3.9 dBになる。正しくは0.641 mに短く作る。送風機の回転数が変わって音の周波数が動く場合は、狭い帯域の共鳴型より、吸音型と組み合わせるのが安全だよ。
解析の進め方
- 音源(送風機の翼通過周波数など)の周波数と大きさを把握する。
- カットオン周波数と比べ、1次元の伝達マトリクスで足りるか、3次元の解析が要るかを決める。
- 曲がり、分岐、断面の変化、出口の放射を含めて全体の伝達を組み立てる。
- 吸音・共鳴の対策を入れ、端部補正や流れの影響を含めて確かめる。
- 流れがある場合は、消音器自体が発生する気流音も確かめる。
「低い音だけ消えない」
会議室の空調の吹き出し口から、低いうなり音が聞こえるという苦情があった。ダクトには吸音材の内張りが十分に入っていたが、音の周波数は約80 Hzで、吸音材は低い周波数ではほとんど効かない。しかもダクトの出口は低い周波数の音をよく反射するので、ダクトの中で定在波ができていた。送風機の翼通過周波数に合わせたサイドブランチを、端部補正を入れた長さで追加したところ、うなりは大きく下がった。低い周波数には共鳴型、高い周波数には吸音型という使い分けが基本だ。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 端部補正を忘れる | 共鳴がずれて効かない | 補正を入れて長さを決める |
| カットオンより上を1次元で | 高次モードを見落とす | 3次元の解析 |
| 吸音材で低音を消そうとする | ほとんど効かない | 共鳴型を併用 |
| 出口の反射を無視 | 定在波を見落とす | 出口の放射インピーダンス |
| 気流の影響を無視 | 消音器が音を出す | 気流音を評価 |
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