ダクト音響解析

カテゴリ: 音響連成 | 2026-10-01 改稿

理論:ダクトの中を伝わる音

概要

🙋

空調のダクトから出る送風機の騒音を減らしたいです。どこから解析すればいいですか?

🎓

まず、対象の周波数でダクトの中の音がどう伝わるかを確かめよう。周波数が低ければ、音は断面で一様な平面波としてダクトに沿って進むから、1次元の伝達マトリクスで簡単に解析できる。高くなると断面方向にも音圧の分布ができる高次のモードが伝わり始め、3次元の解析が必要になる。その境目がカットオン周波数だ。そのうえで、内張りの吸音材で広い周波数を少しずつ減らすのか、共鳴を使って特定の周波数を大きく減らすのかを選ぶんだよ。

カットオン周波数と吸音ダクト

$$ f_{c,rect} = \frac{c}{2a}, \qquad f_{c,circ} = \frac{1.841\,c}{\pi D}, \qquad \Delta L_{lined} \approx 1.05\,\alpha^{1.4}\,\frac{P}{S}\ \ \text{dB/m} $$

$c$ は音速、$a$ は長方形の長い辺、$D$ は直径。吸音ダクトのサビンの式で、$\alpha$ は吸音率、$P$ は内張りした周長、$S$ は断面積。細いダクトほど $P/S$ が大きく、よく減衰する。

サイドブランチ(1/4波長管)

$$ TL = 10\log_{10}\left[1 + \left(\frac{S_b}{2S}\tan kL_b\right)^2\right], \qquad L_b = \frac{c}{4f_0} - \delta_{end} $$

閉じた枝管の長さが1/4波長になる周波数で、枝管の入り口の音圧が0になり、音が下流へ伝わらない。$S_b$ は枝管の断面積、$\delta_{end}$ は入り口の端部補正(開口の少し外側まで空気が一緒に動く分)。

Coffee Break よもやま話

オルガンのパイプと消音器

管の中の音の共鳴は、パイプオルガンや管楽器を通して古くから知られていた。管の端では音が管の口よりも少し外まで振動しているため、管の実際の長さより少し長い管として鳴る。この『端部補正』は、19世紀にレイリー卿が理論的に求めた。20世紀に入り、自動車のマフラーや空調のダクトで騒音を減らす必要が高まると、同じ原理を逆に使い、管の共鳴で特定の音を打ち消す消音器が作られるようになった。

計算例

例1:平面波として扱える範囲

ダクトカットオン周波数
600 × 300 mm286 Hz
400 × 200 mm429 Hz
1,000 × 500 mm172 Hz
直径150 mm1,340 Hz
直径300 mm670 Hz
直径600 mm335 Hz

例2:吸音ダクトの減衰(600×300 mm、4面)

吸音率0.30.50.70.9
減衰1.9 dB/m4.0 dB/m6.4 dB/m9.1 dB/m

例3:125 Hzに合わせたサイドブランチ

直径300 mmのダクトに、直径150 mmの閉じた枝管をつけた。端部補正なしで長さを c/(4f) = 0.686 m にした場合の透過損失:

周波数100 Hz115 Hz120 Hz125 Hz130 Hz135 Hz150 Hz250 Hz
透過損失0.6 dB3.0 dB6.9 dB理論上無限大6.9 dB3.0 dB0.6 dB0.0 dB
🙋

125 Hzでは無限大に効くのに、少し外れるとほとんど効かないんですね。

🎓

10 dB以上効くのは121.7〜128.3 Hzの6.6 Hzしかない。実際には空気の粘性などの損失で、ピークも20〜30 dB程度に抑えられる。そして一番危ないのが端部補正だ。枝管の入り口では、空気が開口の少し外まで一緒に動くから、枝管は約45 mm長いものとして共鳴する。これを忘れると共鳴は117 Hzにずれ、125 Hzでの減音はわずか3.9 dBになる。正しくは0.641 mに短く作る。送風機の回転数が変わって音の周波数が動く場合は、狭い帯域の共鳴型より、吸音型と組み合わせるのが安全だよ。

解析の進め方

  1. 音源(送風機の翼通過周波数など)の周波数と大きさを把握する。
  2. カットオン周波数と比べ、1次元の伝達マトリクスで足りるか、3次元の解析が要るかを決める。
  3. 曲がり、分岐、断面の変化、出口の放射を含めて全体の伝達を組み立てる。
  4. 吸音・共鳴の対策を入れ、端部補正や流れの影響を含めて確かめる。
  5. 流れがある場合は、消音器自体が発生する気流音も確かめる。
Coffee Break よもやま話

「低い音だけ消えない」

会議室の空調の吹き出し口から、低いうなり音が聞こえるという苦情があった。ダクトには吸音材の内張りが十分に入っていたが、音の周波数は約80 Hzで、吸音材は低い周波数ではほとんど効かない。しかもダクトの出口は低い周波数の音をよく反射するので、ダクトの中で定在波ができていた。送風機の翼通過周波数に合わせたサイドブランチを、端部補正を入れた長さで追加したところ、うなりは大きく下がった。低い周波数には共鳴型、高い周波数には吸音型という使い分けが基本だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
端部補正を忘れる共鳴がずれて効かない補正を入れて長さを決める
カットオンより上を1次元で高次モードを見落とす3次元の解析
吸音材で低音を消そうとするほとんど効かない共鳴型を併用
出口の反射を無視定在波を見落とす出口の放射インピーダンス
気流の影響を無視消音器が音を出す気流音を評価
🙋

関連する計算を試したいです。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

構造解析電磁界解析熱解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0