RF加熱シミュレーション
理論:電極の間の電界で内部から温める
概要
RF加熱とマイクロ波加熱は、何が違うんですか?
どちらも材料の誘電損失で熱を出すが、周波数と装置の形が違う。RF加熱は27 MHzなどの低い周波数を、平行な2枚の電極の間にかける。波長が11 mと装置よりずっと長いので、電極の間はコンデンサのように一様な電界になり、厚い材料でも奥まで均一に温まる。マイクロ波は2.45 GHzで波長が12 cmしかなく、庫内に定在波ができ、水分の多い材料では表面から数cmで弱まる。RF加熱では電界は電圧を電極の間隔で割るだけで見積もれるが、材料と電極のすき間や厚さのむらが電界を大きく変えるので、そこを解析で押さえる。
発熱と電界
f = 27.12 MHz、ε'' は誘電損失率、V は電極間の電圧(実効値)、d は電極の間隔。最後の式は、厚さ t_mat の材料と厚さ t_air の空気が直列に並んだときの材料中の電界。
高周波溶着と合板
高周波の誘電加熱は、1930年代から40年代にかけて工業的に使われ始め、第二次世界大戦中には航空機用の合板の接着を短時間で硬化させるのに使われた。戦後は塩化ビニルのシートを高周波で溶かしてつなぐ高周波ウェルダーが普及し、レインコートや医療用のバッグ、文具の製造に広く使われている。ポリエチレンが高周波で溶着できないのは、損失率がとても小さく、ほとんど発熱しないからだ。
計算例
例1:材料ごとの発熱(27.12 MHz、5 kV、電極間50 mm、電界100 kV/m)
| 材料 | ε′ | ε″ | 発熱密度 | 温度上昇速度 | 浸透深さ |
|---|---|---|---|---|---|
| 湿った木材 | 4 | 0.5 | 7.5 MW/m³ | 8.9 K/s | 7.1 m |
| 塩化ビニル | 3.0 | 0.15 | 2.3 MW/m³ | 1.6 K/s | 20 m |
| ポリエチレン | 2.3 | 0.0005 | 7.5 kW/m³ | 0.003 K/s | 非常に深い |
同じ木材でも2.45 GHzのマイクロ波では浸透深さは78 mm。塩化ビニルとポリエチレンの発熱の比は300倍。誘電率は代表的な値。
例2:空気のすき間の影響(電極間50 mm、木材 ε′ = 4)
| 空気のすき間 | 木材中の電界 | 電界の割合 | 発熱の割合 |
|---|---|---|---|
| 0 mm | 100 kV/m | 100% | 100% |
| 1 mm | 94.3 kV/m | 94% | 89% |
| 2 mm | 89.3 kV/m | 89% | 80% |
| 5 mm | 76.9 kV/m | 77% | 59% |
2 mmのすき間でも、発熱が2割も減ってしまうんですね。
木材の誘電率は空気の4倍あるので、同じ厚さなら空気のほうが4倍の電圧を受け持つ。2 mmの空気は、木材にすると8 mm分の電圧を取るのと同じだ。しかも発熱は電界の2乗に比例するので、電界の1割の低下が発熱の2割の低下になる。実際の木材は厚さや反りにばらつきがあり、電極に触れているところと浮いているところで発熱が変わって、加熱のむらや焦げの原因になる。さらに、湿った部分ほど損失率が大きくよく温まり、乾くと損失率が下がるので、自然にむらをならす働きもある。電界と温度、水分の連成で、こうした効果を予測するのがRF加熱のシミュレーションだ。
シミュレーションの進め方
- 材料の誘電率(ε′、ε″)を、周波数・温度・水分の関数として用意する。
- 電極・材料・すき間を含めて準静電界(または周波数領域)で電界を解く。
- 発熱を熱源として、温度と(必要なら)水分の移動を解く。
- 温度と水分で誘電率を更新し、電界と熱を繰り返し解く。
- 電極の端の電界集中と、材料の角の過熱を確認する。
「端だけ焦げた接着」
ある木材の高周波接着の工程で、板の端だけが焦げ、中央は接着剤が十分に硬化しない不具合があった。電界の解析を行うと、電極が板より少し大きく、電極の端の近くで電界が集中していた。さらに板の中央がわずかに反って電極から浮き、空気のすき間で中央の電界が下がっていた。電極の大きさを板に合わせ、加圧して反りを抑えると、温度のむらが小さくなり不具合はなくなった。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| すき間を無視 | 発熱を過大評価 | すき間を含めて解く |
| 誘電率を一定にする | 乾燥の進行を誤る | 水分・温度の関数 |
| 電極の端の集中を見逃す | 端の焦げ | 電極寸法を合わせる |
| ピーク電圧と実効値の混同 | 発熱が2倍ずれる | 実効値で計算 |
| マイクロ波の感覚で考える | 浸透深さを誤解 | 準静電界で扱う |
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