変圧器等価回路

カテゴリ: 電磁界・変圧器 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for transformer equivalent circuit theory - technical simulation diagram
変圧器等価回路

理論:2つの試験で回路が決まる

概要

🙋

変圧器の等価回路は教科書で見たことがあります。でも実際の値はどうやって決めるんですか?

🎓

2つの簡単な試験で決まる。無負荷試験では二次側を開いたまま定格電圧をかける。電流は小さいので巻線の損失はほとんどなく、測った電力はほぼ鉄損だ。短絡試験では二次側を短絡して、定格電流が流れる低い電圧をかける。電圧が低いので鉄損はほとんどなく、測った電力はほぼ銅損だ。こうして鉄心の回路と巻線の回路を分けて求められる。50 kVAの配電用変圧器で、定数を出して電圧変動率と効率まで計算しよう。

試験から定数を求める式

$$ R_c = \frac{V_0^2}{P_0},\qquad X_m = \frac{V_0^2}{\sqrt{(V_0 I_0)^2 - P_0^2}} $$
$$ R_{eq} = \frac{P_{sc}}{I_{sc}^2},\qquad X_{eq} = \sqrt{\left(\frac{V_{sc}}{I_{sc}}\right)^2 - R_{eq}^2} $$

無負荷試験の値は測った側(ここでは低圧側)、短絡試験の値は測った側(高圧側)の値になる。反対側へ換算するときは巻数比の2乗をかける。

電圧変動率と効率

$$ \varepsilon \approx p\cos\theta + q\sin\theta,\qquad \eta = \frac{x S\cos\theta}{x S\cos\theta + P_0 + x^2 P_{cu}},\quad x_{\eta\max} = \sqrt{\frac{P_0}{P_{cu}}} $$

$p, q$ は抵抗とリアクタンスの百分率降下、$x$ は負荷率、$P_0$ は鉄損、$P_{cu}$ は定格時の銅損。遅れ力率ではリアクタンスの降下が加わって電圧が下がり、進み力率では打ち消しあって電圧が上がることもある。

Coffee Break よもやま話

交流送電を可能にした変圧器

実用的な変圧器は、1885年にハンガリーのガンツ社の技術者ツィペルノウスキー、ブラーティ、デーリが作った閉じた鉄心の変圧器が始まりとされる。同じ頃アメリカではスタンレーがウェスティングハウスのために変圧器を改良し、1886年に交流の配電を実演した。電圧を上げて遠くへ送り、使う場所で下げる——この仕組みがエジソンの直流方式との『電流戦争』で交流を勝たせた。等価回路という考え方は、その後の設計と試験を支える共通の言葉になった。

計算例:50 kVA・6600/210 V 単相変圧器

試験結果と定数

試験測定値求めた定数
無負荷(低圧側 210 V)4.8 A, 250 WRc 176 Ω, Xm 45 Ω(低圧側)
短絡(高圧側 7.58 A)264 V, 700 WReq 12.2 Ω, Xeq 32.6 Ω(高圧側)

励磁電流は定格電流238 Aの2.0%、無負荷時の力率は0.25と低い。百分率で表すと抵抗降下1.40%、リアクタンス降下3.75%、インピーダンス4.0%になる。

電圧変動率(定格負荷)

力率フェーザ計算近似式
1.01.47%1.40%
0.8(遅れ)3.39%3.37%
0.8(進み)−1.05%−1.13%

負荷と効率

負荷率効率(力率1)効率(力率0.8)
25%97.70%97.15%
50%98.33%97.92%
60%(最大)98.35%97.95%
100%98.14%97.68%
125%97.90%97.38%
🙋

効率は定格負荷ではなく60%で最大なんですね。どうしてわざとそう設計するんですか?

🎓

配電用変圧器は、1日中ずっと定格で使われるわけではないからだ。昼の8時間は定格、夜の16時間は20%という使い方で1日の電力量効率を計算すると97.89%になり、損失の半分は鉄損が占める。鉄損は負荷がなくても24時間かかり続けるからだ。だから軽負荷の時間が長い変圧器では、銅損を少し増やしても鉄損を減らす設計が得になる。アモルファス合金の鉄心は、まさにこの鉄損を減らすために使われる。一方、発電所の変圧器のように常に重負荷なら、最大効率の点を定格近くに置く。

簡易等価回路の精度

励磁回路を一次側の端子へ移した簡易等価回路と、巻線の途中に置いた厳密な回路で、6,600 Vをかけ定格負荷(遅れ0.8)をつないだときの二次電圧(高圧側換算)を比べると、6,383.6 Vと6,381.0 Vで差は0.04%だった。励磁電流が定格の2%と小さいので、ふつうの計算は簡易回路で十分だ。

解析と設計のポイント

  1. 無負荷試験は低圧側、短絡試験は高圧側で行うと、計器の範囲に収まりやすい。
  2. 定数を使う前に、どちら側の値かをそろえる(巻数比の2乗で換算)。
  3. 巻線抵抗は温度で変わるので、基準温度(例:75℃)へ換算する。
  4. 高調波や直流偏磁がある場合、等価回路の鉄損と励磁電流は変わる。
  5. 漏れリアクタンスの配分や周波数特性が必要なら、電磁界解析で求める。
Coffee Break よもやま話

「進み力率で電圧が上がった」

ある工場で、力率改善のためにコンデンサを入れたところ、夜間に機械が止まって負荷が軽くなると、受電電圧が定格より高くなって照明の寿命が縮んだ。コンデンサがつながったままなので、軽負荷では進み電流が主になり、変圧器の漏れリアクタンスによって電圧が持ち上げられたのだ。計算例の進み0.8で電圧変動率が−1.05%になったのと同じ現象だ。負荷に合わせてコンデンサを切り替えるようにすると解決した。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
換算側の混同値が約千倍ずれる巻数比の2乗で統一
無負荷の電力を銅損と誤認損失の分離を誤る試験の意味を確認
抵抗の温度補正なし銅損の過小評価基準温度へ換算
定格効率だけで比較実際の損失を誤る負荷パターンで評価
進み力率を想定しない過電圧電圧上昇を確認
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

電圧変動率ツールと変圧器効率ツールで試算できるよ。関連するページは鉄損、漏れインダクタンス、巻線損失、三相変圧器が参考になる。

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