変流器(CT)解析
理論:励磁電流が誤差を生む
概要
変流器は大きな電流を小さく変えて計器につなぐものですよね。巻数比どおりに電流が出るんじゃないんですか?
理想的にはそうなるが、実際には鉄心を磁化するための電流が必要で、その分だけ二次電流が足りなくなる。鉄心を磁化する量は二次側の電圧で決まり、二次側の電圧は、つないだ計器や継電器(負担)が大きいほど高い。だから負担を増やすと誤差が増える。さらに事故のときは電流が何十倍にもなり、直流分まで乗るので、鉄心が飽和して二次電流が大きく欠けることがある。保護継電器が正しく動くかどうかに直結する問題だ。200/5 Aの変流器で計算してみよう。
比誤差と位相差
$\mathbf{Z}_m$ は励磁インピーダンス(二次側換算)、$R_2$ は二次巻線抵抗、$\mathbf{Z}_b$ は負担。$\mathbf{Z}_m$ が負担よりずっと大きいほど誤差は小さい。二次電流の位相が一次電流からずれる角度を位相差と呼び、分(1/60度)で表す。
鉄心の磁束
$A_e$ は鉄心の断面積。事故電流に直流分が完全に乗ると、必要な磁束は交流分だけのときの最大 $(1 + X/R)$ 倍になる。$X/R$ は系統のリアクタンスと抵抗の比で、送電系統では10〜20程度になることが多い。
計器用変成器の誕生
19世紀末に交流送電が広がると、数百〜数千アンペアの電流を直接計器に通すことはできず、電流を小さく変える変流器が作られた。20世紀に入ると電力系統の保護に使われるようになり、事故のときに変流器が飽和して継電器が動かないことが大きな問題になった。20世紀後半には、直流分による過渡飽和を考えた保護用変流器の規格が整えられ、エアギャップを入れて残留磁束を減らす鉄心なども使われるようになった。今では磁気飽和のないロゴスキーコイルや光変流器も実用化されている。
計算例:200/5 A 変流器
貫通形(一次1ターン・二次40ターン)、50 Hz。環状鉄心の断面積20 cm²・磁路長0.30 m・比透磁率20,000(5%電流では8,000と仮定)、二次巻線抵抗0.15 Ω。負担は力率0.8。励磁リアクタンスは84 Ω(二次側換算)。
負担と誤差
| 負担 | 定格電流:比誤差 | 定格電流:位相差 | 5%電流:比誤差 | 5%電流:位相差 |
|---|---|---|---|---|
| 2.5 VA | −0.15% | 9分 | −0.26% | 23分 |
| 5 VA | −0.25% | 11分 | −0.46% | 30分 |
| 15 VA | −0.64% | 22分 | −1.28% | 59分 |
| 30 VA | −1.22% | 37分 | −2.49% | 102分 |
0.5級の許容値は、定格電流で±0.5%・±30分、5%電流で±1.5%・±90分。5 VAまでなら収まるが、15 VAでは定格電流の比誤差が、30 VAではすべての点で外れる。電流が小さいと鉄心の透磁率が下がるので、誤差はかえって大きくなる。
事故電流と飽和
| 負担 | 定格時の磁束密度 | 飽和(1.8 T)に達する倍数 |
|---|---|---|
| 5 VA | 0.093 T | 19倍 |
| 15 VA | 0.203 T | 9倍 |
| 30 VA | 0.368 T | 5倍 |
直流分による過渡飽和
負担5 VA(抵抗)で、X/R = 15の系統で直流分が完全に乗った事故を計算した(残留磁束なし)。
| 事故電流 | 交流分だけの磁束 | 直流分を含む最大 | 飽和までの時間 |
|---|---|---|---|
| 定格の5倍 | 0.49 T | 7.9 T | 11.5 ms |
| 定格の10倍 | 0.98 T | 15.8 T | 8.2 ms |
| 定格の20倍 | 1.97 T | 31.5 T | 6.2 ms |
交流分だけなら0.49 Tで余裕があるのに、直流分が乗ると5倍の事故でも半サイクルほどで飽和するんですね。
直流分は向きが変わらないので、交流のように正負で打ち消されず、磁束を一方向へ積み上げ続ける。時定数は X/R を角周波数で割った48 msで、飽和するまでに十分な時間がある。飽和すると二次電流は各サイクルの一部しか出てこなくなり、距離継電器や差動継電器が事故を小さく見積もったり、外部の事故を内部と取り違えたりする。だから保護用の変流器は、X/R と継電器が動くまでの時間を考えて、飽和までの余裕を見込んで選ぶ。前の事故で残った磁束があると、飽和はさらに早くなる。
選定と解析のポイント
- 計器・継電器・配線の負担を合計し、定格負担を超えないようにする。
- 二次配線が長いと抵抗が負担に加わる。5 A定格より1 A定格の方が配線の負担は小さい。
- 保護用は、最大事故電流とX/Rから飽和までの時間を確かめる。
- 過渡解析では、鉄心のB-H特性(ヒステリシスと残留磁束)を入れる。
- 通電中に二次側を開放しない。励磁電流が制限されず、非常に高い電圧が出る。
「差動継電器が外部事故で動いた」
ある変電所で、変圧器の外で起きた事故なのに、変圧器の差動保護が動いて変圧器を切り離してしまった。差動保護は、変圧器の両側の変流器の電流を比べて差があれば内部事故と判断する。調べると、片側の変流器だけが直流分で飽和し、二次電流が欠けて見かけの差が生じていた。両側の変流器の特性をそろえ、飽和を検出して動作を止める機能を継電器に入れて対策した。変流器の過渡飽和は、保護の誤動作の典型的な原因だ。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 配線の負担を忘れる | 誤差が等級外 | 配線抵抗を合算 |
| 交流分だけで飽和判定 | 過渡飽和を見逃す | X/Rを入れる |
| 残留磁束を無視 | 飽和が早まる | 最悪の残留を想定 |
| 計測用を保護に流用 | 事故時に飽和 | 保護用の等級を使う |
| 二次開放 | 高電圧・焼損 | 短絡してから外す |
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変圧器の磁気回路ツールで磁気回路を試せるよ。関連するページは変圧器等価回路、計器用変圧器(VT)、鉄損、漏れインダクタンスが参考になる。
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