三相変圧器の解析

カテゴリ: 電磁気・変圧器 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for three phase transformer theory - technical simulation diagram
三相変圧器解析

理論:3つの相が1つの鉄心を共有する

概要

🙋

三相変圧器の無負荷試験をしたら、中央の相だけ電流が小さく出ました。故障でしょうか?

🎓

たぶん正常だよ。よく使われる3脚の内鉄形鉄心では、3つの相の磁束が1つの鉄心を共有している。三相の磁束は足すと0になるから、ある脚の磁束は他の脚を通って戻る。中央の脚は両隣に短い距離で戻れるけれど、外側の脚は継鉄(上下の横の部分)を長く通って戻らないといけない。磁気抵抗が大きい分、外側の相は励磁に大きな電流が要るんだ。三相変圧器の解析は、こうした相どうしの磁気的なつながりと、結線による電圧・電流の関係を押さえることが基本になる。

磁気回路の式

$$ F_A - F_B = R_l\,\phi_A + R_y\,\phi_A - R_l\,\phi_B, \qquad F_B - F_C = R_l\,\phi_B - R_y\,\phi_C - R_l\,\phi_C, \qquad F_A + F_B + F_C = 0 $$

$F$ は各相の起磁力(巻数×励磁電流)、$\phi$ は脚の磁束、$R_l$ は脚1本の磁気抵抗、$R_y$ は隣り合う脚の間の継鉄(上下合計)の磁気抵抗。三角結線や中性点を接地しない星形結線では、3相の励磁電流の和は0になる。

定格電流と短絡電流

$$ I_{rated} = \frac{S}{\sqrt{3}\,V_L}, \qquad I_{sc} = \frac{I_{rated}}{\%Z/100} $$
Coffee Break よもやま話

三相交流と変圧器の誕生

三相交流の送電は、1891年にドイツのラウフェンからフランクフルトまで約175 kmを結んだ実験で実用性が示された。このとき使われた三相変圧器を設計したのが、ロシア出身の技術者ドリヴォ=ドブロヴォリスキーで、3つの脚を1つの鉄心にまとめる形を考案した。単相の変圧器を3台並べるより鉄の量が少なく、小さく安くできる。いまの配電用変圧器の多くも、この3脚の鉄心を基本にしている。

計算例

例1:励磁の不平衡

3相の磁束の大きさを等しくそろえたとき、各相に必要な起磁力を磁気回路の式で求めた(線形、飽和なし)。

継鉄/脚の磁気抵抗外側の相(A・C)中央の相(B)外側/中央外側の相の位相のずれ
01.001.001.000°
0.61.511.201.266.6°
1.22.031.401.459.8°

起磁力は、継鉄の磁気抵抗が0のときの値を1とした比。外側の相は中央より大きな電流が要り、しかも位相が120°の間隔からずれる。

🙋

外側が1.26〜1.45倍も要るなら、中央の相が小さいのは当然なんですね。

🎓

そういうこと。実際には鉄心の継ぎ目や飽和の影響も加わるので、比は設計によって変わるけれど、『中央の相が小さい』のは3脚鉄心の特徴だ。3相の平均で無負荷電流を評価するのはこのためだよ。逆に、外側の2相が大きく違ったり、中央の相が一番大きかったりしたら、継ぎ目の不良や巻線の異常を疑う。ちなみに5脚の鉄心や単相器3台では、この不平衡はずっと小さくなる。

例2:1,000 kVA配電用変圧器(Dyn11)

項目値
定格電流(高圧側 6.6 kV)87.5 A
三角巻線の相電流50.5 A
定格電流(低圧側 420 V)1,375 A
巻数比(高圧/低圧)27.2
位相のずれ低圧側が30°進み
短絡電流(%Z 5%)低圧 27.5 kA/高圧 1.75 kA
短絡電流(%Z 6%)低圧 22.9 kA/高圧 1.46 kA

巻数比は線間電圧の比(15.7)ではなく、三角巻線にかかる6.6 kVと星形巻線の相電圧242 Vの比になる。%インピーダンスを大きくすると短絡電流は下がるが、負荷時の電圧降下は大きくなる。

解析の進め方

  1. 鉄心の形(3脚・5脚・外鉄形)と結線(Dyn11など)を確認する。
  2. 磁気回路か電磁界の有限要素解析で、各相の励磁電流と鉄損を求める。
  3. 短絡インピーダンスと漏れ磁束を求め、短絡時の電磁力(巻線に働く力)を評価する。
  4. 不平衡負荷や零相の電流が流れるときの、タンクや構造物の渦電流による発熱を確かめる。
  5. 無負荷試験・短絡試験の結果と比べる。
Coffee Break よもやま話

「タンクが局部的に熱い」

3脚鉄心で星形・星形の結線にした変圧器で、単相の負荷が多い現場でタンクの一部が異常に熱くなった——という例がある。不平衡な負荷で零相の電流が流れると、3つの脚の磁束が同じ向きの成分を持つ。3脚の鉄心にはその磁束が戻る鉄の経路がないので、空気や油を通ってタンクに入り、そこで渦電流を起こして発熱していた。三角巻線を持つ結線(Dyn11など)では零相の起磁力が打ち消されるので、この問題は起きにくい。結線と鉄心の形は、組み合わせで考えることが大事だ。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
中央の相の小さい電流を異常と判断不要な点検3脚鉄心の特徴と理解
巻数比を線間電圧の比で三角・星形で値を誤る巻線にかかる電圧で計算
零相の磁束の経路を無視タンクの発熱を見落とすタンクを含めて解析
位相のずれを無視して並列運転大きな循環電流同じ結線記号どうしで
電源側のインピーダンスを入れて短絡電流を下げすぎる遮断器の容量不足上限値で選定
🙋

関連する計算を試したいです。

🎓

変圧器の設計計算、変圧器の効率計算、三相電力の計算で設計・効率・三相電力を確かめられるよ。詳しくは変圧器の等価回路、鉄損、漏れインダクタンス、巻線損失も参考になる。

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