充填層流れと伝熱

カテゴリ: 流体解析・多孔質媒体 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for packed bed theory - technical simulation diagram
充填層流れと伝熱

理論:粒子と流体の熱交換

概要

🙋

岩や球を詰めた層に空気を流して熱をためる装置がありますよね。粒の大きさはどう決めるんですか?

🎓

粒が小さいほど表面積が増えて熱をよく交換するが、空気が通りにくくなって圧力損失が増える。この2つのバランスで決まる。ところが計算してみると、長さ1 mほどの層なら、かなり大きな粒でも熱交換は十分で、出口の空気は層の温度にほぼ追いつく。だから実際には、送風の動力と、層の中で温まった部分と冷たい部分の境目(温度前線)がどれだけぼやけるかが、粒径を決める主な要因になる。岩石蓄熱層で粒径を変えて計算してみよう。

体積あたりの熱伝達率とNTU

$$ Nu_p = 2 + 1.1\,Re_p^{0.6}Pr^{1/3},\qquad a = \frac{6(1-\varepsilon)}{d_p},\qquad NTU = \frac{h\,a\,L}{\rho c_p u} $$

Re_p は空塔速度 u(粒子がないとしたときの速度)と粒径 d_p で定義する。NTU は層の長さ L を通る間に流体がどれだけ固体の温度に近づくかを表し、NTU = 3 で差の95%が縮まる。

圧力損失(Ergun式)

$$ \frac{\Delta p}{L} = 150\,\frac{\mu u (1-\varepsilon)^2}{\varepsilon^3 d_p^2} + 1.75\,\frac{\rho u^2 (1-\varepsilon)}{\varepsilon^3 d_p} $$
Coffee Break よもやま話

シューマンの蓄熱層モデル

充填層を流れる流体と粒子の間の熱交換を初めて解析的に解いたのは、1929年のアメリカのシューマンで、流体と固体の2つの温度を別々に扱うモデルを示した。この『2温度モデル』は、高炉の熱風炉、化学反応器、太陽熱の岩石蓄熱、さらに最近の電気を熱でためる蓄エネルギー装置まで、充填層の伝熱解析の基本になっている。粒子1個のまわりの熱伝達を表すWakaoとKagueiの式は1982年にまとめられた。

計算例:岩石蓄熱層

空気25℃、空塔速度0.3 m/s、層の長さ1.0 m、空隙率0.40、岩石の熱伝導率2.8 W/mK。

粒径Re熱伝達率比表面積体積熱伝達率NTU圧力損失送風動力
5 mm9689 W/m²K720 m²/m³64,200 W/m³K180536 Pa161 W/m²
10 mm19165 W/m²K360 m²/m³23,400 W/m³K66221 Pa66 W/m²
20 mm38348 W/m²K180 m²/m³8,600 W/m³K2499 Pa30 W/m²
40 mm76536 W/m²K90 m²/m³3,200 W/m³K9.047 Pa14 W/m²

温度前線の幅

粒径NTU = 3 となる長さ粒子のビオ数
5 mm0.017 m0.027
10 mm0.046 m0.039
20 mm0.124 m0.057
40 mm0.334 m0.085
🙋

NTUが9もあれば熱交換は十分なのに、粒を大きくすると何が困るんですか?

🎓

出口の温度だけを見れば十分だが、蓄熱層では層の中の温度の分布が大事だ。熱い空気を入れると、層の中を熱い部分と冷たい部分の境目(温度前線)が進んでいく。粒が大きいとこの境目がぼやけ、粒径40 mmでは幅が0.33 mと層の3分の1にもなる。前線が出口に届くと出てくる空気の温度が下がりはじめるので、ぼやけた前線では層の一部しか使えない。粒径を小さくすれば前線は鋭くなるが、圧力損失が増えて送風動力が大きくなる。この2つの兼ね合いで、10〜20 mm程度が選ばれることが多い。なお粒子のビオ数はどれも0.1未満で、岩の中の温度差は小さく、粒子を1つの温度で表せる。

解析のポイント

  1. 流体と固体の温度を別に扱う2温度モデルを使う(局所熱平衡を仮定しない)。
  2. 粒子のビオ数が0.1を超えるなら、粒子内部の温度分布も解く。
  3. 壁の近くは空隙率が大きく、流れが偏る(壁効果)ことを考える。
  4. 軸方向の熱伝導と分散が温度前線をぼやかす効果を入れる。
  5. 圧力損失から送風機の動作点を求め、実際の流量で評価する。
Coffee Break よもやま話

「壁ぎわだけが早く温まった」

ある実験用の蓄熱層で、出口の温度が予想より早く上がりはじめた。温度センサーを並べて調べると、層の容器の壁ぎわだけ温度前線が先に進んでいた。壁の近くでは粒子がすき間なく詰まらず空隙率が大きいので、空気がそこを優先して流れていたのだ。容器の直径に対して粒径が大きすぎたことが原因で、粒径を小さくするか、壁に沿って流れを妨げる仕切りを入れることで改善した。容器径と粒径の比が小さいと、この壁効果が無視できなくなる。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
局所熱平衡を仮定前線が鋭すぎる2温度モデル
実速度と空塔速度の混同Reと圧損を誤る定義を確認
壁効果を無視偏流を見逃す壁近くの空隙率
出口温度だけで評価蓄熱量を過大評価前線の幅を確認
粒子のビオ数を見ない大粒径で誤差Bi < 0.1を確認
🙋

関連する内容も知りたいです。

🎓

関連するページはForchheimer方程式、ダルシー流れ、Brinkman方程式、地下水流れ、温度成層が参考になる。

関連シミュレーター

この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

シミュレーター一覧

関連する分野

熱解析V&V・品質保証構造解析
この記事の評価
ご回答ありがとうございます!
参考に
なった
もっと
詳しく
誤りを
報告
参考になった
0
もっと詳しく
0
誤りを報告
0