連続体損傷力学(CDM)

カテゴリ: 構造解析 | 統合版 2026-04-06
CAE visualization for damage continuum theory - technical simulation diagram
連続体損傷力学(CDM)

連続体損傷力学(CDM)の理論基礎

CDMとは

🧑‍🎓

先生、連続体損傷力学(CDM)って何ですか?


🎓

CDM(Continuum Damage Mechanics)は材料の劣化(損傷)を連続変数 $D$ で記述する理論。Kachanov(1958)、Rabotnov(1968)が提案。


$$ \tilde{\sigma} = \frac{\sigma}{1-D} $$

$D = 0$ で健全、$D = 1$ で完全破壊。$\tilde{\sigma}$ は有効応力。


CDMの枠組み

🎓

応力-ひずみ関係:

$$ \sigma = (1-D) C \varepsilon $$

損傷の進展則(例: クリープ損傷):

$$ \dot{D} = A \left(\frac{\sigma}{1-D}\right)^n $$

🧑‍🎓

損傷が進むほど有効応力が上がり、損傷がさらに加速する正のフィードバック。


🎓

この「連鎖」が最終的な破壊($D \to 1$)を引き起こす。CDMはクリープ破壊、疲労、延性破壊の統一的な枠組み。


まとめ

🎓
  • 損傷変数 $D$(0〜1)で材料の劣化を記述 — 連続体の枠組み
  • 有効応力 $\tilde{\sigma} = \sigma/(1-D)$ — 損傷で有効応力が増加
  • クリープ損傷、疲労損傷、延性損傷 — CDMの適用
  • Hashin損傷(複合材)もCDMの一種

  • Coffee Break よもやま話

    Kachanovの1958年論文

    連続体損傷力学(CDM)の礎はL.M.Kachanovが1958年に発表したわずか8ページのロシア語論文「On the Creep Fracture Time」にある。彼は「有効応力」の概念を導入し、微小亀裂の集積を一つのスカラー損傷変数ωで表した。Kachanovは当時ソ連で冷遇されていたが、1980年代以降に西側に紹介されるや急速に注目を集め、LemaitreやChabocheによってCDMの体系化につながった。

    連続体損傷力学(CDM)の数値計算手法

    CDMのFEM

    🎓

    Abaqusの複合材Hashin損傷やDuctile Damageが CDMベース。ユーザーサブルーチン(UMAT/VUMAT)で任意のCDMモデルを実装可能。


    まとめ

    🎓
    • Abaqusの*DAMAGE系が CDMベース — Hashin, Ductile, Shear等
    • UMAT/VUMATでカスタムCDM — 任意の損傷進展則
    • 破壊エネルギーによる正則化 — メッシュ依存性の排除

    • Coffee Break よもやま話

      Lemaitreの損傷-塑性連成モデル

      Jean LemaitreはChambon生まれのフランス人で、1984年の論文「How to Use Damage Mechanics」でKachanovの一軸理論を三次元弾塑性損傷力学に拡張した。損傷は等方性スカラーDとして定義され、有効応力σ̃ = σ/(1−D)で置き換えることで既存の塑性モデルと容易に連成できる。Lemaitreモデルは現在フランスのCode_AsterおよびSYSTUS(ESI製)の標準材料ライブラリに収録されている。

      連続体損傷力学(CDM)の実務適用

      CDMの実務

      🎓

      金属の延性破壊(ダメージインデックス)、複合材のプログレッシブ損傷、コンクリートの損傷塑性で使用。


      実務チェックリスト

      🎓
      • [ ] 損傷開始基準が材料試験に基づいているか
      • [ ] 損傷進展が破壊エネルギーで正則化されているか
      • [ ] 損傷変数$D$が1.0に達した要素の削除が設定されているか
      • [ ] メッシュ収束性を確認したか(損傷は局所化しやすい)

      • Coffee Break よもやま話

        自動車クラッシュ解析への応用

        CDMは自動車衝突安全(クラッシュ)解析でも重要な役割を担う。フォルクスワーゲン社は2000年代前半からLS-DYNAのGurson-Tvergaard-Needleman(GTN)モデルとCDMを組み合わせたシートメタル破断予測を採用し、正面衝突試験(Euro NCAP)での乗員保護性能評価に活用している。CDMを導入したことで、従来の最大ひずみ基準に比べ高張力鋼(780 MPa級)の穿孔破断を30%高い精度で予測できるようになったと報告されている。

        連続体損傷力学(CDM)のソフトウェア比較

        CDMのツール

        🎓
        • Abaqus — *DAMAGE系(Hashin, Ductile, Shear, FLD)。最も豊富
        • LS-DYNA — *MAT_ADD_EROSION。Johnson-Cook破壊等
        • UMAT/VUMAT — カスタムCDM

        • Coffee Break よもやま話

          SIMULIA Damage Mechanicsの実装史

          AbaqusにCDMが初めて標準搭載されたのはAbaqus 6.2(2001年)で、Lemaitreモデルの簡易版が「Ductile Damage」として実装された。その後6.14(2014年)でGurson型ボイドモデルが追加、2019年からはAbaqus 2019として再ブランド化が進み、FLD(成形限界線図)連成による板材破断モデルも追加された。現在のAbaqus 2024では5種類の延性損傷基準と3種類のせん断損傷基準が選択可能となっている。

          連続体損傷力学(CDM)の先端研究

          CDMの先端

          🎓
          • Phase-Field法 — 損傷を連続場で追跡。CDMの自然な拡張
          • 非局所CDM — メッシュ依存性の本質的な解決
          • マルチスケールCDM — ミクロの損傷(ボイド、亀裂)→マクロの損傷変数

          • Coffee Break よもやま話

            非局所化理論とメッシュ依存性解消

            CDMはひずみ局所化を伴うため、標準的な局所理論ではメッシュサイズが細かくなるほど破断エネルギーがゼロに近づく病理的な依存性を示す。1987年にBažantとPijaudier-Cabotが「非局所損傷力学」を提案し、損傷変数を周辺要素の重み付き平均(影響半径l ≈ 3×骨材最大粒径)で評価することで依存性を解消した。この手法はdiaFEAや最新のAbaqus2024にも拡張として実装されている。

            連続体損傷力学(CDM)のトラブル対応

            CDMのトラブル

            🎓
            • メッシュ依存性 → 破壊エネルギーの正則化。非局所CDMを検討
            • 損傷が1要素に集中 → メッシュを細かく。粘性正則化
            • $D > 1$ のエラー → 損傷が1.0でクランプされているか。要素削除

            • Coffee Break よもやま話

              要素削除後の不安定振動

              CDMで損傷変数D→1に達した要素を削除するElement Erosion技術は、LS-DYNAのFRAC_DAMAGE機能で広く使われる。しかし要素削除後に隣接要素に応力が再配分される際、動的解析ではスプリアス振動が発生することがある。対策として1990年代にBelytschkoらが提案した「スムーズドパーティクル流体力学(SPH)との混合手法」が採用されるケースが増えており、LS-DYNA R14以降はAdaptive Bond手法が実用化されている。

              関連シミュレーター

              この分野のインタラクティブシミュレーターで理論を体感しよう

              シミュレーター一覧

              関連する分野

              熱解析製造プロセス解析V&V・品質保証
              この記事の評価
              ご回答ありがとうございます!
              参考に
              なった
              もっと
              詳しく
              誤りを
              報告
              参考になった
              0
              もっと詳しく
              0
              誤りを報告
              0
              Written by NovaSolver Contributors
              Anonymous Engineers & AI — サイトマップ
              プロフィールを見る