周期的加熱問題

カテゴリ: 熱解析・非定常熱伝導 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for periodic heating theory - technical simulation diagram
周期的加熱問題

理論:減衰しながら遅れて進む温度の波

概要

🙋

地下室は夏涼しく冬暖かいと言いますよね。あれも熱伝導の計算で説明できるんですか?

🎓

できる。地表の温度は1日や1年の周期で上下するが、その変化は温度の波として地中へ伝わる。波は深くなるほど小さくなり、しかも遅れて届く。だから少し深い場所では変動が小さく、深さによっては季節がずれる。この性質は、壁の断熱や蓄熱、エンジンの壁の温度変動、地中熱の利用など、周期的に熱が出入りするあらゆる場面で使える。土を例に、波がどこまで、どれだけ遅れて届くかを計算しよう。

半無限体の周期解

$$ T(x,t) = T_m + A\,e^{-x/d}\cos\!\left(\omega t - \frac{x}{d}\right),\qquad d = \sqrt{\frac{2\alpha}{\omega}} = \sqrt{\frac{\alpha P}{\pi}} $$

$A$ は表面の温度振幅、$d$ は浸透深さ、$P$ は周期。深さ $d$ ごとに振幅は $1/e$ になり、位相は1ラジアン(周期の約16%)遅れる。周期が長いほど、熱拡散率が大きいほど深くまで届く。

表面の熱流束

$$ q_0(t) = A\sqrt{k\rho c}\,\sqrt{\omega}\,\cos\!\left(\omega t + \frac{\pi}{4}\right) $$

表面を出入りする熱の振幅は、熱浸透率 $\sqrt{k\rho c}$ に比例し、温度より周期の1/8(45°)早く最大になる。熱浸透率の大きい材料ほど、同じ温度変化で多くの熱を出し入れする。

Coffee Break よもやま話

フーリエと地中の温度

フーリエは1822年の『熱の解析的理論』で、地表の温度の変化が地中にどう伝わるかを論じ、年変化の波が深くなるほど弱まり、遅れることを示した。彼は、地下の温度観測から地球内部の熱を知ろうとしていた。のちにケルビン卿は、同じ熱伝導の考え方で地球の年齢を見積もった。今では、地中熱ヒートポンプの設計で、この周期解が地中の温度を見積もる基本になっている。

計算例

例1:土の中の1日と1年の波

熱拡散率5×10⁻⁷ m²/s、熱伝導率1.0 W/mK。

項目1日の変動1年の変動
浸透深さ d0.117 m2.24 m
振幅が1%になる深さ0.54 m10.3 m
位相が半周期ずれる深さ0.37 m7.0 m
深さ10 cmの振幅比0.430.96
深さ10 cmの遅れ3.3 時間62 時間

地表の日変動の振幅を10 Kとすると、表面を出入りする熱の振幅は121 W/m²になる。

例2:数値解との比較

深さ3 mの土を600分割し、表面に振幅10 Kの日変動を10日間与えて、最後の1日を厳密解と比べた。

深さ振幅(数値)振幅(厳密)遅れ(数値)遅れ(厳密)
0.1 m4.258 K4.262 K3.25 時間3.26 時間
0.3 m0.772 K0.774 K9.77 時間9.77 時間

例3:エンジンの燃焼室の壁

壁の材料浸透深さ(2000 rpm、4サイクル)99%減衰する深さ
アルミ1.15 mm5.3 mm
鋼0.48 mm2.2 mm
🙋

エンジンの中は燃焼で温度が激しく変わるのに、壁の中にはほとんど入らないんですね。

🎓

燃焼のサイクルは1秒に17回ほどと速いので、浸透深さはアルミでも約1 mm、鋼では0.5 mmしかない。壁の表面近くだけが細かく温度を上下させ、その内側はほぼ一定の平均温度になる。だから壁全体の熱応力や冷却の設計は時間平均の熱流で考えられるが、表面の数mmには繰り返しの熱ひずみがかかり、熱疲労の原因になる。逆に土のように周期が1年と長いと、波は何mも入り、地中7 mでは季節が逆転する。同じ式でも、周期と材料で届く深さが桁違いに変わる。

解析のポイント

  1. まず浸透深さを計算し、解析領域をその5倍程度以上にとる。
  2. 格子は浸透深さの中に10点以上入れる。
  3. 周期定常に達するまで数周期計算し、最後の周期で評価する。
  4. 時間刻みは周期の1/100程度以下にする。
  5. 周期が複数ある場合(日変化と年変化)は、重ね合わせで考えられる(線形の場合)。
Coffee Break よもやま話

「凍らない深さ」

寒い地域で水道管や基礎を埋める深さは、冬の冷え込みが地中にどこまで届くかで決まる。土の性質と冬の寒さの長さから浸透深さを見積もると、1年の波では2 m余りで振幅が3分の1ほどに減る。実際の凍結深さは、土の水分が凍るときの潜熱や積雪の断熱でさらに浅くなることが多い。地域ごとに定められた凍結深度は、こうした熱伝導の考え方と観測をもとに決められている。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
領域が浅い底の境界が効く5d以上にする
初期の過渡で評価振幅と遅れを誤る数周期回す
格子が粗い表面近くの勾配を誤るd内に10点以上
周期と角周波数の混同dを誤るd = √(αP/π)
潜熱を無視(凍結)凍結深さを誤る相変化を入れる
🙋

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