垂直流路の自然対流

カテゴリ: 熱解析・自然対流 | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for vertical channel natural theory - technical simulation diagram
垂直流路の自然対流

理論:狭い流路では流れが詰まる

概要

🙋

ファンのないヒートシンクは、フィンをたくさん並べるほど冷えるんですよね?

🎓

ある所まではそうだが、詰めすぎると逆効果になる。自然対流では、フィンの間の空気は温められて自分で上昇する。間隔が狭いと、両側の壁の境界層がぶつかって空気が流れにくくなり、熱伝達率が急に下がる。一方で間隔が広いと枚数が減って面積が足りなくなる。その間に放熱量が最大になる最適な間隔がある。垂直な平板の間の自然対流の式を使って、高さ100 mmのヒートシンクで最適な間隔を求めてみよう。

Bar-CohenとRohsenowの式

$$ Nu_S = \frac{hS}{k} = \left[\frac{576}{El^2} + \frac{2.873}{El^{1/2}}\right]^{-1/2},\qquad El = Ra_S\frac{S}{L} = \frac{g\beta\,\Delta T\,S^4}{\nu\alpha L} $$

両側の板が同じ温度(対称・等温)の場合。El が小さい(狭い)と $Nu_S \approx El/24$ で流路の中の十分発達した流れ、El が大きい(広い)と $Nu_S \approx 0.59\,El^{1/4}$ で1枚の平板と同じになる。

最適なフィン間隔の目安

$$ S_{opt} \approx 2.714\,L\,Ra_L^{-1/4},\qquad Ra_L = \frac{g\beta\,\Delta T\,L^3}{\nu\alpha} $$
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エレンバースの実験

1942年、オランダのフィリップス社のエレンバースは、真空管や電球の放熱を考えるなかで、向かい合う垂直な板の間の自然対流を測定し、板の間隔と高さを含む無次元数で結果を整理した。この数は今も『エレンバース数』と呼ばれる。1984年にはアメリカのバー・コーエンとローゼナウが、狭い極限と広い極限をつなぐ式にまとめ、電子機器の自然空冷ヒートシンクの設計で広く使われるようになった。

計算例:自然空冷ヒートシンク

フィンの高さ100 mm・奥行き50 mm・厚さ1 mm、ベース幅100 mm、フィンと周囲の温度差40 K(空気、膜温度40℃)。フィンは一様な温度とみなした。Ra_L = 3.07×10⁶。

フィン間隔フィン枚数エレンバース数熱伝達率放熱量
2 mm340.50.28 W/m²K3.7 W
4 mm207.92.11 W/m²K16.0 W
6 mm15404.99 W/m²K28.0 W
8 mm121266.26 W/m²K27.6 W
10 mm103076.57 W/m²K23.7 W
15 mm71,5566.68 W/m²K16.0 W
20 mm54,9166.69 W/m²K10.7 W

0.05 mm刻みで探した最適間隔は6.60 mm(28.9 W)で、目安の式の6.48 mmと2%で一致した。フィンのない平らなベースだけなら約1.3 Wにとどまる。

🙋

2 mm間隔だと枚数は一番多いのに、放熱量は最適の8分の1しかないんですね。

🎓

2 mmではエレンバース数が0.5しかなく、流路の中の空気がほとんど動かない。熱伝達率は0.28 W/m²Kで、最適間隔の約20分の1だ。面積は2倍以上あっても、それでは取り返せない。逆に間隔を広げていくと、熱伝達率は1枚の平板の値(約6.7 W/m²K)で頭打ちになり、それ以上は枚数が減る分だけ放熱量が下がる。強制空冷用のヒートシンクはフィンが1〜2 mm間隔と密なことが多いので、ファンが止まると自然対流ではほとんど冷えない。ファンの故障時も安全かどうかは、この計算で確かめられる。

設計のポイント

  1. まず S_opt ≈ 2.714·L·Ra_L^(−1/4) で間隔の目安をつける。
  2. フィンは縦向きに置き、空気が下から入って上へ抜ける道をふさがない。
  3. フィン効率(フィンの先端温度の低下)も考える。薄く長いフィンでは効率が下がる。
  4. 放射も加える。自然空冷では放熱量の2〜3割になることがある。
  5. 筐体に入れる場合は、上下の通気口の大きさで流れが制限されないか確かめる。
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「ファンが止まったら過熱した」

ある屋外の通信機器で、夏にファンが故障したとき、機器がすぐに過熱して停止した。設計では、ファンが止まっても自然対流でしばらくはもつと考えていたが、ヒートシンクのフィン間隔は強制空冷用の2 mmだった。自然対流ではフィンの間の空気がほとんど動かず、放熱量は予想の数分の1だった。改良版では、フィン間隔を自然空冷でも働く7 mm程度に広げ、フィンを高くして面積を補った。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
単独平板の式を流路に使う狭い間隔で過大評価流路の式を使う
強制空冷の間隔を流用自然空冷で冷えないS_optで設計
放射を無視放熱量を過小評価放射を加える
フィン効率を1とする過大評価フィン効率を計算
通気口の抵抗を無視流量を過大評価筐体ごと解く
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