遮熱コーティング(TBC)解析

カテゴリ: 熱解析・産業プロセス | 2026-10-01 改稿
CAE visualization for thermal barrier coating theory - technical simulation diagram
遮熱コーティング(TBC)解析

理論:薄いセラミックが大きな温度差を担う

概要

🙋

タービン翼の表面に塗る0.3 mmくらいの膜で、そんなに温度が変わるんですか?

🎓

変わる。セラミックの熱伝導率は約1 W/mKで、翼の金属(約20 W/mK)の20分の1しかない。0.3 mmのセラミックは、熱の通しにくさでは金属6 mmぶんに当たる。翼の壁は外を高温のガス、内を冷却空気にはさまれていて、熱はガス→コーティング→金属→冷却空気と直列に流れるので、コーティングの熱抵抗が加わると、温度差の大きな部分をコーティングが受け持つ。熱抵抗の直列でどれだけ金属が冷えるかを計算しよう。

熱抵抗の直列

$$ q = \frac{T_g - T_c}{\dfrac{1}{h_g} + \dfrac{t_{TBC}}{k_{TBC}} + \dfrac{t_{BC}}{k_{BC}} + \dfrac{t_m}{k_m} + \dfrac{1}{h_c}},\qquad \Delta T_{TBC} = q\,\frac{t_{TBC}}{k_{TBC}} $$

ガス側の熱伝達、TBC、ボンドコート、金属壁、内部冷却の熱伝達の5つの抵抗が直列に並ぶ。TBCの中の温度差は、熱流束とTBCの熱抵抗の積。

Coffee Break よもやま話

ジェットエンジンを熱くした技術

遮熱コーティングの研究は1950〜60年代のアメリカで、ロケットや航空機エンジンのために始まった。1970年代にイットリアで安定化したジルコニアがすぐれた材料であることが分かり、1980年代にはジェットエンジンのタービン翼に使われるようになった。タービンの入口温度は、翼の金属が耐えられる温度よりはるかに高く、内部冷却と遮熱コーティング、耐熱合金の組み合わせで成り立っている。入口温度を上げるほどエンジンの効率は上がるので、TBCは燃費の改善に直結している。

計算例:タービン翼の壁

燃焼ガス1,500℃(熱伝達率3,000 W/m²K)、内部冷却空気600℃(2,000 W/m²K)、YSZ(1.0 W/mK)、ボンドコート0.1 mm(10 W/mK)、超合金の壁2 mm(20 W/mK)。

TBCの厚さと温度

TBCの厚さ熱流束TBC表面金属外面金属内面TBC内の温度差
なし0.95 MW/m²—1,172 °C1,077 °C—
0.1 mm0.86 MW/m²1,212 °C1,118 °C1,031 °C86 K
0.3 mm0.72 MW/m²1,259 °C1,034 °C962 °C217 K
0.5 mm0.62 MW/m²1,292 °C974 °C912 °C312 K

TBCの効果を別の方法で得ようとすると

条件金属外面の温度
TBC 0.3 mm(熱伝導率1.0)1,034 °C
TBC 0.3 mm、焼結後(熱伝導率1.5)1,072 °C
TBCなし、内部冷却を2.3倍(4,540 W/m²K)1,034 °C
🙋

TBCがあると、表面はかえって熱くなるのに、金属は冷えるんですね。

🎓

TBCは熱の流れを妨げるので、ガス側では熱が逃げにくくなり、表面温度は1,182℃から1,259℃に上がる。でもセラミックは高温に耐えられるので問題ない。大事なのは、その下の金属の温度が138 K下がることだ。超合金は温度が数十K下がるだけでクリープ寿命が何倍にも延びる。同じ効果をTBCなしで得ようとすると、内部冷却の熱伝達率を2.3倍にする必要があり、冷却に使う圧縮空気が増えてエンジンの効率が下がる。ただし焼結で熱伝導率が上がると効果は3割近く減り、はく離すれば一気に失われるので、TBCの寿命と金属の余裕を一緒に評価する必要がある。

解析のポイント

  1. ガス側と冷却側の熱伝達率をCFDや相関式で求め、境界条件にする。
  2. TBCの熱伝導率は使用時間による変化(焼結)を考える。
  3. 厚さのばらつき(溶射の不均一)を入れて、最も薄い場所を評価する。
  4. 温度分布から熱応力を求め、はく離の危険を評価する。
  5. 前縁や後縁など熱流束の大きい場所は、2次元・3次元で解く。
Coffee Break よもやま話

「はがれた場所だけが焼けた」

ある発電用ガスタービンの点検で、タービン翼の前縁の一部だけが酸化してやせていた。調べると、その場所のTBCが運転中にはがれ落ちていた。TBCを失った金属は、計算上100 K以上高い温度にさらされ、酸化とクリープが急に進んだのだ。この経験から、TBCのはく離を検知する点検と、はく離しても一定時間は金属が耐えられるような冷却の余裕が設計に組み込まれるようになった。

よくある間違い

間違いと対策

間違い起きること対策
新品の熱伝導率で評価寿命末期に過熱焼結後の値も評価
厚さを一定とする薄い場所の過熱ばらつきを考慮
ボンドコートを省略酸化の評価漏れ層として入れる
はく離を考えない急な損傷TBCなしでも評価
放射を無視表面温度を誤る燃焼ガスの放射を入れる
🙋

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