スーパーキャパシタモデリング
理論:表面にイオンを並べて蓄える
概要
スーパーキャパシタは、どんな場面で電池の代わりに使われるのですか?
短い時間に大きな電力を出し入れする場面だ。電気二重層キャパシタは、細かい穴だらけの炭素の電極を電解液に浸し、電極の表面にイオンを並べて電気を蓄える。化学反応を伴わないので、数秒で充放電でき、何十万回も繰り返せる。そのため、クレーンやバスのブレーキで回収したエネルギーを一時的に貯める、停電の瞬間の電源を支える、といった使い方に向いている。一方で、蓄えられるエネルギーは同じ重さの電池よりずっと小さい。モデリングでは、蓄えるエネルギー、内部の抵抗による損失と発熱、穴の奥まで使えるかどうか、直列にしたときの電圧のばらつきを見る。
エネルギー・出力・時定数
R_ESR はセルの内部抵抗(等価直列抵抗)。この例では C = 3000 F、V = 2.7 V、R_ESR = 0.29 mΩ。P_max は負荷の抵抗を内部抵抗と等しくしたときの最大出力で、このとき効率は50%になる。
細孔の伝送線路モデル
R_s は電解液と集電体の抵抗(0.19 mΩ)、R_p は細孔の中のイオンの抵抗(0.30 mΩ)。直流では R_s + R_p/3 が内部抵抗の0.29 mΩに等しい。細孔を抵抗と静電容量のはしごとして表すモデルで、ド・レヴィが多孔質の電極について導いた形である。
ヘルムホルツの層から
電極と電解液の境目に電荷が2層に並ぶという考えは、1853年にヘルムホルツが示した。これを電気を蓄える部品にしたのは、1957年に多孔質の炭素を使ったキャパシタの特許を出したゼネラル・エレクトリックのベッカーである。表面積の大きい炭素なら、1グラムで1000 m²を超える表面が得られ、ふつうのコンデンサーとは桁違いの静電容量になる。その後、メモリーの予備電源から始まり、いまでは車両や電力の分野で使われている。
計算例
例1:3000 Fのセル
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 蓄えるエネルギー | 10,935 J(3.04 Wh) |
| 電圧を半分まで使ったときのエネルギー | 75% |
| 最大出力 | 6,284 W |
| 時定数 | 0.87 s |
| 1 kWで半分の電圧まで | 7.53秒(損失なしなら8.20秒) |
| そのときの抵抗の損失 | 670 J |
一定の電力で放電すると電圧が下がるにつれて電流が増え、最後は924 Aになる。損失は電流の2乗に比例するので、放電の終わりに集中する。
例2:周波数と使える静電容量
| 周波数 | 使える静電容量 | 割合 | 抵抗 |
|---|---|---|---|
| 0.01 Hz | 3,000 F | 100% | 0.290 mΩ |
| 0.1 Hz | 2,979 F | 99% | 0.290 mΩ |
| 1 Hz | 1,939 F | 65% | 0.275 mΩ |
| 10 Hz | 564 F | 19% | 0.218 mΩ |
例3:18個の直列と静電容量のばらつき
| 項目 | 値 |
|---|---|
| モジュールの電圧 | 48.6 V |
| モジュールの静電容量 | 167 F |
| モジュールのエネルギー | 54.7 Wh |
| ふつうのセルの電圧 | 2.683 V |
| 容量が10%小さいセルの電圧 | 2.982 V |
1個だけ2.98 Vになっても、ほかは2.68 Vで余裕があるなら大丈夫では?
そうはいかない。電気二重層キャパシタの電圧の上限は、電解液が分解し始める電圧で決まっていて、それを超えるとガスが出て内部の圧力が上がり、劣化が一気に進む。劣化すると静電容量が下がるので、次の充電ではそのセルの電圧がさらに高くなる。つまり、弱いセルほど速く傷み、もっと弱くなるという悪循環になる。しかも内部抵抗も増えて発熱が大きくなり、温度が上がると劣化はさらに速くなる。だから直列のモジュールでは、各セルの電圧を測って高いセルから放電させるバランス回路を入れる。設計では、セルの静電容量と内部抵抗のばらつき、モジュールの中の温度の分布を入れて、どのセルが最初に上限に達するかを計算する。
モデリングの進め方
- インピーダンスの測定から、内部抵抗と細孔の抵抗を合わせる。
- 使い方の電流の波形で放電を計算し、使える静電容量を確かめる。
- 抵抗の損失から発熱を求め、モジュールの温度の分布を解く。
- セルのばらつきを入れて直列の電圧の分布を求める。
- 温度と電圧から寿命を見積もり、バランス回路と冷却を決める。
「カタログより早く空になった回生装置」
あるクレーンの回生装置で、キャパシタのモジュールに蓄えたエネルギーが、計算より早く尽きて電圧が下限に達していた。計算はカタログの静電容量(直流で測った値)を使っていたが、実際の負荷は1秒前後で大きく変動していた。細孔のモデルで実際の電流の波形を入れて計算し直すと、使える静電容量が2割ほど小さく、実測と合った。モジュールの直列の数を増やして電圧に余裕を持たせ、問題は解消した。
よくある間違い
間違いと対策
| 間違い | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 直流の静電容量を使う | 速い負荷でエネルギーを過大評価 | 細孔のモデル |
| 電圧0まで使える前提 | 変換器が動かない | 下限電圧で計算 |
| ばらつきを無視して直列 | 一部のセルが過電圧 | バランス回路 |
| 発熱を平均電流で計算 | 発熱を過小評価 | 実効値の電流で計算 |
| 温度を一定にする | 寿命を過大評価 | 熱と連成 |
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